ディズニーもTwitter買収の契約完了直前でボットに嫌気して撤退していた

イーロン・マスクがTwitterを買おうとして引き返したようにディズニーもTwitterを買う直前で引き返していたことが分かった。ディズニーのデジタル化を率いたボブ・アイガーもまた、大量のボットに尻込みしたようだ。

ディズニーもTwitter買収の契約完了直前でボットに嫌気して撤退していた
Photo by Kin Li on Unsplash

イーロン・マスクがTwitterを買おうとして引き返したようにディズニーもTwitterを買う直前で引き返していたことが分かった。ディズニーのデジタル化を率いたボブ・アイガーもまた、大量のボットに尻込みしたようだ。


2016年、当時ディズニーのCEOだったアイガーは、ディズニーのコンテンツを世界中に配信できる優れた方法だから、自社がTwitterを所有するべきだと自分を説得していた。そして、2016年の米大統領選の直前に、彼は考えを改めたという。

2019年に出版されたアイガーの回顧録では、ディズニーとTwitterの両社の取締役会はこの取引に合意していたが、Twitterで横行する「悪意」のためにディズニー側が考え直したと語っている。

「ジョブスが生きていたらAppleとDisneyは合併していた」とDisney CEOのボブ・アイガーが回想
DisneyはNetflix等とのストリーミング戦争を戦っているが、スティーブ・ジョブズがまだ生きていれば、アップルとウォルト・ディズニーは合併されるだろう、とディズニーのCEOボブ・アイガーは彼の回想録で語っています。

アイガーは9月上旬のイベントでより詳細にこの時のことを語っている。アイガーは、Twitterはディズニーにとって「驚異的な」配信プラットフォームになっただろうが、あまりにも多くの頭痛の種を伴うだろうと語っている。そのうちのひとつが、ボットだった。

以下は米テクノロジーメディアVox.comの一部抜粋、抄訳である。

「私たちはストリーミングビジネスに参入するつもりでした。私たちは、技術的なソリューションを必要としていました。私たちは素晴らしい知的財産(IP)を持っている。しかし、我々はテクノロジーカンパニーではありません。そのIPをどうやって世界中の消費者に届けるのか、ということについて右往左往していました。そして、自分たちで開発することを考えたのです。5年かけて5億ドル。世界が急速に変化していたため、お金ではなく、時間が必要だったのです。そして同時に、Twitterが売却を考えているという話も耳にしました」。

「私たちは、Twitterをグローバルな配信プラットフォームというソリューションとして捉え、すぐにそのプロセスに入りました。Twitterはソーシャルネットワークの一種として捉えられていました。しかし、私たちは、Twitterをまったく別のものとしてとらえていました。ニュース、スポーツ、エンターテインメント、そして世界中に配信できる。率直に言って、配信の面では驚異的なソリューションになったはずです」

そして、ディズニーの役員会とTwitterの役員会にコンセプト全体を売り込み、本当に実行する準備ができた後(交渉はちょうど終わったところでした)、私は家に帰って週末に考え、「私はまだ最大限注意深く(Twitter)を精査していない」と思いました。たしかに、流通の観点からは素晴らしい解決策だ。しかし、それ以外にも多くの課題や複雑な問題があり、偉大なグローバルブランドの経営者として、大きな混乱を招き、これまで直面したことのないような状況を管理しなければならないという覚悟はできていなかったのです」

「興味深いことに、私は最近のニュースを読んでいて、私たちはTwitterのユーザー(ユーザーと呼ぶのでしょうか)を注意深く観察していました。その時点で、Twitterの協力も得て、かなりの部分(大部分ではありませんが)が実在しないと推定されました」

「数は覚えていませんが、その価値は大きく割り引かれました。しかし、それは私たちの価値算定に組み込まれていたのです。実際、私たちの取引はかなり安かったんです」

「もちろん、ヘイトスピーチや、害を及ぼす可能性があることも考慮しなければなりません。私たちは、ディズニーの楽しさを創造するビジネスをしています。これは、私たちが引き受ける準備ができていなかっただけで、私も会社のCEOとして引き受ける準備ができていませんでしたし、無責任なことだとも思っていました」

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新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

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By エコノミスト(英国)
新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

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By エコノミスト(英国)
ビッグテックと地政学がインターネットを作り変える[英エコノミスト]

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By エコノミスト(英国)