中国超富裕層の間でシンガポールでの資産運用会社設立がブーム
シンガポールに設立された中国本土の富豪によるファミリーオフィス(富裕層とその親族のために設立されたプライベート資産管理会社)のブームが、数千人の金融専門家の雇用を生み出し、住宅価格を高騰させている。
シンガポールに設立された中国本土の富豪によるファミリーオフィス(富裕層とその親族のために設立されたプライベート資産管理会社)のブームが、数千人の金融専門家の雇用を生み出し、住宅価格を高騰させている。
フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道によると、中国から資産を移す中国本土の富裕層は、シンガポールに拠点を置くシングルファミリーオフィスの増加の半分以上を占めている。
Citiのプライベートバンクのレポートでは、シンガポールのファミリーオフィスの数は2017年から2019年にかけて5倍に急増し、2020年末の400から1年後には700へとほぼ倍増した、とされている。コロナウイルスの世界的流行の開始時点からカウントすると、その数は3倍近くに急増し、現在では1,500にものぼると推定されている。
ファミリーオフィスの創設者は、雇用ビザを確保し、家族をシンガポールに移住させるために、この仕組みを利用することが多いという。しかし、今年4月以降、シンガポールに拠点を置くファミリーオフィスは、免税の対象となる投資専門家を少なくとも2人雇用することが義務づけられた。大規模なファンドでは3人以上でなければならない。この結果、資産運用、プライベート・ウェルス・マネジメント、その他の銀行業務の専門家を何千人も雇用する動機付けが生まれたようだ。
ファミリーオフィス・ファンドの急増に驚いたシンガポール政府は、今年、最低資本金と雇用の要件を引き上げ、ルールを厳格化した。税金の免除と投資専門家の雇用を実現するには、申請者は2年以内に運用資産を2,000万シンガポールドル(約20億円)まで増やすことを約束しなければならない。また、運用資産の10%以上(または1,000万ドルのいずれか多い方)を在シンガポール企業株や新興企業など現地で投資し、年間20万シンガポールドルの事業支出が必要となる。
不動産コンサルタントKnight Frankの2020年富裕層レポートでは、2026年までにアジアがヨーロッパを抜いて北米に次ぐ富裕層ハブとなり、3,000万ドル以上の資産を持つ超富裕層が225,391人、そのうち6,000人がシンガポールにいると想定されている。シンガポールの超富裕層の数は、10年間で268%の急増を予想されていた。
中国本土では、習近平氏が異例の3選を遂げ、残りの人生の間、中国を支配する可能性を持っている。中国人富豪は、3選が決まる前から、中国からの撤退の準備に何年も費やし、資本を安全なオフショアに合法的に移動させ、家族のために中国以外の居住地や新しい市民権を手配してきたという。その主要な目的地がシンガポールとなっているようだ。香港は長い間、中国の富裕層やエリート一族に好まれてきたが、北京の支配力が強まるにつれ、その魅力が薄れてきたという。
この1年でシンガポールに約30のファミリーオフィスを設立した、シンガポールに拠点を置く法律事務所ベイフロント・ローのディレクター、ライアン・リンは、、ほとんどの中国人は資金を移動させるだけでなく、移住することを希望している、とFTに対して語っている。
アリババ創業者のジャック・マー、テニス選手の彭秀慧、エリート金融家の肖建華など、著名人がここ数年、一時的あるいは長期的に姿を消していることから、中国本土にとどまるリスクについての懸念はますます強まっている。
この超富裕層の移住熱は、シンガポールの住宅市場にバブルを生み出している。中国本土の富裕層投資家が海外の高級住宅を買い漁り、世界的な不動産不況をものともしない勢いを見せている。
不動産コンサルタントOrangeTee & Tieが10月に発表したレポートによると、2022年の最初の8カ月間にシンガポールで海外バイヤーに販売されたコンドミニアム(マンション)の42%を中国本土のバイヤーが購入した。また、彼らは今年、一等地の高級物件を購入した最大のグループであり、1棟の価格が500万シンガポールドル(350万ドル)を超えるマンションのほぼ20%を買ったとされる。
シンガポールの不動産購入に関する新税制や住宅ローンの融資限度額の引き下げは、需要を減退させることはなさそうだ。「経済の不確実性が高まる中、シンガポールドルが上昇しており、シンガポールの不動産は引き続き安全資産とみなされるだろう」とOrangeTee & Tieは報告書で述べている。