眠れる獅子のMicrosoft広告部門、3兆円ビジネスを目指す
Microsoftの広告部門はAT&Tのアドテク部門の買収とNetflixの広告在庫の代理販売権の獲得によりにわかに活気づいている。Appleの広告事業も膨張する中、Microsoftの台頭により、デジタル広告市場の寡占がさらに進むかもしれない。
マイクロソフト(Microsoft)広告部門のトップであるロブ・ウィルクが米ビジネスメディアInsiderに広告事業の規模を200億ドル(約3兆円)に倍増させる野望について話している。
Microsoft Advertisingは100億ドル規模の事業だが、現在、事業規模を2倍にすることを検討しているとウィルクは語っている。Microsoftが広告収益200億ドルを達成すれば、中国のテンセントを抜いて世界第6位のデジタル広告企業となる(Insider Intelligenceの推定による)。
Microsoft Advertisingは2022年にAT&Tの広告部門Xandrを買収したことで、Netflixとの広告販売契約を獲得することができた。
これは、NetflixはMicrosoftに新たな差別化ポイントを与えた、と言えるかもしれない。11月に展開されるNetflixの新しい広告サポート層の独占広告パートナーとして、広告主はXandrの買付プラットフォームを通じて広告を購入することができ、Microsoftはそのための手数料を受け取ることになる。Netflixは当初、60ドル以上という高いCPM(1,000人にリーチするためのコスト)を要求していたが、大手ブランドからの強い需要があると予測されているという。
調査会社Lemonade Projectsのプログラマティック・エコノミスト、Tom Triscariは、Insiderに対し「Netflixが100億ドルの広告売上をあげるには、それほど時間はかからないだろう」と語る。「良い供給は希少で、高く評価される」
MicrosoftがGoogleなどの競合他社を抑えてNetflixと契約したのは、より競争力のある収益保証を提供したからだと報じられた。この提携に詳しい関係者は、この契約はあくまで短期的なもので、NetflixがSnapの元広告担当重役ジェレミー・ゴーマンとピーター・ネイラーを採用したことは、同社が後の段階ですべてを社内に取り込みたいと考えている可能性を示唆している、とInsiderに対し述べた。
Microsoftは、ゲーム開発会社のアクティビジョン・ブリザードの買収に成功すれば、広告収入の増加が期待されている(提案された687億ドルの取引は、規制当局の厳しい視線に直面しているが)。広告バイヤーは、特にゲーム内広告がMicrosoftのユニークなセールスポイントになる可能性があり、特にそれらの広告がXandrを通じてのみ購入できる場合はそうであるようだ。MicrosoftはすでにXboxのホーム画面で広告を販売しており、無料プレイやクラウドベースのXboxゲームに広告を表示するプラットフォームを開発している。
MicrosoftのXandr(旧AppNexus)への投資の由来は2010年までさかのぼる。2010年代半ばには、Microsoftは自社メディア資産におけるプログラマティック広告を、Xandrに事実上アウトソーシングしていた。Microsoftの広告製品は現在、同社の検索エンジンBingでの広告掲載や、CBSスポーツやフォックス・ビジネスなどへの広告配信であるMicrosoft Audience Network(MAN)のほか、自社メディア資産を含む複数のサービスで構成されている。
同社広告部門Microsoft Advertising(以前はすべてBingブランドにまとめられていた)は1997年から存在している。一時はアドサーバー市場の一角を占めるほどの事業規模を誇ったが、Googleがデジタル広告での地位を確かなものにするに従って、本流から外れることになった(アドサーバー事業はFacebookに売却した)。その後、アマゾンが本格的に広告市場に参入すると、Google、Facebook、アマゾンの三強が形成され、Microsoftは大きく引き離された4番手となっていた。
最近ではAppleの広告事業も目覚ましい拡大を遂げている。調査会社Evercore ISIは、2010年代後半にわずか数億ドルだったAppleの広告収益が、今年は約50億ドルになっており、4年以内に300億ドルの広告ビジネスを持つことになると予想している。