ソフトバンクの孫正義王朝が崩壊するシナリオ

孫正義氏の「ソフトバンク財閥」における支配力が危機にさらされている。同社の純資産価値(NAV)の縮小を株価が織り込むと、孫政権は揺らぐだろう。危機が差し迫ったときの鍵は、最高財務責任者(CFO)の後藤芳光氏が握っているのかもしれない。

ソフトバンクの孫正義王朝が崩壊するシナリオ
2018年3月27日(火)、米ニューヨークでの記者会見で発言するソフトバンクグループ株式会社の孫正義会長兼最高経営責任者(CEO)。Photographer: Jeenah Moon/Bloomberg.

孫正義氏の「ソフトバンク財閥」における支配力が危機にさらされている。同社の純資産価値(NAV)の縮小を株価が織り込むと、孫政権は揺らぐだろう。危機が差し迫ったときの鍵は、最高財務責任者(CFO)の後藤芳光氏が握っているのかもしれない。


ブルームバーグのMin Jeong Leeと日向貴彦は、ソフトバンクグループ(SBG)が関東財務局に提出した20日付の変更報告書を調べ、「孫社長らの2月13日時点の担保株数は22年5月から430万株増え、比率は34%から35%に上昇した」と報告した。孫社長個人の保有株数に対する担保の割合は39%と、5月の37%から上昇したという。

担保を大幅に増やしたのは、みずほ銀行とSBI新生銀行。みずほ銀行では5月時点の1,835万株から2,100万株近く、SBI新生銀行では5月時点の800万株から1,270万株が担保に設定されている。

これはSon Asset Management LLCなど、孫氏の複数の資産管理会社で保有されている担保や株式を考慮したものとMin Jeong Leeは書いている。孫氏のSBG株の担保差し入れは、SBGの子会社であるSVF2に対しても行われている。孫氏はSVF2などに対しサイドディールに基づいて約51億ドルの未払金を抱えている。

ソフトバンクGのガバナンスが問われている
ソフトバンクグループ(SBG)の企業統治(ガバナンス)が問われている。破綻したグリーンシルとワイヤーカードを利用した物議を醸す行動や、孫正義氏ら経営陣による会社を利用した個人的利益の追求は、同社の評判を損ねている。

株価が一定のレンジにとどまらない限り、孫氏の「財閥支配」は弱まる。前回のブログでは、私は純資産価値(NAV)が7.1兆円と独自算定した。21日現在の時価総額は9.8兆円だ。もし時価総額が、適正に思われる独自算定NAVの水準まで落ち込むと、孫氏の担保比率はいっそう増すだろう。公開情報の範疇では、孫氏にはSBG株以外の確たる資産は存在しない。

急激に縮小するソフトバンクG
ソフトバンクグループ(SBG)は急激に縮小している。私の独自算定では負債比率は最大60%にせり上がり、純資産は7.1兆円まで急減した。複雑な財務構造を持つ同社。潜在的な損失はすべて会計認識されたか、それともまだ残っているのか。

このシナリオを避ける手段の一つが、自社株買いだ。しかし、急激に資産を縮小させている同社にとって、以前のように自社株買いによって株価を押し上げる戦略を取るとは考えづらい。私の独自算定では同社の負債比率、Loan to Value(LTV)は最大6割に達している。複雑な企業構造の下、そのいたる所で多種多様な負債を負う同社は、少しでも現金を多く持ち、金融機関と投資家を安心させる必要がある。

これは、SBGやそのステークホルダーが孫氏の政権を継続させるか、それとも終わらせるかの瀬戸際を迎えていることを意味する。前々回の業績報告では、孫氏は引退とも取れる発言をした。それでも、株価は孫氏が影響力を失うレベルにはまだ到達せず、孫氏は権力の座に座り続けている。玉座の行方を向かってステークホルダーの思惑が交錯しているのかもしれない。

仮に孫氏の王朝が終わるとしたら、誰がそれを引き継ぐのか、それとも、財閥はどのように解体されるのか? そのヒントは、最高財務責任者(CFO)の後藤芳光氏にあるかもしれない。後藤氏は、ソフトバンク財閥に最もお金を貸しているみずほ銀行グループの一つである、安田信託銀行(現みずほ信託銀行)の出身だ。

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