Metaはメタバースの優先順位を落とした模様
「メタバース」の狂乱に最も敏感だったMeta Platfromsは、大型レイオフのさなかにこの分野への賭け金を減らしたようだ。コンピュータのUIやソーシャルメディアを再創造する壮大な試みは、ほふく前進を迫られている。
「メタバース」の狂乱に最も敏感だったMeta Platfromsは、大型レイオフのさなかにこの分野への賭け金を減らしたようだ。コンピュータのUIやソーシャルメディアを再創造する壮大な試みは、ほふく前進を迫られている。
Metaは広告主に対する売り込みにおいて「メタバース」を使わなくなったようだ。米テクノロジー誌The Informationの報道によると、Metaは潜在的なパートナーにコラボレーションを提示する際に、「メタバース」という用語を完全に削除した。 「ザッカーバーグの口から2つ目の単語がすべて『メタバース』だった、インターネットの未来を期待していた昨年とは全く対照的だ」 と関係者は話しているという。
Metaの力点はより近視眼的なTikTokクローンへと移ったようだ。同じ報道によると、Metaはその収益のほとんどを提供する広告主に対して、TikTokのクローンであるリール(Reels)における広告商品に一定額を費やすと、25%もの割引を提供するようなベネフィットを提示しているという。引用された広告会社の幹部は、この割引は「異常に大きい」とThe Informationに語っている。
これは、前四半期だけでReality Labs(Metaのメタバース部門)に費やされたおよそ43億ドルとはかなり対照的だ。
買収したVR会社でレイオフ
社内では人員調整が進んでいる。Metaは4月に実施した大規模レイオフにて、VRゲームチームの従業員を多数解雇したと見られている。
2020年にMetaに買収されたReady At Dawnでは、シニアエンジニアプログラマーであるThomas Griebelは、「スタジオの約40人、つまりスタジオの3分の1が解雇された」と投稿した。2016年からスタジオリーダーを務めていたMark Almeidaも含まれていると彼は言う。このスタジオは、VRゲーム「Lone Echo」で知られている。
今週初めには、同社の次期プラットフォーム「Horizon Worlds」を13~17歳の10代が利用できるようにする計画を確認した。
仮想現実(VR)ファーストパーソン・シューティング(FPS)ゲーム「Onward」で知られているDownpour Interactiveでもレイオフが行われた。プロデューサーであるKaspar Nahuijsenは、同僚を失ったことは「私のキャリアの中で最もつらい日だった。3 月に、スタジオの創設者兼CEOであるDante BuckelyもMetaを去っている。Downpour Interactiveは2021年にMetaに買収された。
メタバースプロジェクトをすべて停止したわけではない
「Metaが全てのメタバースプロジェクトをキャンセル」というツイートがバズったが、大元の記事や、その記事が引用しているThe Informationの記事にはそのような記述はなかった。
レイオフがMetaの歩みを遅くするとは限らない。メタバース部門では、過剰人員の長江が伝えられていた。
MetaのAR / VR部門のCTOを勤めていたジョン・カーマックは昨年12月に同社を去る際に、組織の効率性の低さを指摘した。「とんでもない数の人材とリソースを持っていながら、常に自虐的になって努力を浪費している。これはどうしようもないことで、私たちの組織は、私が満足できるような効果の半分で運営されていると思います」。人が減ればむしろ早く動ける側面もあるだろう。
メタバースの実現には時間がかかる
ただ、それでもメタバースがより広く受けいられるには時間がかかりそうだ。
VRヘッドセットは世代を重ね、コアゲーマーを中心に一定の商業ベースが成立している。ただ、一般層を引きつける水準には達していないだろう。
ニューヨーク・タイムズのテクノロジー・ジャーナリストBrian X. Chenは、2月22日に発売予定のソニーのPlayStation VR2の先行レビューで「購入できるVRハードウェアの中で最高の1つ」と評したものの、「『なぜ、テレビ画面ではなく、VRでプレイする必要があるのだろう』と思うことが多々あった」と書いている。
一方、拡張現実(AR)グラスには過酷な技術的挑戦がつきまとうとVR / AR、ゲーミング分野のベンチャー投資家であるマシュー・ボールは以前書いている。課題は、システムオンチップ(SoC)とバッテリーを技術要件を満たしながら小さくするかである。現実世界に重ねた3D描画のコストはかなり高く、それ伴ってSoCとバッテリーは大型化しがちである。かつての携帯電話のように重たい荷物を背負うことをユーザーに求めかねない。