Twitter大改造のリスクとリターン
2020年12月1日(火)、ドイツ・ベルリンで開催されたアクセル・シュプリンガー賞の授賞式に到着した、スペースXの創業者でテスラの最高経営責任者であるイーロン・マスク。Photographer: Liesa Johannssen-Koppitz/Bloomberg

Twitter大改造のリスクとリターン

多くの人が入場料なしで集まる「広場」である Twitter にとって、ブランド広告は適切な収益化手法であり、ここでサブスクを成功させるには、プラットフォームを強く改変する必要がある。 従業員の半分が去ろうとする中、無料と有料のユーザー両方のニーズを満たす製品開発は可能だろうか?

吉田拓史

多くの人が入場料なしで集まる「広場」である Twitter にとって、ブランド広告は適切な収益化手法であり、ここでサブスクを成功させるには、プラットフォームを強く改変する必要がある。 従業員の半分が去ろうとする中、無料と有料のユーザー両方のニーズを満たす製品開発は可能だろうか?


Twitterで何が起きているのか、まだ良くわからない。イーロン・マスクは余りにも騒がしい。ただ、確かなのは、従業員の半分の解雇が始まり、広告主の一時撤退が起きていることだ。

マスクはいったいどこを目指しているのか? Twitterを彼が払った440億ドルよりも価値のあるものに変える手段は存在するのだろうか?

まず、広告事業を見てみよう。Twitterの広告事業はSnapよりは良く、Meta Platformsよりは悪い。デジタル広告市場は大規模ユーザーを抱えるプレイヤーに有利にできており、Twitterは中間的な位置で、効果的な成長を遂げるのに失敗してきた。

メディアストラテジストのエリック・ベンジャミン・スーファートがマスクが抱えるジレンマを指摘していて興味深い。そのジレンマとはブランド広告とダイレクト・レスポンス広告という二種類のデジタル広告の間で生じているという。ブランド広告は認知を取ることを目標とする一方、ダイレクト・レスポンス広告はコンバージョン(商品の購入、いいね数)等を目標とする。Twitterは2020年のアナリスト向けイベントで、広告収入の85%がブランドからの拠出であることを明らかにしていたという。

Twitterの広告収入は現在、ブランド広告に過度に依存しており、ブランド広告は気まぐれで、ブランド・セーフティに敏感に反応する。マスクの買収が完了し、一連の喜劇が始まると、多くの大手広告代理店は、すでにTwitterへの支出を一時停止している。

「Twitterは、ピボットを実行するために、はるかに強力で生産的なダイレクトレスポンス広告プラットフォームを具体化しながら、同時にブランドの広告主に対応しなければなりません」とスーファートは書いている。つまり、ブランド広告の潮の満ち引きをバッファするため、ダイレクトレスポンス広告の広告主のためのツール群への投資が必要だ、という論旨だ。

しかし、進行中のリストラはこのツール開発を行うチームをも追い払う可能性がある。確かにこれはジレンマと言えるだろう。

次に、サブスクリプションを見てみよう。マスクが期待しているのは、広告収益にサブスクリプション収益を追加することだろう。サブスクリプションは毎月約束された経常収益(Recurring revenue)を生み出すため、顧客のロイヤルティが一定以上にある場合、広告よりも安定したビジネスになる。

今取り沙汰されているのは、サブスクプランのTwitter Blueを月額8ドルに引き上げ、認証バッジをこのプランの人質に取ろうとしていることだ。これ以外にも広告表示の縮小、リプライの優先的な表示のような特典が加わる予定という。

ユーザー1人あたり収益(ARPU)という観点で見てみよう。広告業者から見ると、ブランド広告はARPUが小さくスケールがモノを言う。このジャンルの覇者は未だにテレビ広告だ。ダイレクトレスポンス広告のARPUは中間を形成し、サブスクリプションのARPUは直接お金をもらうので高い。

Twitterのメインの収益源であるブランド広告が底引き網漁だとすると、サブスクリプションは一本釣り漁である。無料で沢山の人が集まるデジタルタウンスクエアであるTwitterにとって、ブランド広告はわかりやすい収益化手段であり、この人だかりに毎月の課金を説得するときに、プラットフォームの改変が必要であり、そこに新たなジレンマがあるだろう。無料ユーザーと有料ユーザーのニーズの両方を満たすのは至難の業かもしれない。

このTwitter大改造は、マスクがテスラやスペースXで好んだ強行軍そのものである。既存の広告ビジネスにプレッシャーをかけ、人員削減で様々な会社機能が一時的に弱くなることが想定される。それでも、サブスクリプションで収益の多様性を確保できれば、Twitterはこれまでのような脆弱な存在ではなくなるため、割に合うやり方と言えるだろう。

そもそもTwitterは緩慢な死の中にいた可能性があり、すでに決死隊以外の選択肢は持っていなかった可能性がある。ロイターが確認したTwitterの内部調査によると、新型コロナウイルスのパンデミック発生以降、「ヘビーツイーター」は「絶対的に減少」した。Twitterが定義するヘビーツイーターは、週6〜7日ログインし、週3〜4回は自らツイートを発信する利用者を指す。ヘビーツイーターは月間アクティブユーザー(MAU)全体の10%に満たないものの、ツイート総数の9割を占め、Twitterが世界全体で得る収入の半分を生み出す大事な存在だ。

私の穿った見方では、Twitterは「終わりの始まり」にいたと思う。それでも、座して死を待つよりは、決死隊の結成が適切なように見える。もちろん、マスクが何をやるかは依然として大きな不確実性を含んでいるのだが。

SNSは後進に道を譲れ
Twitter元幹部による内部告発はSNSに「最後の一撃」を食らわせたように見える。SNSはモバイル化の波に乗って人々の可処分時間を占領したが、トレンドの転換とその負の側面に注目が集まったことで、再浮上の契機はなくなった。