Open AIとマイクロソフトの提携の背景を整理してみた

もっとたくさんのお金とクラウドが必要になってきた Open AI が営利化し、そのお金とクラウドの重要な提供者にマイクロソフトがなった。彼らはAGIの開発を目指していると”言って”いる

Open AIとマイクロソフトの提携の背景を整理してみた

TL;DR

もっとたくさんのお金とクラウドが必要になってきた Open AI が営利化し、そのお金とクラウドの重要な提供者にマイクロソフトがなった。彼らはAGIの開発を目指していると”言って”いる


今週は機械学習で刺激的な動きがありました。マイクロソフトとOpen AIが戦略的パートナーシップを発表したことです。

マイクロソフトはOpenAIに10億ドルを投資する計画を発表しました。マイクロソフトによると、提携の要旨はこの通りです。

  • MicrosoftとOpenAIは共同で新しいAzure AIスーパーコンピューティング技術を構築する
  • OpenAIは、そのサービスをMicrosoft Azure上で実行するように移植します。Microsoft Azureは、新しいAIテクノロジを開発し、汎用人工知能(AGI)の約束を果たす
  • マイクロソフトは、新しいAI技術を商品化するためのOpenAIの優先パートナーになる

Open AIはこの度の投資と提携の経緯についてこう説明しています。

OpenAIは、計算能力のために多くの資金を必要とする、より強力なAI技術を開発しています。 コストをカバーする最も明白な方法は製品を作ることですが、それは私たちの焦点を変えてしまうことを意味するでしょう。 代わりに、OpenAIがAGI以前のテクノロジの一部をマイクロソフトにライセンス供与する予定で、マイクロソフトはそれらを商品化するための優先パートナーになりました。

つまり、OpenAIが開発した機械学習技術をライセンス供与し、マイクロソフトはパブリッククラウドのAzureの商品にするようです。OpenAIが機械学習に使用するクラウドについては、Azureの利用が「期待」されていて、今後開発された"AGI技術"については、Azureから提供するという、そういう契約がなされたのではないでしょうか。

ニュースの文脈

さて、このニュースの文脈を整理してみましょう。

まず、重要な要素はクラウドです。近年のコンピューティングの競争の争点は「クラウド」と呼ばれるデータセンターの群れに重要性が集中しています。最先端の技術は何百万台ものコンピュータを連動させるハイパースケールデータセンターで生まれています。その保有者はグーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、アップルに限定されています。このうちグーグル、マイクロソフト、アマゾンはパブリッククラウドという形でその能力をの一部を一般に開放しています。スモールプレイヤーはそれを利用してシステムを作るのです(このウェブサイトもそうです)。

それで、最近のトレンドは、クラウドに機械学習の能力をもたせることです。ソフトウェア側で近年の「AIブーム」の火付け役になった手法が普及したことにより、ハードウェア側では、機械学習の計算需要には、GPUの方が有利だということでGPUの機械学習利用が拡大しました。それも最近はピークアウトし、「ドメイン特化型」の新しいコンピュータが大事だよね、という感じになっています。この競争に最も積極的なのがグーグルとマイクロソフトなのです(詳しくはこのブログの中盤くらいを読んでみてください)。

つまり、この「大競争」に参加できるのは俗に言う「GAFAM」だけであり、そのうち、この最先端をめぐる探索に興味があるのが、GとMということです。で、非営利団体のOpen AIは開発に必要な計算量を確保するために、それからクラウドへのアクセスを確保するためにも、ビッグプレイヤーとの連携が必要になってきました。この結果、両者は今回の投資、提携に至ったと私は推測しています。

Open AIは非営利団体として「AI技術の企業の独占を許さず、我々がみんなのためのAIを作るぞ」という目標でイーロン・マスクなどの連盟で創設されましたが、最近、「利益に上限のある」営利企業に変わる決断を下しました。その一環でスタートアップアクセラレータのYコンビネーターでプレジデントを務めたサム・アルトマンをCEOに迎えています。サム・アルトマン等のYコンビネーターの人々は2015年の非営利団体発足時に行われた総額10億ドルの寄付に参加しています。

Open AIは発足時に10億ドル寄付を受けたのですがもう使い切りそうなのでしょう。彼らは営利化によって発足時に高らかに唄い上げたポリシーを覆したため、一部の機械学習家は批判的な反応をしています。

それから運営体制に変更が起きたようです。Open AIはイーロン・マスクがその発足に関わったことを積極的に広報してきましたが、営利化時の文書には、マスクは、2018年2月に非営利団体 OpenAI の理事会を辞任し、新しく発足する営利団体 OpenAI LP に正式には関与していないと記されています。さらにその文書では、OpenAI LPの投資家には「既存投資家」のリード・ホフマンの慈善財団やベンチャーキャピタルのKhosla Venturesが含まれると同社は記しています。

Open AIの共同創設者、チーフサイエンティストの Ilya Sutskever は 画像認識の競技会で驚異的なスコアを出し、現在の機械学習ブームの火付け役となった AlexNet の共同開発者。彼のリーダーシップのもとで最近は多人数プレイのリアルタイム戦略ゲーミングで人間のチャンピオンを負かす強化学習モデル「OpenAI Five」を作ったり、機械学習を利用したロボティックス開発用環境の「Open AI Gym」を作ったりしています。

結論

今回のニュースを読み解くと、「もっとたくさんのお金とクラウドが必要になってきた Open AI が営利化し、そのお金とクラウドの重要な提供者にマイクロソフトがなった。彼らは”AGI”の開発を目指していると言っている」、ということです。

一つ重要な点を避けているんですが、彼らが言う「汎用人工知能(AGI)」とはどういうものなのか、ということです。ちょっとよくわからないので、まあ、時間が経てばわかってくるのではないかと思っています。

Image via Microsoft

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新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

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新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

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