インテルがRISC-Vチップ設計SiFiveに買収提案した背景
Armの対抗馬はインテルの仲間?
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要点
NVIDIAがArmを買収し、米中の対立が過熱する中、RISC-Vのポジションは重要性を高めている。SiFiveはRISC-Vコミュニティの牽引役であり、半導体委託製造事業をブーストしたいインテルにとっては格好の買収候補となった。
インテルは、RISC-Vチップの設計者であるSiFiveに21億ドルのオファーを出したと噂されている。SiFiveはチップメーカーではなく、ArmのようにCPUを設計し、Armとは異なり柔軟性のあるライセンスをチップベンダーに販売している。
インテルのCEOであるパット・ゲルシンガーが先日発表した、「IDM 2.0構想」の一環として、自社のx86プロセッサ設計の他社へのライセンス供与を開始するという発表には驚かされたが、同社はさらに、新しいカスタムファウンドリー企業であるIntel Foundry Services(IFS)において、サードパーティのArm設計をファブリングすることに前向きであることを明らかにした。自社の設計だけでなく、顧客向けにRISC-VのCPUにも門戸を開くことになるという。
インテルは現在、自社の製造能力を高めるために多額の投資を行っている。そのためには、製造拠点に注文をもたらしてくれる顧客が必要だ。先月、SiFiveはインテルのファウンドリ事業との協業を発表していた。インテルは2018年、SiFiveに投資したことがあるが、その時点では想定していなかったシナリオを辿っているだろう。
SiFiveを買収することで、インテルは急速に拡大しているRISC-Vチップ市場に橋頭堡を得ることができる。現在、RISC-VのCPUを開発していることが知られている企業のほとんどは、低性能・低消費電力のシナリオで展開しているが、SiFiveは数年前からより高速なCPUの開発に取り組んでいる。
インテルは、RISC-Vとx86(CISCと呼ばれる命令セットの一種)を特定の市場において補完的なアーキテクチャと位置づけ、x86が伝統的にカバーしない低消費電力のマイクロコントローラや製品をRISC-Vが担当するようにしたいと考えているのかもしれない。インテルはかつてモバイルや組み込みの分野でArmに挑もうとしたが、失敗してあきらめた。インテルは、もしこの合併が実現すれば、NVIDIAと協力したくない、あるいは協力できないArmの顧客を吸い取ることに興味があるかもしれない。
SiFiveとは
SiFiveは、RISC-Vプロセッサコア、システムオンチップ、および関連技術の設計を行っている。例えば、Tenstorrent社はSiFive社のIPをAIチップに採用し、Samsung社は5GモデムにSiFive社のCPUコアを採用している。また、SiFiveは、HiFive Unmatchedや、BBCのDoctor Whoをテーマにした子供向けプログラミングキットに使用されているLearn Inventorボードなど、SiFiveのチップを搭載した独自のボードも製造している。
SiFiveは、2015年にカリフォルニア大学バークレー校の3人の研究者であるKrste Asanović、Yunsup Lee、およびAndrew Watermanによって設立された。この三人はDavid Patterson教授が所長を務めていたカリフォルニア大学バークレー校のParallel Computing LaboratoryでRISC-Vを開発したメンバーでもある。
RISC-Vが世界的に注目されているのは、RISC-Vが優れた新しいチップ技術であるからではなく、ソフトウェアが移植可能なフリーでオープンな共通規格であり、誰もがソフトウェアを実行するための独自のハードウェアを自由に開発できることにある。しかし、Linuxに触発された「自由な命令セット」を生み出しても、Armのようなチップの設計をライセンスする企業がない限りはRISC-Vの普及は現実的ではなかった。このため、三人は命令セットの設計と同時にチップ設計会社を作った。
現状、RISC-Vを採用した企業には、Armライセンスに伴うコストの削減と引き換えに、検証、物理設計、ソフトウェア開発の費用が生じている。SiFiveはこの顧客のコストをビジネス機会と捉え、顧客が必要とするシステムオンチップを設計し、個々のアプリケーションに適したCPUコアをサポートするビジネスユニットである「OpenFive」を開始している。
SiFiveは昨年、シリーズEラウンドで6,100万ドルを調達しており、推定5億ドルの評価を受けている。SiFiveは、Qualcomm、Western Digital、SK Hynixを支援者に持ち、インテルも小さいながらも株主の1人だ。
NVIDIAのArm買収と米中の対立
半導体業界の中には、NVIDIAがARMを買収する可能性があるため、チップ企業はRISC-Vへの投資を増やしている動きがある。新しいCPUアーキテクチャへの移行は、1〜3年前に下準備をしておく方がはるかに簡単だ。
業界では中立的な存在であるArmが、初めて単一のチップ企業の手に渡ることになる。NVIDIAはArmの中立モデルを維持すると両社が約束していたにもかかわらず、今週の発表から数時間のうちに、NVIDIAが価格を引き上げるのではないか、あるいはNVIDIAのライバル企業がArm技術を使用するのを難しくするのではないかという懸念がチップ業界に生じている。
最近の評価額が5億ドルに達したSiFiveは、複数の企業からの買収提案を検討していると報じられているが、それでも独立した企業であり続けることを選ぶかもしれない。SiFiveとRISC-Vへの関心の多くは、NVIDIAがArmを支配する事によって生じる落とし穴を避けようとする企業からのものだ。
もともと米国の圧力に直面していた中国企業にとって、Armの買収は深刻な事態だ。SiFiveが昨年、CEOとして迎え入れた、クアルコムの自動車部門を担当していた元幹部のPatrick Littleによると、半導体メーカーのトップ10社のうち6社がSiFiveと提携しているという。
Image by Intel.
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