近年盛り上がる反ビッグテックの議論の1つは、革新的なテクノロジー企業が実際に革新を打ち消しているということです。ベンチャーキャピタリスト、少なくともそのうちの数人かは、それを「キルゾーン」と呼んでいます。

ビッグテックからのあらゆる種類の脅威に関するシカゴ大学での会議で、ベンチャーキャピタリストのAlbert Wengerがその理論を具体化しました。彼の主張の一部を引用します。

「GAFAのような企業の規模が、新興企業へ与える影響は巨大です。VCのポートフォリオ企業の創業者やCEOを結びつける年次サミットが昨年あり、VCの1人から出てきた言葉は『Facebook、Apple、Amazon、Googleのキルゾーンの外部にだけ投資することにしている』でした」。

「キルゾーンは新しいものではありません。Microsoftは、プラットフォームを独占したときにそれを実現しました。それはAmazon、Google、Facebookによって実行されているプレイブックでもあります。そしてすべての大きなデジタルプラットフォームによって実行されています」。

近年のデジタルプラットフォーマーの巨大化は圧倒的です。Apple、Microsoft、Google、Amazon、Facebookの合計市場価値は5.5兆ドルを超えています。ビッグテックに批判的な人は、大企業は合併買収を用いて、新興企業のビジネスが勢いを増す前に、場合によっては単にそれらを閉鎖するための「買い殺し」(キラーアクイジション)戦術を実行する、と指摘します。これにより、最も脅威となる可能性のある競合他社を市場から除外することが可能になります。GoogleとFacebookはこれまで何百もの企業を買収し、非常に頻繁にそれらを閉鎖しているのは事実です。

5つの大企業は連邦取引委員会(FTC)の監視の下にありますが、テクノロジー市場の他の企業は、頻繁に、最も革新的な潜在的な競合他社を初期段階のうちに買収しています。たとえば、5年前、SalesforceはRelateIQに3億9000万ドルを支払いました。この新興企業の技術はSalesforce自体を飛躍させると見られていたからです。

必ずしも、VC支援のスタートアップが全面的に大手企業に降伏するようになっているというわけではありません。米国のVCは多量のお金を市場に注ぎ込み、満足のいく出口活動(イグジット)を遂げているように見えます。PitchBookによると、2018年の米国のベンチャーキャピタル投資は1309億ドルに到達しました。ベンチャー支援の出口活動は4Qで沈静化しましたが、2019年通年の米国のVC出口活動時に創出された価値は、882の流動性イベントで2,564億ドルでした。

ビデオ会議ツールのZoomは米国のVCが好みそうな「想定外」です。MicrosoftのSkype、GoogleのHangoutが先発していた市場に対して、後発のZoomは製品の品質を頼りに潜り込むことができました。Zoomは2019年のテックIPOのなかでも最も祝福されるべきパフォーマンスを示し、上場後も堅調に成長しています。

2018年のコンサルタント会社オリバーワイマンによるベンチャーキャピタル投資分析は、特にFacebook、Google、Amazon(FGA)のVCへの影響を調査しています。この調査はFacebookとの協力によって実施されました。FacebookはWhatsApp、Instagramの早期買収が「キラーアクイジション」として捉えられ、ライバルのSnapchatをコピー作戦で退場させた戦い方はまさしく「キルゾーン」的です。

さて、このような含意の元、オリバーワイマンが指摘する重要なポイントは次のとおりです。Facebookにとって好ましい調査結果が並んでいます。

  1. グローバルなベンチャーキャピタル投資が引き続き大量にあり、昨年は約1500億ドルで、35%がテクノロジー企業に投資しています。
  2. FGAによるベンチャー投資は、総投資額のわずか4%で、総技術投資に対して「比較的重要ではない」。
  3. FGAによるM&Aは、世界のテックM&Aの「ごく一部」に過ぎず、過去3年間のテックM&A活動全体の1%を超えていません。
  4. FGAが買収したハイテクサブセクターとそうでないテクノロジーサブセクターの成長率に実質的な違いはありません。
  5. FGAの活動は、初期段階の投資家に追加の出口オプションを提供します。たとえば、2014年にFacebookがOculusを20億ドルで買収したことは、Andreessen Horowitzなどのベンチャーキャピタルに迅速かつ収益性の高い出口の機会をもたらしました。

「進撃の巨人」に対し小人は無力

ただし、巨人がスタートアップを完全にコピーしなくても、大手企業は新興企業の見込みをくじくことができます。2017年、Amazonは食料品店であるWhole Foods Marketを137億ドルで購入しました。Amazonがこのスペースに参入するという期待が高まったため、公開を準備していた食品配達のスタートアップであるBlue Apronは、突然、相対的な価値の低下に苦しみ、株式上場は不調に陥りました。その後も従業員による訴訟、レイオフを経験し、現在は事業売却を検討している、とTech Crunchは報じました。

スタートアップの外部環境は険しくなっています。現在、恐ろしい技術の巨人の軍隊はより大きく、オンライン検索、ソーシャルメディア、デジタル広告、バーチャルリアリティ、メッセージングと通信、スマートフォンとホームスピーカー、クラウドコンピューティング、スマートソフトウェア、eコマースを含む幅広い分野で事業を展開しています。

いくつかの例外があります。 Airbnb、Uber、Slack、およびその他の「ユニコーン」は、むしろ、既存企業との競争に直面しています。しかし、彼らの数は少なく、多くのスタートアップはより達成可能な目標に照準を合わせることを学びました。起業家はどの大企業が彼らを買収するかについて、ずっと早く考えるようになりました。場合によっては創業前から検討し、買収されやすい企業を創業し、合流後に社内のラダーをうまく登ることまで考えている人すらいます。スタートアップの90%は、規模を達成するためではなく事業売却用に構築されている、と考える人すらいるほどです。

キルゾーンとキラーアクイジションは、FTCの最も関心の高い問題です。FTCは2月、5社の大手テクノロジー企業(Alphabet、Amazon、Apple、Facebook、Microsoft)に特別注文を発行しました。5社は、2010年1月1日から2019年12月31日までの間に行われた各取引の条件、範囲、構造、目的など、行ったすべての取引についてすべて報告する必要があります。これが業界の慣行に対しどの程度影響力があるのか、人々は注目の視線を送っています。

参考文献

Asher Schechter. Google and Facebook’s “Kill Zone”: “We’ve Taken the Focus Off of Rewarding Genius and Innovation to Rewarding Capital and Scale”. Pro-Market. May, 2018.

James Pethokoukis. A new analysis takes a shot at the idea Big Tech has created a ‘kill zone’ for startups

Oliver Wyman. Assesing the Impact of Big Tech on Venture Investment. July, 2018.

Pitch Book. US VC Valuations Report. February 24, 2020.

FTC. FTC to Examine Past Acquisitions by Large Technology Companies. February 11, 2020.

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