中国ではAI新興企業の台頭しその企業価値の伸びが著しい。台頭するAI企業は画像認識技術を応用した監視システムを中央、地方政府に提供することで、早期の黒字化を果たし、その事業範囲を拡大している。そのなかでも最も成長著しいのが商湯科技(センスタイム)である。

商湯科技は香港中文大学情報工学科の湯暁鴎(Xiaoou Tang)教授によって2014年に設立された、香港特別行政区新界沙田区に本社を置く機械学習技術を応用した顔認識技術の研究と開発を手がける企業である。

湯のプロジェクトが商業化して香港サイエンスパークで立ち上げた。400社以上の顧客を持ち、400社以上の顧客を持ち華為技術(ファーウェイ)、小米科技(シャオミー)などなど中国のスマートフォンメーカーには画像認識技術を提供し。AIの研究論文も欧米の多国籍企業に匹敵する数であり、創業者の湯の母校でもあるマサチューセッツ工科大学とはAIの研究で提携している。

世界最大の顔認識ネットワークの構築に向けた中国政府の取り組みに貢献するだけでなく、同社は、上海市、 中国のスマートフォン大手Xiaomiから小売業者Suningのようなスマートシティ、スマートフォン、自動車、金融、小売等の業界に進出している。

商湯科技のWebsiteによると、人の目視による顔の認識の精度は97%だが、同社製品の顔認識の精度は2014年6月にそれを超える99.15%を記録した。顔検出に関しても92.9%と高い検出率を実現し、2016年のComputer Visionに関する世界トップの国際会議の一つである「CVPR 2019」で1位を獲得した。中国の警察はSenseTotemおよびSenseFaceシステムを使用してセキュリティ映像を分析し、事件の被疑者を特定する。政府による直接の支援と市民のプライバシーへの関心の薄さは、中国がこの会社のテクノロジーを利用して14億人の住民を徹底的に把握する社会を作ることを促している。

中国政府は、警察が指名手配の犯罪者を見つけるために顔認識を使用するという話を好むが、共産党の公式新聞であるPeople's Dailyの記事は、ポップスターのジャッキー・チャンのコンサートで顔の認識を利用して行われた一連の逮捕劇を取り上げている。

2019年10月、米商務省は7日、中国・新疆ウイグル自治区でウイグル人らイスラム教徒を中心とする少数民族に対する人権侵害や虐待に関与しているとして、中国の28法人をブラックリストに載せると発表した。

同年12月には商湯科技は、2019年の収益が前年比200%以上増加して7億5000万ドル前後になると予想された。これは、10月から政府の承認なしに米国企業から特定の部品を購入することが禁止されているにもかかわらず、スマートフォンメーカーのXiaomiやOppo、China MobileやAlibaba Groupで使用されているSenseTimeの技術への強い需要を示唆している。

商湯科技は最近、運転手監視システムと拡張現実(AR)プラットフォームを立ち上げている。 中国最大の地下鉄事業者である上海申通地鉄集団有限公司(Shanghai Shentong Metro Group)と、地下鉄交通監視用のAIソリューションを展開する契約を締結した。 同社は成都市と戦略的契約を結び、地域本部を設立し、一帯一路と連携して、中国西部市場を拡大および発展させる見込みである。

AIとスマートシティ

SenseTimeは、スマートシティ統合ソリューションのカテゴリーで4製品を発売している。「SenseFoundry 2.0」「SenseNebula」「Sense Pass」「SenseStudio」の4つ。

  • SenseFoundry 2.0は、都市のセキュリティ管理のためのコンピュータビジョン解析クラウドプラットフォームだ。昨年デビューした第1世代のSenseFoundry 1.0は、一度に10万通り以上の信号を処理することができる。また、1000億以上の非構造化および構造化された特徴を分析することができる。ディープラーニングと組み合わせることで、SenseFoundry 1.0は、顔認識、車両認識、乗客認識、群集分析、イベント検出などの複数の機能を備えている。SenseFoundry 2.0は、第1世代と比較して、高精度アルゴリズムセット、様々なアプリケーションシナリオに対応したアルゴリズムモデル、多次元解析エンジンなどのアップグレードが施されているという。
  • SenseNebulaは、エッジコンピューティング機能を実現するために設計されたスマートデバイスである。必要に応じて、カメラ、キャプチャマシン、入退室管理装置、来訪者登録機など、さまざまなフロントエンドデバイスと接続することができる。SenseNebula上の各インターフェースは、アプリケーションのシナリオに応じて異なるアルゴリズムモデルにアクセスできるようになっている。
SenseNebulaは、端末と接続し、即時的な機械学習ソリューションの実行を可能にするためのスマートデバイス。
  • SensePassは、1万分の1の誤差率で人体認識を可能にするために使用されるフロントエンド製品である。2万件の人体オフラインデータベースをサポートしているため、複雑なバックグラウンドシステムを導入することなく搭載することができる。また、厚さはわずか15mm。
SensePassはオフラインで2万体の人体認識を実行できる。オフィスの入退室管理などへの導入が容易。Image by SenseTime
  • Sense Studioは、交通、金融、学校、ホテル、景勝地などをサポートする複数のAIアプリケーションを収録したオープンプラットフォーム。ユーザーは必要なアプリケーションを選択し、それらを使用して、多くの障害なくビジネスをアップグレードすることができる。

商湯科技は中国の31の省から約100の都市にスマートシティソリューションを提供しており、その中には10万台以上のスマートカメラが配備されている。中国東部のある都市では、同社は2万台のスマートカメラと2,000台のGPUサーバーを備えた世界最大のスマートシティシステムを構築している。

AI教育

教育分野では、商湯科技は高校生向けのAI教科書を発表した。これは、商湯科技、教師、商業出版社、華東師範大学出版局、その他3つの教育機関の専門家が共同で取り組んだ成果である。また、同社は今年中にも中学向けのAI教科書のシリーズをデザインする予定だ。

商湯科技は、ディープラーニングプラットフォーム「SenseParrots」をベースに、AI教育の実験プラットフォーム「SenseStudy」を開始した。SenseStudyでは、200時間以上のAIやコーディングのコースが用意されている。顔認識、ジェスチャー認識、拡張現実、その他多くの技術についての実践や体験を行うことができる。

また、商湯科技はAI教育用のロボット製品を2つ発売した。「SenseRover Mini」と「SenseRover Pro」だ。SenseRover Miniは、AIの授業と連携するようにプログラムされた車で、主に1年生や2年生が使用する。Sense Rover Proは自動巡航や車線検知など多くの機能を備えた自動運転車です。ユーザーはSenseStudyにコードを入力することで運動制御を実現したり、センサーでいくつかの実験を行ったりすることができる。

学生がAIアルゴリズムのコーディングを学び、学習したことを応用するためのセンサーを搭載した小型の車「Sense Rover Pro」. Photo by SenseTime.

AIヘルスケア

商湯科技は、AI支援画像診断システムを開発する代わりに、病院のニーズに応え、あらゆる種類のデータを処理できるスマート診断・治療プラットフォームSenseCareを発表した。SenseCareは3Dレンダリングと臨床応用の同時性が高く、患者やユーザーにデータを視覚化されたインターフェースで表示することができる。同時に、すべてのデータは病院のサーバーに保存され、データの安全性を確保している。このプロダクトは上海の病院で、特に、癌科で、医者が癌を診断するのを助けるために採用された。

スマート小売

また、サミットで発表されたのは、スマートリテールプラットフォーム「SenseGO」。スマートカメラと組み合わせることで、SenseGOはオフラインでも顧客の行動を収集・分析することができる。また、SenseTimeは、顧客の注意を引くためにいくつかのインテリジェントな機能を備えたショッピングウィンドウを開発した。SenseGOは20万平方メートルのスーパーマーケットで採用されており、一度に5万人の顧客にサービスを提供することができる。

AR

SenseTime、新機能と業務提携でARソリューションをバージョンアップ。SenseAR、動画や生放送、映像にエフェクトをかける機能。SenseARは、人の顔や手などを認識して識別することができる。画像認識に基づき、SenseARはエフェクトソリューションを提供することができる。

また、SenseTimeはARグラスメーカーと提携し、ARグラスを共同開発することを発表した。

AIチップ

商湯科技の投資家にはQualcomm(クアルコム)がいる。近年のモバイルは機械学習用の専用チップ(いわゆるAIチップ)を搭載しており、今後は5G等の導入によりあらゆるデバイスに専用チップを搭載する可能性が生まれている。ハンドセットから基地局までを製造販売するHuaweiが自社は子会社がそのAIチップの開発をしているほか、Google、Tesla、Microsoft、NVIDIA等がこれを開発・提供しており、その専用チップの開発はQualcommにとっても喫緊の課題だった。この分野で商湯科技に先行するスタートアップとしては、英国のGrpahcoreがある。

4年で企業価値75億ドル

米リサーチ会社CB Insightsが最も有望なAI企業100社を選ぶ「AI 100」で、商湯科技は最も資金を調達したAI企業で首位となった。2019年の2月時点で16億3000万ドルと2位の「Face++」を展開するMegviiの2倍以上の規模だった。

2019年9月の報道で、商湯科技はSoftBankを含む投資家からの投資を確保した後、商湯科技の企業価値は今年75億ドルを超えており「IPOを急がない」とXu Li CEOは語っている。

ホンダ、DeNAと協業

センスタイムはホンダの研究開発子会社である株式会社本田技術研究所と自動運転技術の開発を2017年末に開始すると発表している。センスタイムがもつ「移動体認識技術」と、ホンダが有する「シーン理解」「リスク予測」「行動計画」といったAIアルゴリズムを融合することで、複雑な交通状況の市街地でも走行を可能にする、より高度な自動運転技術を開発目指すそうだ。自動運転技術開発競争に乗り遅れていたホンダにとってセンスタイムは好ましい協業相手だったようだ。

センスタイムは茨城県常総市に自動運転のテストコースを開設している。センスタイムは「このテストコースを、自動運転をはじめとする様々な車載事業の技術開発の拠点として活用していく」と説明する。

DeNAがこれまでのインターネットサービスの運営を通じて蓄積してきたAI技術活用の経験と、SenseTimeのコンピュータビジョンに関する知見と最先端のAI技術や製品を組み合わせ、ゲーム・エンターテインメント、スポーツ、ヘルスケア、eコマースのほか、小売からメディア業界まで、画像・映像を扱うあらゆる産業での活用を推進するという

DeNAと協業展開する予定の顔認証のSenseID Via DeNA プレスリリース。

参考文献

  1. Meng Jing, "World’s most valuable AI start-up SenseTime raises US$620 million to spearhead China tech ambitions", South China Morning Post
  2. Meng Jing, "Qualcomm bets on Chinese AI start-up SenseTime in bid to make mobile devices smarter", South China Morning Post
  3. Sarah Dai, "China AI unicorn SenseTime launches automatic ‘touch-up’ tool for self-conscious live-streamers" South China Morning Post
  4. Shang Yang. "China's AI Giant SenseTime Launches 11 New AI Products At Summit". May 15, 2019.
  5. Paul Mozur. "One Month, 500,000 Face Scans: How China Is Using A.I. to Profile a Minority". NY TImes. April 14, 2019.

Photo by SenseTime