Rivian、量産化スケジュールを後ろ倒しか
Rivianの電気自動車(EV)量産化の目論見は、公表されているものより後ろ倒しになりそうだ。きらびやかなマーケティングの背後で、Rivianは製造業の試練にぶつかっている。
要点
Rivianの電気自動車(EV)量産化の目論見は、公表されているものより後ろ倒しになりそうだ。きらびやかなマーケティングの背後で、Rivianは製造業の試練にぶつかっている。
ニューヨークタイムスのローレンス・ウルリッチ記者はRivianのピックアップトラック「R1T」に試乗し「Rivianの電気トラックはキュートで野獣のよう(Rivian’s Electric Truck Is a Cutie and a Beast)」と題したレビュー記事を書いた。
レビューは広告と見紛うがばかりの非常に流麗な文章で綴られている。「堂々たるRivian R1Tは、これから登場する電気式ピックアップトラックの第一弾であり、荒々しい岩の上を無傷で飛行し、11,000ポンドの荷物を積み込み、約3.5秒で時速60マイルに到達することができます」
「フォードのライトニングが従来型の作業用トラックに見えるのに対し、16インチ短いリビアンは生まれながらの冒険家です。電動4輪車が最も困難なバックカントリーに挑戦できることを証明するパイオニアでもあります。今年の夏、R1Tはノースカロライナ州からオレゴン州の海岸までの約5,000マイルの試練であるアメリカ横断を成功させました。R1Tを購入する多くの人が、山小屋やキャンプ場までの未舗装道路に満足していたとしても、夢はあります」。
6万8,575ドルから販売されるRivian R1Tは、市場で初めて4つの独立した電気モーターを搭載し、それぞれが最大1万8,500rpmで回転するとRivianのマーケティング資料は言う。
「R1Tやそのスポーツユーティリティーの派生モデルであるR1Sの行く手を阻むものはほとんどありません。調整可能なエアサスペンションと、オート、ロック、ラリー、ドリフトの4つのオフロードモードにより、最大15インチの地上高を確保しています。これは、オフロード性能の試金石であるJeep Wrangler Rubiconよりも4.2インチも高いという驚異的な数値です」。
「市街地に移動すると、この835馬力のビーストは、私がテストしたどの石油系ピックアップよりも追い抜き、時速60マイルまで3.0秒で到達できると主張しています。一般的なフルサイズのガソリンピックアップよりも約1トン多い約7,150ポンドの車両重量にもかかわらず、だ。このトラックは物理学を無視しているというよりも、公然と反乱を起こしています」。
この種のレビューは好意的なレビューを書くジャーナリストに打診されるものだ。Rivianのマーケティングは常に抜群だ。しかし、もっと重要な量産化とデリバリー網はいつ確立するのだろうか?
量産から程遠い
実際にはRivianの製造体制は量産から程遠い。
Rivian R1Tは2021年末までに1,000台の販売(1,200台の生産)を目標としている。11月は数百台(10月の156台に次ぐ)、12月にはさらに数百台が納車される予定だ。
デリバリーは行われているようで、3台のRivian R1Tをロサンゼルスに向かう車両運搬車に搭載した様子を紹介する短い動画が公開され反響を呼んでいる。
しかし、米国の複数の情報筋によると、RivianはR1TピックアップとR1S SUVを予約した顧客に、注文した商品の受け取り日を確認するメールを送信したが、それは当初の予想よりも遅れているとのことだ。R1Tと同様にSUVの「R1S」の納入も当初の予定より数ヶ月遅れているという。
9月にRivianは、生産ラインから出荷された最初のR1Tピックアップの写真を公開した。これによりRivianは、フォードF-150ライトニングを抑えて、初のオール電化ピックアップトラックの地位を獲得した。
しかし、これらの最初のトラックの顧客はすべてRivianの従業員であり、同社はピックアップの生産をゆっくりとそしてSUVの生産はさらにゆっくりと行ってきた。
しかし、Rivian R1TとR1Sの納車時期は、早くても3月にずれ込み、中には9月になってしまう顧客もいる。Rivian Forumsに顧客が納期を共有できる投票スレッドが立ち上がっており、その結果、3月から6月の間に納品されるケースが多数派を占めている。
厳しい競争
Rivianはゼネラルモーターズ(GM)の1,000馬力のGMC Hummer EVピックアップや、39年間連続でアメリカで最も売れている車をベースにしたFord F-150ライトニングが春に登場し、すぐに競争にさらされる。テスラはテキサス州でのサイバートラックの生産を2022年に延期した。
パンデミックの影響で従来の自動車が売れない中、ピックアップトラックが市場シェアを拡大している。また、ニューヨークのように大都市から郊外の住宅地に移動したことも影響しているかもしれない。米国で売られている車の5台に1台はフルサイズまたはミッドサイズのピックアップで、例年の販売台数は300万台を超えている。
Amazonは、当初の投資額の5倍以上となる約200億ドルの価値を持つ20%の株式を保有しており、2030年までに10万台のラストワンマイル用配送バンを発注している。
しかし、RivianがAmazon向けに開発した配送バンは冷暖房による電力消費のせいで航続距離が公表のものより短くなると報じられた。まだRivianの車両がラストワンマイル配送に使用されるのは時期尚早のようだ。
フォードによると、F-150ライトニングには16万人の顧客から予約が入っているが、急速に生産を拡大する前に、来年は1万5千台しか生産できないと予想している。これに対し、Rivianは連邦政府に提出した書類の中で、R1TとR1Sの受注残が55,400件あると述べている。
フォードはF-150ライトニングの初値を約42,000ドルと低く設定したが、これは航続距離が230マイルと控えめなワークバージョンのためである。ディーラーで見つけるのは難しいかもしれない。量産型のF-150 Lightning XLTは55,000ドルに近い価格でスタートする。
フォードはRivian株の12%を所有しているが、11月中旬にRivianとの提携によるEV開発の計画を中止。今後は袂を分かち、R1T、R1SとF-150 Lightningの真っ向勝負が繰り広げられることになりそうだ。