統一決済基盤「UPI 」インドのモバイル決済のゲームチェンジャー

UPI(Unified Payment Interface: 統一支払いインターフェース)はインド決済公社が構築したリアルタイムの送金を可能にする銀行間支払いシステムです。 利用者は任意のUPIクライアントアプリを使用でき、複数の銀行口座を単一のアプリにリンクできます。

統一決済基盤「UPI 」インドのモバイル決済のゲームチェンジャー

UPI(Unified Payment Interface: 統一支払いインターフェース)はインド決済公社が構築したリアルタイムの送金を可能にする銀行間支払いシステムです。 利用者は任意のUPIクライアントアプリを使用でき、複数の銀行口座を単一のアプリにリンクできます。UPIを利用した支払いアプリでは、ユーザーはAadharで給付されたデジタルIDや、電話番号、UPI IDなどのベリファイだけで送金を実行できます。

UPIアプリは基盤が統一化されているので、モバイルウォレットにありがちな相互運用性の欠如という課題を乗り越えることができました。中華系デジタルウォレットの機能をインド決済公社が一元的に提供し、クライアントアプリケーションを作るためのゲートウェイを開放するという仕組みです。アリペイとウィーチャットペイは財布間の取引を精算するためのクリアリングハウスを必要としています。UPIアプリにはこれが必要ありません。

中華モバイルウォレットと同様、レガシー技術で構築された銀行のシステムの上にレイヤーを一つ挟むことで、レガシーの負の影響を緩和し、そのプラットフォームの上で円滑な送金を実現しています。他方、中華系デジタルウォレットのような多機能の実装は想定していないと考えられ、インドの人口の大半を占める貧困層をデジタル支払いの世界に誘うことを主眼に設計されています。

これは目的とその実現に対して研ぎ澄まされた素晴らしいシステムです。(何をやっても奇妙な方向に突っ込んでしまう日本と比較したいですね)。

UPIはインドを含む南アジア、それから中東、そしてフロンティアのアフリカに対し非常に応用可能があります。もうひとつの可能性は暗号通貨であり、Facebookのリブラはその要件を満たしていましたが、どうしても政府、中央銀行、市中銀行等の勢力を刺激してしまいます。詳しくはこちら

UPIが採用された背景

重要なのは、2014年に首相に就任したモディ首相が2016年に高額紙幣を禁止し、その後UPIをリリースしてデジタル支払いの利用の普及を促したことです。

モディには「Unbanked(銀行なし)」の貧困層を銀行機能にアクセスできるようにするビジョンがありました。彼は貧困層向けに貸出を行わずに、預金サービスのみを提供する「ペイメント・バンク」を提供しました。ペイメント・バンクに無料の生命保険をパッケージし、貧困層の口座開設を促進したのです。これにより数億人が新たに銀行口座を開設するようになりました。このペイメント・バンクの口座と電話があれば、人々はすぐさまデジタル支払いを開始することができました。

UPIとペイメント・バンクのセットは利用者の預金を保護し、金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)を高め、報告されていない現金取引を通じた脱税を削減することができます。 与信審査や商品のカスタマイズに使用できる取引に関するきめ細かい情報が得られるため、銀行にも好ましい仕組みです。

UPIが米国勢の攻勢を生んだ

ただ、これで中華モバイルウォレットの優位性がそがれ、その代わりに米国のテックジャイアントに機械がもたらされました。

Google Payは2019年5月にUPIにおける2億4000万件を超える取引を記録。件数で首位にたちました。 Flipkartが所有するPhonePeは同月に2億3千万件のUPI支払いを計測し、2億のPaytmが続いています。

Google Payは富裕国ではトランザクション自体はクレジットカードのネットワーク等に委託する構成をとっており、Googleはアリババやテンセントのようにウォレットと背後のシステムを作っていません。これがインド市場で当初のネックだったと考えられますが、UPIのおかげでトランザクション処理はすべてUPIに委託すればよくなりました。アンドロイドが市場シェアの8割を握っており、Google Payが市場リーダーになるという他の市場では見られないシナリオを浮上させています。

WhatsAppにも同じことがいえます。既存のメッセージング機能にUPI基盤に結びついた決済機能をつければいいので、Facebookにとってペイメントアプリの構築がかなり「安価」になったのです。

WhatsAppはユーザー3億人のうち1億人に対し、テストをしていますが、プライバシー保護とデータを保管するデータセンターをインド国内に留めることを政府は要求しており、WhatsAppの全面展開を遅らせています(おそらく米国でのスキャンダルが響いており、またインド政府との関係作りが浅いとみられます)。 中国のWeChat Payや韓国のKakao Payなど、他の有力なチャットアプリが支払いアプリで成功を収めていることから、ローンチされれば、成功の予知が大きいと想定できます。

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