VRの「次の戦争」は近い

VRへの期待は一度崩壊したが、FacebookやAppleは次世代VR機器の開発に多額の資金を投下している。モバイルがテクノロジー業界を牽引していた時代が終わり、次のフロンティアが求められる中、VRへの期待は再び膨れ上がっている。

VRの「次の戦争」は近い
VRヘッドセットを装着するフェイスブック・リアリティ・ラボ(FRL)リサーチの研究員ネイサン・マツダ via Faceook Research.

要点

VRへの期待は一度崩壊したが、FacebookやAppleは次世代VR機器の開発に多額の資金を投下している。モバイルがテクノロジー業界を牽引していた時代が終わり、次のフロンティアが求められる中、VRへの期待は再び膨れ上がっている。


VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)への期待は一度最頂点に達したが、想定された成果が得られず崩壊した。業界の熱狂の象徴だったMagic Leapはそのハイプに見合うだけの成果をうみだせないまま、現在はBtoB事業に望みを託している。

このような不確実性の高いVRビジネスの将来に継続的に投資しているのが、財務的余裕を持つビッグテック企業である。

近年ではメタバースという言葉で形容されるように、ソーシャルメディアで行われていることが、ゲーム/仮想現実の中へと移行する可能性が話し合われているが、これはiPhoneなどのデバイスを販売するAppleやソーシャル・メディアの百貨店であるFacebookにとって無視できないものだ。

AppleはスマートフォンにおいてデバイスとOSを起点にアプリケーションのエコシステムを支配した。VRの入口となるヘッドセットはいま、かつてApple、Googleが繰り広げた戦争の次の戦場となっている。

米テックニュースサイトThe Informationの報道によると、噂されているAppleのAR/VRヘッドセットは、他のデバイスに依存するように設計されており、接続されたiPhoneやMacに、より多くのプロセッサを負荷する必要があるかもしれないとのことだ。Appleは、ヘッドセット用のカスタムチップを開発していると言われている。このSoCは、Appleの他のプロセッサに搭載されている機能を意図的に排除したものだ。

この新しいチップには、AIや機械学習を処理するAppleのニューラルエンジンは搭載されていないと言われているが、従来のチップよりもワイヤレスでのデータの送受信や動画の圧縮・解凍に優れた設計になっていると言われている。

The Informationの情報によると、バッテリー寿命を最大限に延ばすために、可能な限り電力効率を高めるように設計されており、チップの未使用部分を削除したり、他のデバイスからデータをストリーミングしたりすることで、その効果が期待できるとのことだ。腕時計やメガネなどのウェアラブル技術では、バッテリー駆動時間と性能・機能との間に常に微妙なバランスが存在する。初代Apple Watchでは、多くのタスクを接続されたiPhoneに委ねていたが、Appleは最終的にオンボードのプロセッサーを強力にして、多くのタスクを処理できるようにした。

Appleのヘッドセットが別のデバイスに依存しているという考えは2020年のBloombergのレポートの頃から伝えられていた。このレポートによると、ヘッドセットの初期バージョンは、ジョニー・アイブが自己完結型であるべきだと言い出し、ティム・クックがアイブの考えを退けるまでは、別の「据え置き型のハブ(プロトタイプでは小型のMacに似ていた)」と連動するようになっていたとのことだ。

アイブはもはやアップルでは働いていないが、だからといってAppleが据え置き型のハブに戻らないとはかぎらない。The Informationによると、AR/VRヘッドセットにはまだ独自のCPUとGPUが内蔵されており、スマホやタブレットと通信したり、基本的なスタンドアローンモードで動作したりする可能性が示唆されている。

The Informationによると、このデバイスには、ヘッドセットのレンズの1つと同じ大きさの「異常に大きい」イメージセンサーが搭載されており、製造が困難であることが明らかになっている。これまでのリーク情報には登場していなかったが、「AR (拡張現実)のためにユーザーの周囲から高解像度の画像データを取り込む」ために設計されているとのこと。ユーザーの視界を完全に遮らずにVRを行うことは難しく、また、ユーザーが外の世界を見ることができなければARを行うことも難しいというジレンマがある。

AppleがARデバイスを開発しているという噂は何年も前からあった。TF International Securitiesの著名なアナリストであるMing-Chi Kuoは、2022年に「ヘルメット型」のヘッドセットが登場するだろうと予測しているが、The Informationによると、ヘッドセット用のカスタムチップが量産できるようになるのは少なくとも1年後になるとのことだ。もしそれが正しければ、最良のシナリオであっても、2022年末までに製品を出荷するのは非常に厳しい状況となる。ただし、最初のバージョンが開発者や少数のユーザーを対象としたものであれば、それも可能かもしれない。The Informationは、より洗練されたメガネ型モデルが早ければ2023年に登場する可能性があるとしている。

「メタバース人員」1万人のFacebook

コンピュータグラフィックス (CG) の国際会議SIGGRAPHでは、フェイスブック・リアリティ・ラボ(FRL)リサーチが、研究員のネイサン・マツダが率いるVRヘッドセットを使った新しいコンセプト「リバース・パススルー(Reverse Pass-Through) VR」を発表した。

リバース・パススルーとは、簡単に言えば、ヘッドセットを装着している人の目が外の世界から見えるようにするVR研究の実験デモだ。これは、現在のクエストのヘッドセットが外部に向けたカメラを使って、ユーザーがヘッドセットを装着したまま外部の環境を簡単に見ることができるようにする Passthrough+や実験的なPassthrough APIを使ってできることとは対照的なものだ。

研究員のネイサン・マツダは、2Dの外向きディスプレイを搭載した初期のリバース・パススルー・プロトタイプを着用している。via Faceook Research.

近年、バーチャルリアリティ(VR)ヘッドセットは、そのユニークな没入型ディスプレイおよびインタラクションシステムが、より魅力的なエンタメ、生産性、およびテレプレゼンスのアプリケーションにつながることを期待して、コンシューマー技術となっている。しかし、VRディスプレイは、ユーザーを環境から孤立させ、そうすることで、共有スペースや公共スペースでのVRの使用や受け入れを制限している。

この孤立感を解消することが、ビデオパススルーVRの開発の重要な動機であり、VRヘッドセットのユーザーは、外部環境とその中にいる個人の再現を見ることができる。しかし、ヘッドセットをかぶった人の顔が見えないことが、理アースパススルーの開発のモチベーションだったと、マツダは論文で書いている。

マツダは最終的には、外部の観察者がメガネを見ているのと区別がつかないほどの高忠実度の体験に近づくことができる、と結論づけている。

Facebookでは現在、1万人以上のスタッフがVR / AR分野のさまざまなプロジェクトに取り組んでいる。その中には、現実世界に物体や情報を重ねて表示するARグラスの開発や、指の微妙な動きで現実世界と対話できるリストバンドの開発などが含まれている。

ただ、進捗は山あり谷ありだった。FacebookはOculusを買収してから7年が経過している。その間に非常に問題のあった創業者は追い出され、天才プログラマーのジョン・カーマックは汎用人工知能を作るためにプロジェクトを去っている。

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