法廷闘争を経たWaymoとUberが提携した背景
WaymoとUberの自律走行トラックをめぐる提携を発表した。この提携は自律走行どのように物流業界に適用されていくかの青写真を提供している。両者の間で過去にあった技術盗用問題が水に流されていることも興味深い。
アルファベット傘下の自律走行ソフトウェア企業のWaymoとUberは7日、米国の道路に自律走行式の貨物トラックを配備するために協力することを約束する「長期戦略的パートナーシップ」を発表した。
この提携により、自律走行ソフトウェアをWaymoが担い、UberはWaymoの自律走行トラックと荷主をマッチングさせる枠組みが生まれた。
Waymoは自律走行プロジェクトを2つの部門に分割している。消費者向けライドヘイリングサービスの「Waymo One」と、トラック輸送と地域配送の両方の形式で物品配送に注力する「Waymo Via」だ。一方、2017年に開始したUber Freightはトラックドライバーと荷主を結びつけるものである。
Waymoは、この提携を両社の製品の「深い統合」と表現しており、自律走行トラックが商用化された後にUberのネットワークに配備される方法の概要を示す共同開発の「製品ロードマップ」も含まれている。
このパートナーシップはまず、自律走行トラックがどのように物流業界に適用されていくかの青写真を提供している。ソフトウェア提供と荷主とトラックのマッチングを異なるエンティティが行う座組が見えた。両者の間で何らかの収益分配に至ることは想像に難くない。それでも、トラックはWaymoとUberのどちらかが所有するのか、それとも物流業者がトラックを所有するのか、という部分はまだ曖昧なままだ。ドライバーの人件費がなくなると仮定すると、物流業のコストの大半はトラックと燃料から生じることになるだろう。このコストを誰が負うのかはとても興味深い問いだ。
ロボタクシーにおいては、車両の製造者と自律走行ソフトウェアの提供者間での収益分配が想定されている。ただ、すべてを一社で行おうとしているテスラだけ例外となる。
また、今回の提携は、両者の間で過去にあった技術盗用問題が水に流されていることも注目すべきだろう。自律走行車技術者のアンソニー・レバンドフスキーは2016年にGoogleを辞めて自身の会社Ottoを立ち上げたが、Uberにすぐさまに買収された。その過程でレバンドフスキーがGoogle(後のWaymo)の企業秘密をUberにもたらしたことが裁判で認定され、彼は1億7,900万ドルの支払いを命じられた。この大半をUberが肩代わりすることで、UberとGoogleは和解に至っている。
Uber自体は自律走行の研究開発を手放している。Uberはカーネギーメロン大学出身者による研究開発部門を持っていたが、2018年にアリゾナ州で発生した人身事故以降、研究が壁にあたっていたとされ、その部門は新興企業Auroraと合併することによってスピンアウトした。同部門にはソフトバンクグループ、トヨタ、デンソーも投資していた。
このAuroraはトラックの自律走行技術をめぐってWaymoと競争している。UberはAuroraの大株主でもあるのだが、今回のWaymoとのパートナシップに至っている。仮に数社が将来の自律走行トラック市場を分け合うようなっているのなら、Waymoとも協業していたほうがUberにとってはビジネス機会は大きくなるということだろうか。それとも、AuroraがWaymoに対して大きく遅れを取っているのだろうか。