トヨタ出資の小馬智行が中国自律走行車競争の「決勝戦」に残る

中国のロボタクシーは主要都市で運行範囲を広げている。専用レーンの建設や特定のユースケースへの注力など、「実用の中国」の評判を裏切らない。なかでもトヨタが出資する小馬智行は、百度とともに最も有望な自律走行ソフトウェア企業となっている。

トヨタ出資の小馬智行が中国自律走行車競争の「決勝戦」に残る
トヨタ出資のPony.ai(小馬智行)のロボタクシー車両。出典:小馬智行

中国のロボタクシーは主要都市で運行範囲を広げている。専用レーンの建設や特定のユースケースへの注力など、「実用の中国」の評判を裏切らない。なかでもトヨタが出資する小馬智行は、百度とともに最も有望な自律走行ソフトウェア企業となっている。


中国は10月はじめ、2025年までにスマートカーの標準を作るために、関連する企業が技術を進化させるグループを作るのを支援すると明らかにした。ロイターが引用した同通信の報道では、中国は、自律走行における技術的なブレークスルーを達成するために、互いの長所から学ぶことを可能にする「イノベーション・コンソーシアム」を形成する企業を支援するという。

政府が音頭を取る形の民間企業間の連携はすでに始まっている。華為(ファーウェイ)、百度(バイドゥ)の自動運転部門、阿里巴巴(アリババ)の地図サービスの3社は最近、中国の高速道路における自律走行の技術基準を策定するために協力した。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が引用した交通運輸部が発表したガイドラインによると、これらの大手テクノロジー大手は同省や関連企業と連携して、技術的側面の詳細化に尽力してきた。特に、中国は、自律走行に対応するための高速道路の改修に1兆6,000億元(約33兆円)を投資し、2021年から7.3%増を記録したことを考えると、彼らの関与は将来有利に働くと見られている。

政府や大都市で許認可取得状況をみると、中国政府が自律走行車のエースと見ているのは、百度とトヨタが出資する自律走行ソフトウェア新興企業のPony.ai(小馬智行)のようだ。

  • 北京市郊外の亦荘区は、9月中旬、百度と小馬智行を中心とするロボタクシー事業者に対し、人間の乗務員なしで完全自律走行するタクシーの運賃を請求することを正式に許可した。これまでは、人間のスタッフが同乗することが義務付けられていた。
  • 小馬智行は9月中旬、「北京大興国際空港-北京経済技術開発区」間のシャトル・ロボタクシーのテストを開始した。北京経済技術開発区内の600以上の駅と大興空港ターミナル間で、自動運転車に安全担当者を乗せて走行テストを実施し、走行距離が蓄積されるにつれて徐々に後続段階への基準値の参入要件を満たし、最終的には乗客に空港への往復という全く新しい移動手段を提供する計画という。
  • 小馬智行は9月下旬、深圳市から許認可を取得し、深圳の中心部でL4レベルの無人のロボタクシーを開始した。これは、小馬智行が北京、広州などの一線都市で既に無人自動運転配車サービスを展開しているが、そこにテックハブの深圳市を加えたことになる。小馬智行の自動運転走行距離は累計2,500万kmに達し、そのうち全車無人走行距離は25万kmに達しているという。

高速道路における専用レーンの設置や、空港と市街地を結ぶ試みも進んでいる。深圳市は、市内の高速道路の特定部分を自律走行車のテスト専用に指定する準備を進めている。合計89kmに及ぶ4つの高速道路の一部を評価した後、地元当局は年内に同市初の自動運転車用の正式なナンバープレートと、商用ロボットタクシーサービスの最初の許可を与える予定だという。

百度は8月、武漢天河国際空港と武漢市街をつなぐロボタクシー運行を開始した。このサービスは、一部のユーザーにのみ提供されているが、2023年9月までに一般にも開放される予定だ(*1)。武漢天河国際空港は、旅客数が多いことで知られる長江中流の主要ハブ空港である。

中国の最新技術の採用は早い?

9月20日から24日まで北京で開催された、自動車のインテリジェント化をめぐる「2023世界智能网联汽车大会」(WICVC)で、工業・情報化部(MIIT)辛国斌副部長によると、2022年、中国では運転支援システムとインテリジェントなコネクテッド・ビークル技術を搭載した新型乗用車が約700万台販売され、市場普及率は34.9%を達成した。工業情報化省によると、今年上半期の市場普及率は42.4%にさらに上昇したという。

今春の上海オートショーでは、中国がソフトウェア定義自動車(SDV)において世界を走っていることを印象付けた。中国勢は、大きなレベニューシェアを要求しかねないNVIDIAの自律走行システム・オン・チップ(SoC)とソフトウェアのパッケージを躊躇なく採用している。これは欧米日の企業とは真逆の態度である。

中国EV産業、自動運転の実現に向けてNVIDIAチップを選択
急速な展開を見せる中国のEV業界は、自動運転やその他のソフトウェア要求を満たす手段として、NVIDIAの半導体および技術スタックを選択している。その結果が上海の展示会にて鮮明に示され、クルマの世界がどれほど劇的に進化しているかが明確に示された。
ソフトウェア定義自動車は電動化の夢を見る
ソフトウェア定義自動車(Software-Defined Vehicle)とは、自動車がハードウェア中心の製品からソフトウェア中心の電子機器へと変化しつつある中で、主にソフトウェアによって機能が実現された自動車のことを指す言葉だ。

小馬智行の幹部で北京研究開発センターの責任者であるNing Zhangは、北京でのロボタクシーの商業運行範囲拡大に際して「私たちは非常に高い自信を持っています......おそらく3年後には、私たちの完全なドライバーレス車両が北京の街全体を走るようになるでしょう」と語った。

脚注

*1:百度の「Apollo Go」は今年6月30日までに、330万回以上のサービスを提供した。

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