トヨタとVWがソフトウェア内製に大苦戦:搭載を数年後ろ倒し

トヨタとフォルクスワーゲン(VW)の自動車業界トップ2はともに自前のソフトウェア開発を試みたものの、かなり苦戦しているようだ。成熟し大企業が新たな技術的専門知識を既存の構造に統合することの難しさを物語る。自動車とソフトウェアはかなり違う。

トヨタとVWがソフトウェア内製に大苦戦:搭載を数年後ろ倒し
2023年10月25日(水)、東京で開催されたジャパンモビリティショーでスピーチするトヨタ自動車の佐藤恒治社長。日本の自動車メーカーは4年ぶりにモーターショーを開催し、EV時代においても侮れない存在であり続けることをアピールしている。Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

トヨタとフォルクスワーゲン(VW)の自動車業界トップ2はともに自前のソフトウェア開発を試みたが、かなり苦戦しているようだ。成熟した大企業が新たな技術的専門知識を統合することの難しさを物語る。自動車とソフトウェアはかなり違う。


VWのソフトウェア部門、2,000人のリストラか

ドイツの『Manager Magazin』誌の報道によると、ソフトウェア会社CARIAD(カリアド)のボスであるピーター・ボッシュは、同社のドイツ人従業員6,500人のうち2,000人の削減を望んでいるという。VWグループの取締役会は、2024年から2025年末までの間に実施される人員削減を承認したと、同誌は同グループの主要幹部らの話を引用して伝えた。しかし、この計画にはまだ労働評議会の承認が必要であり、労働評議会は2025年半ばまで労働者の雇用を保証している、とロイターは報じている。

(m+) 2000 Stellen weg: Wie Volkswagens marode Software-Tochter Cariad saniert werden soll
Cariad-Chef Peter Bosch legt einen Sanierungsplan für Volkswagens marode Softwaretochter vor. 2000 Stellen fallen weg. Weitere Verzögerungen bei Modellanläufen werden erwartet. Harte Nachrichten auch für Konzernboss Oliver Blume – aber er stützt den Plan.

人員削減には資本関係の整理も含まれるようだ。Manager Magazinの報道によると、カリアドは持株会社に連なる約40の関連会社のネットワークを構築しているが、ボッシュは持ち株の半分を売却し、組織を再編成したいと考えている。

リストラ計画の大本にはソフトウェア開発がうまくいっていないことがあるようだ。アウディのSUV『Q6 e-tron』とコンパクトSUVの『ポルシェマカン』の電気自動車(EV)モデルの市場投入が、ソフトウェア開発の遅れによりすでに数回延期された後、さらに16~18週間の遅れが生じている。同誌は2024年まで遅れる可能性を示唆。2つのモデルとも旧型のソフトウェアを搭載することになりそうだ。

自動車OSから様々なアプリケーションを含む次期スケーラブル・システムズ・プラットフォーム(SSP)アーキテクチャは、当初は2025年リリース予定だったが、再設計される見通しという。おそらく修復が高くつく欠陥があり、ゼロからやり直す必要があるということだ。

フォルクスワーゲンは、2020年にカリアドを設立し、車載ソフトウェアの内製化を進めた。しかし、異なるワークカルチャーの融合や、安全基準のクリア、複雑な要件の理解など、さまざまな課題に直面し、開発が遅延。2022年には、ディースの解雇や、ポルシェマカンの開発遅延など、大きな損害を被った。

独VWのソフトウェア内製が大炎上、日本勢は「明日は我が身」
フォルクスワーゲン(VW)のソフトウェア内製の試みは炎上し、方向転換を迫られている。「クルマ屋がソフトウェアを作る」ことの難しさを改めて知らしめている。出遅れている日本勢にとって明日は我が身だ。

トヨタのウーブンも再編成

トヨタでも似たようなことが起きているようだ。トヨタは、2021年にウーブン・バイ・トヨタ(WbyT)という社内スタートアップを設立した。WbyTは、富士山の近くに未来都市を建設し、自律走行車やロボット、水素駆動モビリティをテストするといった野心的なプロジェクトを持っていた。当時トヨタのCEOだった豊田章男は、このベンチャー企業に個人的に5%出資し、3,400万ドルを投資した。

しかし、最近、豊田章男現会長がWbyTの全株式を手放し、WbyTがトヨタの100%子会社となること、WbyTを率いてきたジェームス・カフナーCEOが退任し、デンソー出身の隈部肇が新CEOに就任したことが発表された。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先週、ウーブンではソフトウェアのリリースが遅れ、都市構想はまだ始動しておらず、カフナーのマネジメントの下で集められたエンジニアの離脱が起きていると報じた

The World’s Biggest Carmaker Made a Huge Bet on Tech. Things Went Wrong Fast.
The company knew it needed new expertise. But creating a startup mentality to mesh with an 86-year-old giant didn’t work.

スタートアップとトヨタ本体でソフトウェアに対する考え方がしばしば一致しなかったとされ、これが子飼のデンソー出身者の配置と子会社化につながったのかもしれない。トヨタはWbyTをデンソーのようなサプライヤーとして定義づけ、同社の巨大なサプライチェーンに組み入れようとしたが、自動車部品とソフトウェアの違いは思いの外大きかったのかもしれない。

WSJによると、不手際や納期のずれがあり、ソフトウェアの完全な展開は2027年までずれ込んだとされ、トヨタは是正措置を講じ、WbyTにベテランの自動車会社幹部を増員したという。

しかし、増員された幹部はソフトウェアの専門知識を持たないため、状況を改善できるのか疑問符がつく。WSJの記事では、トヨタが自動車業界で世界一になるために練り上げた一切のミスを許さない社風が、ソフトウェアエンジニアの「髪の毛を抜けさせた」と記されている(現場の人たちがそうジョークを言い合っていたのかもしれない)。トヨタは、整然としたスケジュールと厳格な予算管理を重視する文化を有している。これは、ソフトウェア業界の新興企業のあり方とは対照的である。新興企業は、迅速なイノベーションと柔軟な対応を重視する。

これはトヨタとVWだけの問題ではない。ゼネラルモーターズ(GM)やホンダ、フォードなどの他の自動車メーカーも、同様の課題に直面している。

ソフトウェア定義自動車への険しい道のり
自動車がソフトウェアによって制御されることで、自動車ビジネスが抜本的に変化することは、ほとんどの業界関係者の共通認識になっている。ただ、それを実現する力はこれまで自動車業界にはなかったものだ。各社は試行錯誤を繰り返している。

一方、テスラは、広範なソフトウェア制御を自動車に組み込むことに成功し、中国のEV勢は、NVIDIAのような半導体/ソフトウェア企業との協業を受け入れている。

中国EV産業、自動運転の実現に向けてNVIDIAチップを選択
急速な展開を見せる中国のEV業界は、自動運転やその他のソフトウェア要求を満たす手段として、NVIDIAの半導体および技術スタックを選択している。その結果が上海の展示会にて鮮明に示され、クルマの世界がどれほど劇的に進化しているかが明確に示された。

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Fastlyは、LLMのAPI応答をキャッシュすることで、コスト削減と高速化を実現する「Fastly AI Accelerator」の提供を開始した。キップ・コンプトン最高プロダクト責任者(CPO)は、類似した質問への応答を再利用し、効率的な処理を可能にすると説明した。さらに、コンプトンは、エッジコンピューティングの利点を活かしたパーソナライズや、エッジにおけるGPUの経済性、セキュリティへの取り組みなど、FastlyのAI戦略について語った。

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