RISC-Vの旗艦SiFiveがNASA採用決定で「お墨付き」

チップ設計新興企業の米SiFiveがNASAの月や火星へのミッションの基幹システムを動かすCPUコアを設計することが決まった。採用企業の拡大で急浮上中のSiFiveに新たな「お墨付き」が与えられた。

RISC-Vの旗艦SiFiveがNASA採用決定で「お墨付き」
59枚の画像をつなぎ合わせた、火星探査機キュリオシティの自撮り。 Image: NASA

チップ設計新興企業の米SiFiveがNASAの月や火星へのミッションの基幹システムを動かすCPUコアを設計することが決まった。採用企業の拡大で急浮上中のSiFiveに新たな「お墨付き」が与えられた。


SiFiveは6日、同社のRISC-VベースCPUコアが、発表されたばかりのNASAの次世代高性能宇宙飛行コンピューティング (HPSC)を動かすと発表した。

HPSCは、月や火星へのミッションを含む、将来の有人および無人ミッションの基幹となるものである。そのマイクロプロセッサは、SiFiveとシステム・オン・チップ(SoC)の設計者であるMicrochipとの3年間の5000万ドルの契約に基づいて開発される予定だ。

HPSCのプロセッサは、20年以上前に登場し、キュリオシティ、パーセバランス探査機、ジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡を含む無数の宇宙船で飛行した、老朽化したPowerPCベースのBAE RAD750を置き換えるものだ。

SiFiveは、Microchipと設計している12コアプロセッサは、使用していない時にチップの様々な部分をオフにする機能により、優れた電力効率を提供しながら、従来の100倍の性能向上を実現すると主張している。この性能は、新世代の自律型ローバー、画像処理、宇宙飛行、誘導、通信など、地球の大気圏や軌道を超えたアプリケーションを実現するために重要だという。

アーキテクチャ的には、SiFiveの設計は、同社が車載用チップを開発していることが活かされているという。「車載用には、高信頼性、耐障害性、機能安全性など、非常に似たタイプの要件がある」と同社の事業開発・顧客体験・コーポレートマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるJack KangはThe Registerに対して語っている。

NASAとMicrochipがRISC-V設計を選択したのは、オープンでロイヤリティフリーのISAという目新しさ以上のものがあった。Kangによれば、RISC-Vアーキテクチャは10年後、15年後、あるいは20年後にも大規模な開発者層を持つ可能性が高いアーキテクチャの1つであり、したがってNASAにとっては安全な賭けとなる。

NASAのお墨付きは、SiFiveのモメンタムを高めることになるだろう。RISC-Vは、そのISAがオープン、フリー、軽量であることもあり、近年大きな注目を集め、何億ドルもの投資が行われている。RISC-Vの基本アーキテクチャは、古典的なRISC(縮小命令セットコンピュータ)デザインとして、50以下の命令を備えており、これに公式およびサードパーティの拡張機能を加えることで、CPUコアの動作要件に合わせて、より多くの命令を持たせることができる。

SiFiveのプレジデント兼CEOであるPatrick Littleは、米半導体メディアEE Timesとのインタビューで、同社のパフォーマンスとインテリジェンスラインのプロセッサの採用が「期待を大きく上回る」ものであったと語っている。「私たちが話を聞いたほとんどすべての顧客が、プロセッサ・ベースの多様化を取締役会から命じられたと言っています。以前は単純な組込み設計に注力していたかもしれませんが、今はお客様の要求の中心であるインテリジェント設計をターゲットにするシフトが見られます。そして、自動車業界も当社のプロセッサーに注目しています」

2020年にQualcomm(クアルコム)の自動車事業からCEOとしてSiFiveに加わったLittleは、P550が他のプロセッサコアよりもワットあたりの性能で最大30%優れていることが実証され、その数値が顧客によって検証されていることを説明し、「我々の目標はArmよりも大幅に優れていることであり、今はArm迎撃戦略をさらに迅速に進められる状態にある」と述べた。

SiFiveは3月、シリーズF資金調達ラウンドで1億7,500万ドルを調達し、の企業価値を25億ドル以上と評価したことを明らかにした。このラウンドは近年、ベンチャーキャピタルへの進出が目覚ましい、米ニューヨークを拠点とするヘッジファンドCoatue Managementによってリードされた。

SiFiveは日本法人設立の準備を進めている。SiFiveジャパンでは、まずはRISC-Vの販売とサポートを開始する。Rogan氏は「いずれは開発も視野に入れている。 SiFiveジャパンの代表取締役社長には、Xilinx(AMDが買収)の日本法人ザイリンクスジャパンの代表取締役社長を務めていたSam Roganが就任するという。

調査会社セミコ・リサーチは、2025年までにRISC-Vコアが累計624億個出荷され、RISC-Vベースのシステムオンチップ(SoC)の出荷が2020年から2027年にかけて年率73.6%で増加すると予測している。

SiFiveは、2015年にカリフォルニア大学バークレー校の3人の研究者であるKrste Asanović、Yunsup Lee、およびAndrew Watermanによって設立された。この三人はデイビッド・パターソン教授が所長を務めていたカリフォルニア大学バークレー校のParallel Computing LaboratoryでRISC-Vを開発したメンバーでもある。

SiFive: RISC-Vチップの設計企業
RISC-Vコミュニティの牽引役

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