NVIDIAのArm買収の勝算 Axion Podcast #32

NvidiaのArm買収は短期的なシナジーは認めづらいディールかもしれないが、同社がAIコンピューティングの範囲をエッジまで広げる契機になりうる。ただし、Armからライセンスを受ける同業他社の不安を掻き立てており、RISC-Vベースのチップへの投資を促すことになるだろう。

NVIDIAのArm買収の勝算 Axion Podcast #32

Axion Podcastは、テクノロジー業界の最新トレンドを、元DIGIDAY編集者で起業家の吉田と280万会員の写真を扱うベンチャーの事業統括者の平田でディスカッションする対話形式のラジオです。Apple Podcast Spotify、Google Podcast、Anchorでも聴取可能です。ご登録お待ちしております。

Axionポッドキャストは、テクノロジー業界の最新トレンドを紹介するラジオ。元DIGIDAY編集者で起業家の吉田と、280万会員の写真を扱うベンチャーの事業統括者の平田が話し合います。

今回のポッドキャストはこのニュースレターを元にディスカッションしています。

エヌビディア帝国の誕生
データセンター垂直統合支配の野望

要約

NvidiaのArm買収は短期的なシナジーは認めづらいディールかもしれないが、ソフトバンクが投資する前の「高利益率のArm」だけを買収する取引となっており、AIコンピューティングの範囲をエッジまで広げる契機になりうる。ただし、Armからライセンスを受ける同業他社の不安を掻き立てており、RISC-Vベースのチップへの投資を促すことになるだろう。

補足情報

  1. NVIDIAがAIコンピューティングの範囲を、データセンターからエッジ(端末)まで広げる契機になるとジェン・スン・ファンCEOは語っている。高速相互通信のMellanoxの買収が、NvidiaのDC事業の急成長を促しているが、スパコンクラスタで構成されるDC垂直支配の要素をまた一つ獲得したことになる。
  2. ArmのIoT事業はディールに含まれない。IoT事業はSBG買収後に追加されたコストセンターで、Armの利益率を引き下げていた。NVIDIAはSBG買収前に確立していた高利益率事業だけを買収することを選んだ。18ヶ月以内のクロージング後はIPライセンシングという有望な収益の柱が加わっているはずだ。
  3. ただし、Armからライセンスを受ける同業他社の不安を掻き立てており、RISC-Vベースのチップへの投資を促すだろう。現状、RISC-Vはツールチェーンが発展途上の段階で、低価格帯にのみ存在感を示すが、各社が痛みを押してでもRISC-Vにベットする理由は今回の買収はこしらえた格好だ。
  4. また、英国が取引に反対する可能性がある。Armの共同創業者は「半導体業界のスイス」が破壊され、英国の雇用や経済主権に打撃を与えると訴えるオープンレターをジョンソン首相に送付。業界のベテランたちが「エコシステムの崩壊」に警鐘を鳴らしている。各国規制当局が承認するかが次の焦点。

もっと知りたい方のために

NvidiaのArm買収はエコシステムを破壊する
米半導体業界メディアSemianalysisは、NvidiaのArm買収はArmのエコシステムを破壊すると主張している。Nvidiaがデータセンターに垂直統合型の支配を確率するため、ArmのIPを非常に高価で閉鎖的なものへと変えてしまう、と警鐘を鳴らしている。
RISC-VがArmに取って代わる 命令セットオープン化の衝撃
RISC-VはARMの牙城を崩しかねない。チップデザイナーは、CPUの性能改善の速度が遅くなったいま、アプリケーション固有のプロセッサを作成して速度の低下を補うように圧力を受けている。RISC-Vコミュニティが提示する「ISAのオープンソース化」は、ARMのIPビジネスモデルに疑問を投げかけている。
アリババ、XT910を「RISC-V最先端チップ」と主張
Alibabaは、XT910がこれまでで最も強力なRISC-Vプロセッサであると主張している。同社は先週開催されたHot Chips 2020カンファレンスで、プロセッサの概要、ArmのCortex-A73(高性能モバイルデバイス向けに設計されている)との比較、そして同社が将来的に何を計画しているかを外部向けに説明した。

Photo: "NVIDIA CEO Jen-Hsun Huang at CES 2015 press event" by NVIDIA Corporation is licensed under CC BY-NC-ND 2.0

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OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

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By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

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アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史