中国でもNVIDIAのAIチップ争奪戦が深刻化
中国企業の間でもNVIDIAのAIチップの争奪戦が起きている。新規発注は、米政府の輸出規制でダウングレード版に限定されるが、需要は留まるところを知らないようだ。
中国企業の間でもNVIDIAのAIチップの争奪戦が起きている。新規発注は、米政府の輸出規制でダウングレード版に限定されるが、需要は留まるところを知らないようだ。
中国企業は、NVIDIAのA100とH100 GPUに殺到している。アリババやテンセントのクラウドサービスでは、当初はAI向けGPUの稼働率が低く、値下げを強いられていたが、ChatGPTのブームによって、需要が急増した。
中国メディア晩点が引用したクラウドベンダーの関係者によると、ByteDanceやアリババなどの大企業は主にNVIDIAと直接話し合ってGPUを購入している。新興企業や中小企業の需要も凄まじく、販売代理店や二次市場は対応に苦労しているという。
ByteDanceは今年10億ドル以上を発注
- Bytedanceは今年、10億ドルを超える新規発注を実行した、とLatePost(晩点)は報じた。ByteDanceの発注単独で、中国市場全体が2022年にNVIDIAに発注した額(ドル換算)にすでに追いついたという。
- ByteDanceは、OpenAIが2020年6月にGPT-3をリリースした後、大規模言語モデル(LLM)をトレーニングし、その時に使われた主なGPUはA100の前身のV100だったという。 パラメータのサイズが限られていたため、このモデルの生成性能は平均的で、その時は商業化する可能性を見出せなかった、と晩点が引用した関係者は語った。しかし、現在では前CEOで未だに実権を握るといわれる張一鳴はAIの論文を読み漁るようになっており、会社の方針は一変したようだ。
- ByteDanceには、A100とH800合計10万個が入荷する予定で、一部はすでに入荷済み。今年の3月に生産を開始したばかりのH800の納品は今年末になる予定という。
輸出規制への対応
中国企業は、昨年の米国の輸出規制発令後、NVIDIAが規制に準拠するために特別に発売したダウングレード版のA800とH800を発注している。中国テクノロジーメディア、快科技によると、A800はA100の「70%程度の性能」とH800はH100の半分程度と言われる。
NVIDIAは、輸出規制が始まった当初、約4億ドルの損失が発生し、その損失がH100チップの開発に支障をきたす可能性があると主張していた。しかし、米政府が輸出禁止を9月に変更したため、NVIDIAはH100に必要な追加出荷(および収益)を詰め込むことができた、と晩点は報じている。
中国はNVIDIAの対抗馬を育てているが、NVIDIAが長年かけて構築したハードウェアとソフトウェアの垂直統合型プラットフォームに太刀打ちするまでにはなっていない。
GPUの不足が、AIや大規模言語モデルの分野で中国の国家的競争力を阻害していると、国営経済紙「経済日報」のオピニオン記事は指摘した。