ソニー、テンセント等の東アジアゲーム企業がM&Aを加速

ソニー、ネットイース、テンセントといったアジアの大手ゲーム会社は、自社プラットフォームのパブリッシャーの確保や、中国国内での規制強化によって海外進出を加速し、買収や投資を続けている。

ソニー、テンセント等の東アジアゲーム企業がM&Aを加速
Image via SIE

ソニー、ネットイース、テンセントといったアジアの大手ゲーム会社は、自社プラットフォームのパブリッシャーの確保や、中国国内での規制強化によって海外進出を加速し、買収や投資を続けている。


テンセントは7日、フランスのゲーム開発会社ユービーアイ・ソフト・エンタテインメントの株式を倍以上取得したと発表した。ユービーアイ創業一族の持株会社と本体の双方への投資・融資によって、直接出資比率を9.99%に引き上げた。両者が交わした投資契約では、テンセントは一族の経営権を保証し、議決権を引き上げる努力を行わない旨が規定されているようであり、一時、敵対的買収の対象となるなど、経営基盤が脆弱となっているユービーアイを支える意味合いがあるようだ。テンセントはユービーアイのIPをモバイル対応化するなどの協力関係を築いてきた。

テンセントは長年、世界中の小規模ゲームスタジオに投資する戦略をとっており、『ダークソウル』や『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』、『ELDEN RING』など世界的に人気のタイトルを創出した日本の開発会社フロム・ソフトウェア(KADOKAWAの連結子会社)に資本参加した。ソニーもテンセントとともに同社に投資している。

中国のネットイースは8月末、フランスのゲーム開発会社Quantic Dreamを買収し、ヨーロッパに初の完全自社スタジオを設立した。ネットイースは同社の代表作『Detroit Become Human』のリリース後の2019年にQuantic Dreamの少数株式を取得していた。

ネットイースは、日本とアメリカにもゲームスタジオを設立している。ネットイースは最近、『龍が如く』で有名な元セガのゲームクリエーター名越稔洋と『デビルメイクライ』『戦国BASARA』のプロデュースで有名な元カプコンのプロデューサー小林裕幸を雇い入れたばかりだ。

昨年、中国の規制当局は、18歳未満がオンラインゲームで遊べる時間を制限し、新しいタイトルの認可を凍結した。中国では、ゲームのリリースやマネタイズには規制当局の許可が必要だ。この認可は4月に再開されたばかりである。

ソニーは7月、DestinyとHaloの開発元であるBungieを36億ドルで買収を完了した。さらに8月下旬には、ヘルシンキとベルリンを拠点とするモバイルゲーム開発会社、Savage Game Studiosを買収したと発表した。

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データ会社Newzooのゲーム担当マーケットリーダーであるTom Wijmanは、CNBCに対し、「彼らの目標は、プレイヤーが自社開発のハードウェアを購入し、PlayStationが運営する定額制サービス(PS Plus)に月額料金を支払い、PlayStation Storeで時折デジタルゲームを購入してくれるようなインセンティブを与えるだけのコンテンツを揃えることで、パブリッシャーは得られた報酬の約30%をソニーに還元している」と述べている。

スタジオを買収することは、ソニーのエコシステムに独占的なコンテンツを提供するための最も安全な方法だ。特に、ゲーム分野でソニーの主な競争相手の1つであるマイクロソフトの買収攻勢に対抗する意味合いがある。

最近の活発な動きは、2022年のゲーム業界におけるM&Aの活性化に呼応しているようだ。マイクロソフトは1月に687億ドルの全額現金取引でアクティビジョン・ブリザードの買収を提案した。5月には、エレクトロニック・アーツが過去数年にわたり、AmazonやApple、ディズニー、NBCUniversalといった多くの著名なメディアコングロマリットを含む複数の買い手候補とM&A交渉を行っていたことが報じられた。

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米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国人は自動車が大好きだ。バッテリーで走らない限りは。ピュー・リサーチ・センターが7月に発表した世論調査によると、電気自動車(EV)の購入を検討する米国人は5分の2以下だった。充電網が絶えず拡大し、選べるEVの車種がますます増えているにもかかわらず、このシェアは前年をわずかに下回っている。 この言葉は、相対的な無策に裏打ちされている。2023年第3四半期には、バッテリー電気自動車(BEV)は全自動車販売台数の8%を占めていた。今年これまでに米国で販売されたEV(ハイブリッド車を除く)は100万台に満たず、自動車大国でない欧州の半分強である(図表参照)。中国のドライバーはその4倍近くを購入している。

By エコノミスト(英国)
労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

2010年代半ばは労働者にとって最悪の時代だったという点では、ほぼ誰もが同意している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学者であるデイヴィッド・グレーバーは、「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)」という言葉を作り、無目的な仕事が蔓延していると主張した。2007年から2009年にかけての世界金融危機からの回復には時間がかかり、豊かな国々で構成されるOECDクラブでは、労働人口の約7%が完全に仕事を失っていた。賃金の伸びは弱く、所得格差はとどまるところを知らない。 状況はどう変わったか。富裕国の世界では今、労働者は黄金時代を迎えている。社会が高齢化するにつれて、労働はより希少になり、より良い報酬が得られるようになっている。政府は大きな支出を行い、経済を活性化させ、賃上げ要求を後押ししている。一方、人工知能(AI)は労働者、特に熟練度の低い労働者の生産性を向上させており、これも賃金上昇につながる可能性がある。例えば、労働力が不足しているところでは、先端技術の利用は賃金を上昇させる可能性が高い。その結果、労働市場の仕組みが一変する。 その理由を理解するために、暗

By エコノミスト(英国)
中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

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脳腫瘍で余命いくばくもないトゥー・チャンワンは、最後の言葉を残した。その中国の気象学者は、気候が温暖化していることに気づいていた。1961年、彼は共産党の機関紙『人民日報』で、人類の生命を維持するための条件が変化する可能性があると警告した。 しかし彼は、温暖化は太陽活動のサイクルの一部であり、いつかは逆転するだろうと考えていた。トゥーは、化石燃料の燃焼が大気中に炭素を排出し、気候変動を引き起こしているとは考えなかった。彼の論文の数ページ前の『人民日報』のその号には、ニヤリと笑う炭鉱労働者の写真が掲載されていた。中国は欧米に経済的に追いつくため、工業化を急いでいた。 今日、中国は工業大国であり、世界の製造業の4分の1以上を擁する。しかし、その進歩の代償として排出量が増加している。過去30年間、中国はどの国よりも多くの二酸化炭素を大気中に排出してきた(図表1参照)。調査会社のロディウム・グループによれば、中国は毎年世界の温室効果ガスの4分の1以上を排出している。これは、2位の米国の約2倍である(ただし、一人当たりで見ると米国の方がまだひどい)。

By エコノミスト(英国)