東南アジアの雄Sea limitedの急成長は南米へと拡大
ゲームとECの双方で南米市場の最上段へ
要点
コロナ禍によりもともと高水準にあった収益成長をさらに加速させていたSea Limited。感染拡大から一年以上が経っても成長速度は衰えていない。南米市場でも着実に成功しており、世界中の新興国を股にかけたビッグテック企業になりそうだ。
Sea Limitedは、8月17日の市場開始前に、2021年第2四半期の業績を発表した。同社は、前年同期比159%の収益成長を達成した。GAAP収益は23億ドル、粗利益9億3,090万ドル。これは、前年同期比65%のデジタルエンタテインメント予約(Booking)の成長と、前年同期比で161%のEコマース収益の成長によってもたらされたものだ。
投資家は、1年前に比べて費用が大幅に増加していることに注目するだろう。売上原価は前年同期比で約100%増加しており、販売・マーケティング費用は前年同期比で130%以上増加している。Sea Limitedは現在、成長モードに入っており、できるだけ多くの市場シェアを獲得することに注力しているようだ。とはいえ、投資家はコストがコントロールできなくなるシナリオを留意する必要があるだろう。
出典:Sea Limited 2021Q2 Earning call.
ゲーム製品が牽引するデジタルエンタテインメント分野は、引き続き世界的に大きな数値を示している。過去8四半期において、Sea Limitedの最も人気のあるゲームである「Free Fire」は、東南アジアおよびラテンアメリカで最も売上の高いモバイルゲームとなっている。このゲームは、インドや米国でも素晴らしい数字を示している。
今回の結果を受けて、Seaの19人のアナリストは、2021年の売上高を87億7,000万米ドル(シンガポール企業なので星ドルと区別)と予想している。損失は8.2%縮小し、1株当たり3.15米ドルになると予想している。今回の発表前、アナリストたちは、2021年の売上高を81億9,000万米ドル、1株当たりの損失を2.79米ドルと予想していた。
また、コンセンサスの目標株価が11%上昇して352米ドルとなったことは驚きであり、アナリストたちは、損失が拡大しても収益の拡大に関心を持っていることがわかる。重要な点は、来年の損失が増加するとの見通しであり、Sea Limitedではすべてが順調ではないことを示唆している。
しかし、Sea Limitedの現金及び現金同等物はQ1から約5億ドル減らしたものの、56億ドル残している。つまり、激しくキャッシュを燃やして成長しているのではなく、一定の安全性を確保したまま急成長している。
東南アジアの独走は変わらず
この記事でSea Limitedが東南アジア市場を独走していると書いたが、Sea Limitedはコロナでブーストが掛かっているとみられた収益成長を止めていないため、さらに独走傾向が強まっていると見ていいだろう。
配車やフィンテックを提供するシンガポールのGrabに大差をつけているのは間違いないが、大差の度合いは曖昧なレンジの中に収まる。シンガポールに拠点を構えながら東南アジア諸国で展開するGrabは現状、国際会計基準(IFRS)に完全に準拠した業績報告を行っていない。このため、Grabが米株式市場に上場するまでは判然としないだろう。
Grabの2021年第1四半期の売上高は2億1,600万ドルと、前年同期のわずか100万ドルから大きく伸びたが、米証券取引委員会(SEC)の指示で消費者に支払われたインセンティブを除外しIFRSに合わせたため、売上高の数字は大きく下方修正されている。
唯一IFRSに則って計測されたとされる収益(Revenue)は、Sea LimitedのQ2のGAAP収益である23億ドルと比較すると、およそ10分の1の水準である。
Sea Limitedの時価総額は1,678億ドル(約18兆4,200億円、8月25日時点)で、Grabの筆頭株主であるソフトバンクグループの10兆8,300億円(8月25日時点)を超えている。
南米市場の開拓が進む
2020年のEコマースの売上高成長率が最も高いのは、南米だった。そのため、Sea Limitedが東南アジアで身に付けた新興国での戦い方を基に南米に進出するのは、非常に大きな成長の可能性を秘めているため、理にかなっている。
東南アジア最大のEコマースプラットフォームであるShopeeは、2019年にブラジルで越境チームの試験的な取り組みとして小規模なプレゼンスを開始し、その後、事業を拡大してきた。Shopeeのブラジル部門は、わずか1年で、試験的な取り組みから250人以上のチームになった。また、同社のウェブサイトによると、このEコマースプレーヤーは、現地の販売者との連携も開始した。2月にはメキシコでも事業を開始。6月にはコロンビアとチリに拡大している。
App Annieの報告書によると、Sea LimitedのEコマースアプリケーションであるShopeeは、2021年6月26日時点でブラジル、メキシコ、チリ、コロンビアのGoogle Playストアのショッピングカテゴリでダウンロード数トップ5に入っている。さらに、Sensor TowerとGoldman Sachsのデータによると、「Shopee」、南米での2021年のダウンロード数で地場最大のMercado Libreを大きく上回り、EC最大の地位を確保している。
料金の安さが魅力の一つだ。ゴールドマン・サックスの最近のレポートによると、Shopeeは最近料金を値上げしたにもかかわらず、特定の商品についてはブラジルの他の主要なプラットフォームと比較して最も低い手数料を売り手に課している。
ラテンアメリカのEコマース市場は、アルゼンチンに本拠を置くMercado Libreのような地域企業が支配している。米国のアマゾンや中国のアリババなどの国際的な大企業も、市場のシェアを奪い合っている。地場最大のMercado Libreは920億ドルの時価総額を持ち、2020年末には南米eコマース市場の26%を支配。1999年にアルゼンチンで設立され、株価は2020年に入ってから約3倍になっている。同社の純収益(Net Revenue)は昨年、約4分の3成長し、40億ドルを目前にしている。
また、ゲーム部門のGarenaは先行して南米でのシェアを獲得している。ラテンアメリカで最も注目されているEsportsのトップゲームがGarena Free Fireだ。Garena Free Fireは、無料でプレイできるモバイル向けバトルロイヤルゲームで、1日のプレイ人数は1億人を超え、世界的な人気を博しているが、その勢いは衰えていない。
App Annieによると、2021年第2四半期の東南アジア、ラテンアメリカ、インドにおけるモバイルゲームの売上高は「Free Fire」が引き続きトップ。Free Fireは、東南アジアおよびラテンアメリカでは過去8四半期連続、インドでは3四半期連続で、この首位の座を維持している。
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