仮想通貨とWeb3の冬  ブロックチェーンの過大評価は訂正されるか?
Photo by Myriam Zilles on Unsplash

仮想通貨とWeb3の冬 ブロックチェーンの過大評価は訂正されるか?

吉田拓史

先週の仮想通貨(暗号通貨)市場の崩壊は、ビットコインやイーサリアムを含む暗号通貨界から4,000億ドルの市場価値を消し去った。「クリプトの冬」が来たという言説が世界中を循環している。

ほんの数週間前まで、投資家はまだ高値の取引を結び、ソフトウェア新興企業が人員削減や予算組み替えを余儀なくされるマクロ経済的要因から暗号新興企業は隔離されていると主張していた。暗号通貨詐欺検出サービスのChainalysisは、最近の例では1億7,000万ドルを調達し、バリュエーションを2倍の86億ドルにした

たった、1週間で仮想通貨のセンティメントはひっくり返った。先週木曜日、ビットコインは1年ぶりの安値となる26,000ドルまで下落した後、わずかに回復し、1ドルの価値があるとされるステーブルコイン、テラは9セントまで下落した。仮想通貨取引所コインベースの株価は過去最低に沈み、ブライアン・アームストロングCEOはツイッターで、同社が倒産するのではないかという不安を払拭しようとした。

PitchBookによると、ベンチャーキャピタル(VC)は今年これまでに世界の暗号通貨スタートアップにすでに130億ドル以上を投じており、これは2021年の暗号通貨セクターへの全投資額のほぼ半分にあたる。VCの資金調達全体が26%減少し、2021年第1四半期に企業および消費者向けスタートアップの評価額が減少しても、後期段階の暗号通貨企業の企業価値は上昇を続けた。

このラッシュは、セコイア・キャピタル、アクセル、ベッセマーパートナーズなどの有名VCが牽引したもので、この新興セクターのために数十億ドルの資金を確保していた。

だが、かつて熱狂的だった投資家たちは今、投資を続けるか、それともブレーキをかけるかを決めなければならない。

暗号投資会社パラダイムとデジタル通貨取引所コインベースの共同創業者であるフレッド・エーサムは、今週初めのツイートで「ユーフォリアが終わったことを神に感謝する」と述べた。ニュースレターNewcomerが初めて明らかにした財務報告書によると、2020年から2021年にかけて、トークンや株式を含むParadigmの保有資産の価値は343%爆発的に増加し、130億ドル以上となった。そして11月には、記録的な25億ドルのファンドを発表していた。

2021年3月、エーサムはParadigmのポートフォリオ企業の創業者に宛てた手紙の中で、「幸福な高揚感」の後に典型的に起こる「絶望と幻滅」について警告し、暗号の不安定なサイクルを乗り切るためのヒントを提示していた。「どん底の絶望は、実用性と明瞭性を強いる」と彼は書いている。

現状のテラの惨状が導く最悪シナリオは、この炎がステーブルコイン全体に延焼し、仮想通貨エコシステム自体がダメージを負う筋書きだ。テザーのようなテラとは異なり、ドル準備を持つステーブルコインですら、長い間、1枚1ドルを確かにする裏付け資産があるのか疑われ続けており、当局から罰則を科せられてきた経緯がある。

ステーブルコイン崩壊が仮想通貨のドミノ倒しを引き起こすシナリオ
先週、暗号通貨エコシステム最大の脆弱性のひとつであるステーブルコインが業火に包まれた。ドルに連動するはずの無担保型ステーブルコイン・テラが暴落し、設計ではコイン1枚当たり1ドルの価値で取引されるはずのテラは15日午後3時現在、20セントで取引されている。 仮想通貨の市場崩壊はどれくらいひどいか?ドルに連動するはずの無担保型ステーブルコインUST(TerraUSD)が暴落。取り付け騒ぎの様相だ。仮想通貨業界には1つ大きな傷口が生まれたが、これが連鎖的なリスクを引き起こす可能性に留意しないといけない。アクシオン|経済メディアニューヨーク・タイムズステーブルコインは、暗号通貨界全体にとって不可欠なも…

クリプトの誇大広告と過大評価が消失する

クリプトの冬の間に業界の中で広がった妄想が修正されることになるだろう。近年のWeb3をめぐる荒唐無稽なレトリックがその代表だ。

世界中のメディアは仮想通貨、ブロックチェーン、Web3の報道を行うときに大きな過ちを犯している。そしてこの過ちはもともとはベンチャーキャピタル業界から生まれ、世界中に拡散されたものである。

Web3の誇大広告はいつ崩壊するか?
いつかWeb3をめぐる幻想が崩壊するだろう。ただ、多数派はそれがクールに思えたり、ギャンブルの格好のネタだから夢中になっている。そういう意味でWeb3のいくつかの部分は生存の機会があるだろう。

ブロックチェーンは既存のインフラを代替しうるものではなく、限定された要件での利用可能性がある、というものだ。しかも、その利用可能性はいまメディア空間で語られているよりも遥かに小さいものだ。

基本的には暗号通貨以外の用途を見つけるのは難しい。決済手段としても有望ではなく、ペイメントネットワークとしてはあまりに不利な条件がそろっている。デジタル資産取引所FTXの創設者であるサム・バンクマン=フリード氏は今週、ビットコインを支えるブロックチェーン取引の検証システムである「プルーフ・オブ・ワーク」は、暗号通貨を有効な決済手段とするために必要となる数百万の取引に対処できる規模に拡張できないと述べている。

ほぼ唯一の希望は換骨奪胎されたブロックチェーンを利用した暗号通貨であり、これがアリペイ、ウィーチャットペイのような決済ネットワークに匹敵するパフォーマンスを示せるかは、中国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の行方を見守る必要がある。パーミションドチェーンには他にも細々とした応用可能性が存在するものの、大きなインパクトを引き起こしそうなものを見つけるのは困難だ。

ブロックチェーンを「打出の小槌」とする共通理解は人類の資源を長期に渡って浪費することに繋がりうる。メディア企業に勤める人はこの誤りを訂正するようになってもらいたい。

結局、プーチンがウクライナを攻めようが、史上空前の金融緩和がインフレを引き起こそうが、資源やコモディティの危機、グローバルサプライチェーンの不具合に見舞われようが、世界は常にリターンの得られる場を探している。近年のクリプト・ユーフォリアはそのようなマネーが誤った方向に向かっていた、ということを示している。このバブル崩壊は正しい崩壊だ。