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今回は急成長する中国の洋上風力発電について話しました。中国は2019年、世界の洋上風力容量の23%を占めています。沿岸部に大都市が集中する構造と技術革新、補助金政策が大規模投資を牽引しています。

急成長する中国の洋上風力発電
中国の洋上風力の物理的なポテンシャルが大きい。ハーバード大の研究は、沿岸9地域の総エネルギー需要の36%を、コスト競争力のある価格で供給することが可能だと説明している。

石油産業で知られるテキサス州はいまや米国の風力エネルギー産業の全国的なリーダーとなった。テキサス州は風力発電の設置容量と建設中の風力発電容量の両方で全米第1位であり、25,000人以上の風力関連の雇用を支えている。実際、テキサス州には30ギガワット(GW)以上の風力発電があり、テキサス州よりも風力発電量が多い国は4カ国しかない。

風力発電の特徴

  • 風力発電は,風の運動エネルギーを風車(風力タービン)によって回転エネルギーに変え,そ の回転を直接,または増速機を経た後に発電機に伝送し,電気エネルギーに変換する発電システムである.

  • 風が持つ運動エネルギーは風を受ける面積に比例し,風速の3乗に比例して増大する性質を持っており,理論的には風速が2倍になると風力エネルギーは8倍になる.したがって,より風の 強い場所に設置すること,大きい翼で効率良く風を受けることが重要となる.

  • また,風力発電は風の運動エネルギーの最大 30~40%程度を電気エネルギーに変換できるなど, 効率の高いことが特徴に挙げられる.

  • ただし,風のエネルギーを風車の回転エネルギーに変換する効率(パワー係数)は風車の形式によって異なる.また,効率は,風速と翼の先端の速度の比 (周速比)によって異なることから,風速に適した回転速度であることも重要になる.

洋上風力発電のキモ

  • 最初の洋上風力発電所は1991年にデンマークに設置
  • 市場が本格的に動き出したのは最近の10年間
  • 技術的な進歩と大幅なコスト削減により、洋上風力は安全で商業的に実行可能なクリーンな発電形態へと変貌を遂げた
  • 洋上風力発電所は、ホスト国の領海(14海里)または排他的経済水域(200海里)にないといけない
  • 風力タービンは、海上の他の人的インフラ(電気や通信のためのケーブル、ガスパイプラインなど)を避けなければならず、主要な航路を妨害してはいけない。国際法、国際法国連海洋法条約。
  • 海域が深くなるほど、基礎部分が複雑化し高価になる。
  • 洋上技術の主な課題は、水深50~60m以上の水深で強固な基礎を構築するためのコストと難しさだ。
  • 浮体式基礎の開発
  • 福島県沖の洋上風力約600億円を投じ実証研究を続けてきたが、採算が見込めないなどの声が出ていた。
  • 丸紅日立製作所三菱重工業などでつくるコンソーシアムが国から委託を受けて事業を担った。経済産業省資源エネルギー庁の担当者は「今後も浮体式を推進するうえで貴重なデータが得られた」と説明している。
  • 福島県沖の洋上風力 21年度中にすべて撤去へ、日経新聞

欧州が先行した

  • 2016年には洋上風力発電への投資が欧州の陸上への投資を上回った。
  • 2030年には欧州の総風力発電容量の40%近くが洋上風力発電によると予想されている。
  • 欧州の主要市場は、英国(容量 8GW)とドイツ(6.4GW)、次いでデンマーク(1.3GW)、ベルギー(1.2GW)、オランダ(1.1GW)。ずっと市場をリードしてきた。
  • 欧州議会の資料によると、欧州は依然として洋上風力の世界的リーダーであり、総容量の80%を占め、いくつかの加盟国が大幅な新規投資を計画している。
  • 中国は現在、世界の洋上風力発電容量(4.6GW)では第3位だが、いくつかの大規模な洋上風力発電プロジェクトが稼働しているため、間もなく市場のリーダーになる

2019年がビッグイヤーだった

  • 60.4GWの新規設置
  • 世界の累積風力発電容量は651GW
  • オンショア市場では54.2GWが設置され、2018年と比較して17%増加
  • 中国と米国は引き続き世界最大のオンショア市場、オンショアの新規設置台数の60%以上を占めている。
  • 中国の設置台数が前年比45%増となったジャンプのおかげで、世界の洋上風力産業は2019年に6.1GWの新規設置で記録的な年となり、世界の新規設置台数における市場シェアを初めて10%台に押し上げた。
  • 2019年に世界で追加された洋上風力発電容量の40%を中国が占め、前年比51%増の2.5ギガワット(GW)を記録した。中国は同年、世界の洋上風力容量の23%を占めるようになった。
  • 中国は2030年までにさらに52GW、合計58.7GWの洋上風力発電容量を追加する予定だ→チャンピオンになりそう。

洋上風力発電の経済性

  • 洋上風速は通常、風速の3乗に依存するため、海岸からの距離が離れるほど増加し、発電電力が増加する
  • 海岸から遠く離れた洋上風力発電所(OWPP)の設置・維持費が高くなると、より高いエネルギー生産のメリットとバランスが取れなくなる
  • 陸上風力発電所よりも発電コストは約50%高いが、2025年までにコストは35%まで低下すると予想されている
  • 2018年のOWPPの加重平均された平準化エネルギーコスト(LCOE)は2010年に比べて20%低下した。
  • 端的な例。超大型洋上風力発電機。中国船舶重工集団海装風電股份有限公司(中国海装)の研究者が風力タービン直径210メートルの洋上風力発電機H210-10MWの開発に成功した。

電池と風力発電

  • 電池と洋上風力を組み合わせることで、洋上風力発電のコストはここ数年で下がっている。電池自体のコストも同様だ。現在、この2つを組み合わせて、洋上風力の柔軟性と経済性をさらに高める計画が欧米で進んでいる。
  • Episode 42: 電地の時代
  • スマートグリッドと呼ばれるようなロスが少なく、調整機能を内在した送電網の登場や、このような電力供給に適切な売買を提供する逐次的なデジタルオークションの設計なども、中期的な将来に望んでいる。
  • MITエネルギー・イニシアティブ(MITEI)の研究員Apurba Saktiらは、数理モデルを利用した収益性の分析において、現状の最高のリチウムイオン電池を採用したBESSを伴った洋上風力では、黒字化しない可能性を示唆している。この研究は、2010年から2013年のニューヨークの電力価格と風況データを用いたモデル用いている。
  • 現在、複数の研究が、エネルギー貯蔵システムの有無にかかわらず、洋上風力の経済性を調査している。ローレンス・バークレー国立研究所のリサーチサイエンティストのAndrew Millsらの研究(2018)は、過去のデータを用いて米国における洋上風力の収益性を研究するためのモデルを開発し、収益性は場所によって大きく異なると結論付けている
  • 国立再生可能エネルギー研究所のエネルギー市場・エネルギー政策アナリストのBeiterらは,マサチューセッツ州の電力会社とVineyard Wind LLCとの間の電力売買契約(PPA)データを用いて、米国北東部のプロジェクトの平準化エネルギーコスト(LCOE)と洋上風力の平準化エネルギー収益(LROE)の両方を計算し、比較している。彼らは、米国北東部の洋上風力プロジェクトのLCOE推定値120~160ドル/MWhが、米国におけるVineyard Windの電力売買契約(PPA)を用いて計算されたLROEの98ドル/MWhを上回っていることを発見した。Beiterらは、完全な競争市場では等しくなると予想されるLCOEとLROEの乖離は、米国の新興市場が欧州のコスト削減の恩恵を受けていることなど、様々な要因によるものではないかと仮説を立てている。
  • このため市場を設計をする必要性が生じている。現状の経済システムは、化石燃料による発電に伴う炭素排出等の負の外部性を織り込んでいない。例えば、電力市場が化石燃料の燃焼に伴う負の外部性を炭素税という形で織り込んでいたら、電力価格が上昇し、洋上風力の収益性が改善する可能性があるだろう。将来の発電量を取引する容量市場がいま検討されている最中である。そしてこのようなマーケットデザインを可能にするのは、電力需要の中心地から遠い位置にあることが多い洋上風力において、タービン、電池、送電網のさらなる技術革新であることは言うまでもない。

参考文献

Photo: "Thanet Offshore Wind Farm"by Vattenfall Nederland is licensed under CC BY-NC 2.0