インドの先進的なデジタル決済が国際送金をディスラプトする

インドのデジタル決済のバックボーンを構築した公的機関が国際送金に参入する見込みだ。恐ろしくローテクなクロスボーダー取引システムに対して、新たなハイテクなライバルが登場しようとしている。

インドの先進的なデジタル決済が国際送金をディスラプトする
2021年9月28日(火)、インドのベンガルールの食料品店に設置されたデジタル決済システム「PhonePe」のQRコード。PhonePeはUPI基盤を利用している。Samyukta Lakshmi/Bloomberg

インドのデジタル決済のバックボーンを構築した公的機関が国際送金に参入する見込みだ。恐ろしくローテクなクロスボーダー取引システムに対して、新たなハイテクなライバルが登場しようとしている。

インド決済公社(NPCI)の国際決済部門のCEOであるRitesh ShuklaのCEOであるRitesh Shuklaは同国の3200万人の海外居住者が自国に送金できるようクロスボーダー決済の分野に参入する計画を明らかにした。

現在、国境を越えた送金の決済は、主に国際銀行間通信協会(SWIFT)によって実行されている。SWIFTでは、両国に拠点を持つ銀行や中継金融機関を通過し、現地の為替価値に換算されるが、ユーザーは送金に対して最大10%の手数料を支払わなければならない。そのため、利用者は国境を越えて送金する際に最大10%の手数料を支払わなければならない。この手続きは、時間がかかるだけでなく、費用もかかる。Shuklaの推計では国境を越えて200ドルを送金するのに平均13ドルかかるという。

NCPIの海外進出が成功すれば、ベルギーに本拠を置く国際決済システム運営会社SWIFTに代わる国産の決済手段をインドにもたらすことになるが、Shuklaは既存のプラットフォームを置き換えることが目的ではないことを強調した。基本的には在外インド人を対象にしたサービスになるようだ。

UPIの運営団体であるNPCIは、シンガポールを拠点とするPayNowと同様の提携を結んでいる。各国との取り組みは様々な段階にあるが、UPIとPayNowの相互連携はすでに正式に発表されている。2022年後半に運用開始される予定であるとインド準備銀行(RBI)とシンガポール金融管理局(MAS)は述べている。

「連携により、シンガポールとインド間で、銀行口座から別の銀行口座への即時かつ低コストの資金移動が可能になる。インドからシンガポールへは携帯電話番号で、シンガポールからインドへはUPIバーチャルペイメントアドレス(VPA)で送金が可能となる」とMASは説明している。

RBIが5月下旬に発表した年次リポートによると、RBIは国境を越えた支払いの手配を強化するために、UPIを他の管轄区域、特にG20諸国の同様のシステムと連携させる可能性を検討したと述べている。同行は、決済・市場インフラ委員会(CPMI)および金融安定理事会(FSB)とのUPIおよびクロスボーダー送金の基礎とロードマップに関する議論に参加しているという。UPIが海外と連携することで、国同士の貿易、旅行、送金の流れがさらに固定化され、国境を越えた送金のコストが下がると、RBIは報告書で述べている。

NPCIは国内世界で最も成功した公的な決済プラットフォームUPIを提供している。インド最大のeコマース企業フリップカートの子会社PhonePeのほか、Google PayやWhatsAppなど、約330の銀行と25のアプリがNCPIの統一決済インターフェースを共有しており、インドの即時デジタル取引が3兆ドル規模に到達している。

UPI インド政府主導のデジタル決済共通基盤
UPI は、政府主導の多くのデジタル決済製品が相互運用可能なリアルタイム・モバイル・ペイメントを提供するためのソリューション。決済サービスプロバイダーがインド決済公社のサービス群を使用するためのインターフェイスであり、背後のシステムが銀行口座間取引を即時的に実行する。

また、アジアには他の国際送金プロジェクトが存在する。復数の中銀デジタル通貨の交換を迅速化する2つのプロジェクトがある。豪州、マレーシア、シンガポール、南アフリカの中央銀行は「プロジェクト・ダンバー」と呼ばれる中央銀行デジタル通貨(CBDC)のクロスボーダー決済システムを構築するという新たな試み開始した。一方、中国、香港、アラブ首長国連邦、タイの中央銀行が、異なる技術を使って同じ目的のmCBDCブリッジに着手している。

中銀デジタル通貨、相互運用性が次の焦点
復数の中銀デジタル通貨の交換を迅速化する2つのプロジェクトがアジアで進行している。クロスボーダー決済において支配的な不要な中間業者やドル覇権を迂回する試みで、成功すれば新興国にとって利が大きい。

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