Metaがオープンソース言語AIのリリースを予告 「競争環境を一変」とAIチーフ[吉田拓史]

Metaはオープンソースの大規模言語モデル(LLM)を間もなくリリースすると発表した。OpenAI / MicrosoftとGoogleとは異なる開放型のアプローチが競争環境を一変する、と同社は強調した。

Metaがオープンソース言語AIのリリースを予告 「競争環境を一変」とAIチーフ[吉田拓史]
Meta AI.

Metaはオープンソースの大規模言語モデル(LLM)を間もなくリリースすると発表した。OpenAI / MicrosoftとGoogleとは異なる開放型のアプローチが競争環境を一変する、と同社は強調した。


Metaは企業がカスタマイズできる新しい商用バージョンを「間もなく」リリースすると、とFinancial Times (FT) は報じた。

FTによると、MetaのチーフAIサイエンティストであるヤン・ルカンは、最近開催されたカンファレンスで、「AIの競争環境は、今後数カ月、あるいは数週間のうちに完全に変わるだろう。Metaは、個人や企業など、ユーザーのタイプに特化したAIチャットボットを作るかもしれない」と語った。

MetaのAIモデルへのアクセスは、公開当初は無料のはずだが、将来的には変更されるかもしれない。FTが引用したMetaに詳しい情報筋によると、同社は最終的に、企業顧客がモデルの変更やカスタマイズを望む場合、料金を請求する可能性があるという。

OpenAI / MicrosoftとGoogleは、エンタープライズ向けLLMでは、クラウド部門と組み合わせたビジネスを模索しているようで、ソースコードは公開していない。Metaは、一定の制約を与えながらもLLM「LLaMA」をオープンソース化するという独自の戦略を採用してきた。今回の予告は、その方針がさらに強化されたこと示唆している可能性がある。

LLaMAとは、Large Language Model Meta AIの略で、Meta AIが2023年2月にリリースしたLLMである。70億パラメータから650億パラメータまで、さまざまなサイズのモデルが学習された。LLaMAの開発者は、130億パラメータ・モデルのほとんどのNLPベンチマークにおける性能が、はるかに大規模なGPT-3(1,750億パラメータ)を上回り、650億パラメータの最大モデルはGoogleのPaLMやDeepMindのChinchillaのような最先端のモデルに匹敵すると報告した。

Introducing LLaMA: A foundational, 65-billion-parameter language model
Today, we’re releasing our LLaMA (Large Language Model Meta AI) foundational model with a gated release. LLaMA is more efficient and competitive with previously published models of a similar size on existing benchmarks.

LLaMAはすでに業界にインパクトを与えてきた。このモデルは許可を得た研究者にだけ公開されたが、最終的にスタンフォードのチームがLLaMAを基に開発した亜種のモデルがオープンソース化された。公開されてからたった3 週間でスマートフォンのようなエッジデバイスで動作が確認された、というセンセーションを引き起こした。様々なエンジニアが亜種のモデルを使い、競うように実装を行った結果である。

進歩速すぎ…スマホだけで動く軽量LLMがたった3週間で爆誕
ある大規模言語モデル(LLM)がオープンソースで公開されると、すぐさま微調整が進み、スマートフォンやタブレットでの動作が確認された。界隈の課題とされたオンデバイスの軽量AIがたった3週間で生まれてしまった。

Googleのエンジニアが「この競争には堀がない」と警告した内部文書が漏洩した。LLaMAのリリースによって、OpenAIやGoogleのLLMにおけるリードは数週間で埋められてしまったことに言及している。Google DeepMindのCEO、デミス・ハサビスはこの文書が本物であることを認めている。

オープンソースのゲリラ勢がAI開発競争でGoogleとOpenAIを圧倒する?
コンサルティング会社SemiAnalysisが手に入れたGoogleの社内文書が波紋を広げている。文書は、GoogleとOpenAI/Microsoftの双方が、オープンソース陣営の「ゲリラ兵」に圧倒される可能性を示唆している。

エディンバラ大学のYao Fu率いる研究チームは、大規模言語モデル(LLM)のパフォーマンスを比較するための独自のベンチマークを用いた評価を行った。LLaMaの650億パラメーターのモデル「65B LLaMa」は、GPT-3を用いた自然言語処理エンジンと近い性能を持ち、適切に調整すればChatGPTを再現できる可能性があると指摘した。

GitHub - FranxYao/chain-of-thought-hub: Benchmarking large language models’ complex reasoning ability with chain-of-thought prompting
Benchmarking large language models' complex reasoning ability with chain-of-thought prompting - GitHub - FranxYao/chain-of-thought-hub: Benchmarking large language models' complex reasoning…

オープンソースLLMの競争相手も出てきている。LLaMAの亜種RedPajamaを開発していた新興企業Togetherは、LLaMAにまつわるMetaが設けた制約を回避するため、2,000万ドル(約27億2,000万円)を調達し、「完全にオープンソースのモデル」の構築を進めようとしている。

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OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

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OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

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アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史