ホンダ、日本のロボタクシー戦線に先鞭をつける

ホンダが東京で開始するロボタクシー事業は、米中で進行する変化から隔絶されていた日本を、その競争における重要な地域へと再定義する可能性がある。高齢化する日本にとって、運転手を必要としない自律的なクルマはありがたい存在だ。

ホンダ、日本のロボタクシー戦線に先鞭をつける
共同開発した自律走行専用車両「クルーズ・オリジン」。出典:クルーズ、ゼネラルモーターズ(GM)、ホンダ

ホンダが東京で開始するロボタクシー事業は、米中で進行する変化から隔絶されていた日本を、その競争における重要な地域へと再定義する可能性がある。高齢化する日本にとって、運転手を必要としない自律的なクルマはありがたい存在だ。


米自律走行ソフトウェア企業クルーズ、ゼネラルモーターズ(GM)、ホンダは、2026年初頭に日本で自動運転タクシーサービス(ロボタクシー)を開始するための合弁会社設立に向けて基本合意書を締結し、2024年前半の設立を目指すと発表した。

日本での自動運転タクシーサービスを2026年初頭に開始予定
本田技研工業の広報発表ニュース - GM クルーズホールディングスLLC、ゼネラルモーターズと本田技研工業株式会社は、日本での自動運転タクシーサービスを2026年初頭に開始するために、サービス提供を担う合弁会社の設立に向けた基本合意書を締結しました。

ホンダ、GM、クルーズの3社は、2024年前半に日本に合弁会社を設立する。新会社は、ホンダが過半を出資し、クルーズにはホンダも出資する。新会社設立に先立ち、ホンダとGMは、2018年から自律走行技術の共同開発を進めており、米国ではテスト走行を実施済み。また、栃木県でも試験車両を使い、走行実証を進めてきた。

提供するロボタクシーサービスは、共同開発した「クルーズ・オリジン」という自律走行専用車両を使用し、配車から決済までのプロセスがスマートフォンアプリで完結する。このサービスは2026年初頭に東京都心で開始し、最初は数十台から始めて500台の運用を目指す予定であり、その後、台数とサービスエリアの拡大を計画している。

9月にクルーズCEOのカイル・ヴォーグが語ったところによると、同社は、米国におけるクルーズ・オリジンの量産認可まで数日であることを明らかにした。この車両は、特に従来の制御装置を欠いているため、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)の規制プロセスが長期化していた。

5月、経済産業省と国土交通省が共同で進めてきた「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」において、福井県永平寺町で実施された実証実験で、道路交通法に基づく自動運転車によるレベル4(遠隔監視のみ)での運行が国内で初めて許可されていた。プロジェクトは産業技術総合研究所とソリトンシステムズ、三菱電機、ヤマハ発動機とで組織されたコンソーシアムに委託されていた。

国内初!自動運転車によるレベル4での運行許可を取得しました (METI/経済産業省)
2021年度よりRoAD to the L4プロジェクトにて自動運転移動サービスの実現に向けた実証実験を実施してきましたが、福井県永平寺町で実施する実証実験において、令和5年5月11日、道路交通法に基づく特定自動運行の許可を国内で初めて取得しました。

トヨタはどう出るだろうか。トヨタは自律走行関連でいくつかの投資を行ったが、出資する中国自律走行ソフトウェア企業の小馬智行が、百度とともに最も有望な自律走行ソフトウェア企業の地位を得ている。

トヨタ出資の小馬智行が中国自律走行車競争の「決勝戦」に残る
中国のロボタクシーは主要都市で運行範囲を広げている。専用レーンの建設や特定のユースケースへの注力など、「実用の中国」の評判を裏切らない。なかでもトヨタが出資する小馬智行は、百度とともに最も有望な自律走行ソフトウェア企業となっている。

どう利益分配するか問題

ロボタクシーは自動車会社に新たなビジネスモデルの選択肢を与える。想定通りにロボタクシーが稼働する場合、労働力の投入がタクシーの運営と比べて著しく少ないため、極めて高収益型のビジネスになる可能性を秘める。

この潤沢な利益を自律走行ソフトウェア企業と自動車会社の間で分けることになる。GM、ホンダ、クルーズの場合、提携の中でこれらが行われるため、円滑に行われることが想定される。しかし、アルファベット傘下のウェイモと自動車会社との間の交渉はより難易度の高いものになるであろう。ウェイモは一部で中国の吉利自動車のEVブランドの車両を採用している。海外企業のほうが利害関係の衝突がさけられるのではないだろうか。また、ロボタクシーのコンピュータとソフトウェアのほとんどをNVIDIAに依存するケースも出てくるだろうが、この場合、NVIDIAに深く依存したロボタクシー事業者が、どのように利益を分配するのかは注目の的になるだろう。

米国では産みの苦しみ

日本の2026年という保守的な運用開始に比べ、米国と中国は24年の現段階でロボタクシーの適用地域が拡大している。ただ、クルーズは適用地域の拡大に伴い、さまざまな反対に遭うという「産みの苦しみ」に直面している。

同社が最初にサービスを開始したサンフランシスコでの事業に対する批判が高まっている。米規制当局は18日、クルーズがサンフランシスコで歩行者を巻き込む事故が複数発生したことを受け、クルーズに対する調査を開始したと発表した。

10月2日に発生した直近の事故では、女性が人間が運転する車両にはねられ、クルーズの車両がそれを避けきれず、車両が女性の体の上で止まるという奇妙な状況が生まれた。米メディアTechCrunchがビデオを閲覧したところによると、人間が運転する車両が先に歩行者に衝突し、女性はボンネットを飛び越えて反対車線に飛び出し、クルーズ車両が急ブレーキをかけた後、彼女を轢いたという。この説明においては、クルーズに否はないように思われる。

クルーズのほうが対抗馬のウェイモに比べ、事故の数が多い。いくつかの死亡事故との関連性について当局の大規模の調査を受ける、テスラのFull Self-Drivingのようにとまではいかないまでも規制当局の調査や評判が、競争力を弱める可能性もある。

ウェイモが米ロボタクシー市場をリードか?
米国のロボタクシー市場をリードしているのは、ウェイモのようだ。ライバルのクルーズは事故が多発しており、品質の差が露見しているだろう。だが、事故は、懐疑派の反発を引き起こしており、社会実装の黎明期は続いている。

テスラは17日、 Full Self-Drivingの動画を公開しており、一時はたち消えになったロボタクシーへの意欲を復活させる可能性もある。以下はライブストリームを米メディアCNETが編集したもの。

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OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

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OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

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アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史