トヨタとVWがソフトウェア内製に大苦戦:搭載を数年後ろ倒し
トヨタとフォルクスワーゲン(VW)の自動車業界トップ2はともに自前のソフトウェア開発を試みたものの、かなり苦戦しているようだ。成熟し大企業が新たな技術的専門知識を既存の構造に統合することの難しさを物語る。自動車とソフトウェアはかなり違う。
トヨタとフォルクスワーゲン(VW)の自動車業界トップ2はともに自前のソフトウェア開発を試みたが、かなり苦戦しているようだ。成熟した大企業が新たな技術的専門知識を統合することの難しさを物語る。自動車とソフトウェアはかなり違う。
VWのソフトウェア部門、2,000人のリストラか
ドイツの『Manager Magazin』誌の報道によると、ソフトウェア会社CARIAD(カリアド)のボスであるピーター・ボッシュは、同社のドイツ人従業員6,500人のうち2,000人の削減を望んでいるという。VWグループの取締役会は、2024年から2025年末までの間に実施される人員削減を承認したと、同誌は同グループの主要幹部らの話を引用して伝えた。しかし、この計画にはまだ労働評議会の承認が必要であり、労働評議会は2025年半ばまで労働者の雇用を保証している、とロイターは報じている。
人員削減には資本関係の整理も含まれるようだ。Manager Magazinの報道によると、カリアドは持株会社に連なる約40の関連会社のネットワークを構築しているが、ボッシュは持ち株の半分を売却し、組織を再編成したいと考えている。
リストラ計画の大本にはソフトウェア開発がうまくいっていないことがあるようだ。アウディのSUV『Q6 e-tron』とコンパクトSUVの『ポルシェマカン』の電気自動車(EV)モデルの市場投入が、ソフトウェア開発の遅れによりすでに数回延期された後、さらに16~18週間の遅れが生じている。同誌は2024年まで遅れる可能性を示唆。2つのモデルとも旧型のソフトウェアを搭載することになりそうだ。
自動車OSから様々なアプリケーションを含む次期スケーラブル・システムズ・プラットフォーム(SSP)アーキテクチャは、当初は2025年リリース予定だったが、再設計される見通しという。おそらく修復が高くつく欠陥があり、ゼロからやり直す必要があるということだ。
フォルクスワーゲンは、2020年にカリアドを設立し、車載ソフトウェアの内製化を進めた。しかし、異なるワークカルチャーの融合や、安全基準のクリア、複雑な要件の理解など、さまざまな課題に直面し、開発が遅延。2022年には、ディースの解雇や、ポルシェマカンの開発遅延など、大きな損害を被った。
トヨタのウーブンも再編成
トヨタでも似たようなことが起きているようだ。トヨタは、2021年にウーブン・バイ・トヨタ(WbyT)という社内スタートアップを設立した。WbyTは、富士山の近くに未来都市を建設し、自律走行車やロボット、水素駆動モビリティをテストするといった野心的なプロジェクトを持っていた。当時トヨタのCEOだった豊田章男は、このベンチャー企業に個人的に5%出資し、3,400万ドルを投資した。
しかし、最近、豊田章男現会長がWbyTの全株式を手放し、WbyTがトヨタの100%子会社となること、WbyTを率いてきたジェームス・カフナーCEOが退任し、デンソー出身の隈部肇が新CEOに就任したことが発表された。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先週、ウーブンではソフトウェアのリリースが遅れ、都市構想はまだ始動しておらず、カフナーのマネジメントの下で集められたエンジニアの離脱が起きていると報じた。
スタートアップとトヨタ本体でソフトウェアに対する考え方がしばしば一致しなかったとされ、これが子飼のデンソー出身者の配置と子会社化につながったのかもしれない。トヨタはWbyTをデンソーのようなサプライヤーとして定義づけ、同社の巨大なサプライチェーンに組み入れようとしたが、自動車部品とソフトウェアの違いは思いの外大きかったのかもしれない。
WSJによると、不手際や納期のずれがあり、ソフトウェアの完全な展開は2027年までずれ込んだとされ、トヨタは是正措置を講じ、WbyTにベテランの自動車会社幹部を増員したという。
しかし、増員された幹部はソフトウェアの専門知識を持たないため、状況を改善できるのか疑問符がつく。WSJの記事では、トヨタが自動車業界で世界一になるために練り上げた一切のミスを許さない社風が、ソフトウェアエンジニアの「髪の毛を抜けさせた」と記されている(現場の人たちがそうジョークを言い合っていたのかもしれない)。トヨタは、整然としたスケジュールと厳格な予算管理を重視する文化を有している。これは、ソフトウェア業界の新興企業のあり方とは対照的である。新興企業は、迅速なイノベーションと柔軟な対応を重視する。
これはトヨタとVWだけの問題ではない。ゼネラルモーターズ(GM)やホンダ、フォードなどの他の自動車メーカーも、同様の課題に直面している。
一方、テスラは、広範なソフトウェア制御を自動車に組み込むことに成功し、中国のEV勢は、NVIDIAのような半導体/ソフトウェア企業との協業を受け入れている。