アリババが拼多多のマーチャントに反競争的行為か 法改正で規制強化へ

阿里巴巴はマーチャントに対し、拼多多における営業を終了しない販売者は、Tmallストアで顧客との接点を失うよう仕向けた、として独占禁止法に違反したとする訴えが起こされています。

アリババが拼多多のマーチャントに反競争的行為か  法改正で規制強化へ

グループ購買プラットフォームである拼多多(Pinduoduo)は、大幅な割引、ゲーム、グループ購入等のソーシャルプラットフォームを利用したプロモーションを通じて、中国の阿里巴巴(アリババ)の年間顧客ベース合計6億9,300万の4分の3である5億3,600万人を急速に構築しています。拼多多は阿里巴巴の主要な競争相手となり、3億3,400万人の顧客を抱えるJD.comに取って代わりました。

多くのマーチャントは両方のプラットフォームで販売していますが、Caixinによると、阿里巴巴はマーチャントに対し、どちらかを選択するよう要求しました。拼多多における営業を終了しない販売者は、Tmallストアで顧客との接点を失うのです。

この阿里巴巴の措置に対して、支配的な市場での地位を濫用し、中国の独占禁止法に違反したとする訴えが2件起こされています。それらの1つは、世界最大の電子レンジメーカーであるGalanz Groupによる提訴です。阿里巴巴の圧力に対し公に発言するには、勇敢さと確固たる経営基盤が条件となります。同社は、広東省の工場で1日あたり10万台を超える電子レンジを生産し、2万人の従業員を雇用しています。同社と阿里巴巴との問題は、社長のLiang Zhaoxianが拼多多の本社を訪問し、協力協定に署名したときから始まりました。

阿里巴巴のアルゴリズムは、買い物客のトラフィックをすぐに同社のTmallストアから逸らすようになり始めた、と同社は主張しています。Galanzは昨年6月、アリババを非難する声明を発表し始めました。販売数上位の電子レンジ8モデルがTmallの検索結果から消えた様子を示す動画を公開したのです。

このように阿里巴巴はその気になればマーチャントのビジネスを脅かすことができます。阿里巴巴がマーチャントに提供しているデータによると、6月の公式TmallストアでのGalanzの売り上げは前年に比べて半分まで激減し、オンライン店頭訪問は37%減少しました。独身の日のセールが開催される11月には、Galanzの売上は前年比で69%減少しました。

それにもかかわらず、エアコンの巨人であるMideaは、拼多多との関係を断ち切ることを選択し、それ以来、阿里巴巴のTモールでの販売が増え続けています。

Financial Timesによると、ハイテクに特化したシンクタンク・ハイタンの最高経営責任者であるLi Chengdongは「彼らは間違いなく阿里巴巴から圧力を受けていました。拼多多のような販売チャネルほど阿里巴巴を怒らせる理由はありません」と、語りました。「排他的なビジネス慣行は、中国の電子商取引業界の公然の秘密です」。Mideaのスポークスマンは、アリババからの圧力を受けていたことを否定したといいます。5年前、阿里巴巴は同じ作戦を活用してJD.comでの衣料品ブランドの販売を阻止しました、とLi氏は言いました。このため 「JDの衣料品ビジネスは発展を阻害されたのです」と彼は言います。

JD.comは2017年、マーチャントに対し自社以外での取引を止めるよう圧力をかけ、支配的立場を悪用したとして、阿里巴巴に対して訴訟を起こしました。拼多多とVipshopは、後に訴訟に加わりました。3社すべてが阿里巴巴の最大のライバルであるTencentから投資を受けています。しかし、阿里巴巴の弁護士が2年を費やした末に訴訟の管轄権を北京から故郷の杭州に移すべきだと主張したため、この訴訟は引き伸ばされ続け、昨年7月に提訴が取り下げられたのです。

昨年、マーチャントが依存するプラットフォームの強制力を抑制することを一部規定する新しい電子商取引法が施行されましたが、その効力は依然として不明です。

上述のFinancial Timesによると、法の起草者の1人である北京大学のXue Jun教授は、同法は効果的な規制にはいたらないと指摘しています。「オフラインにいてこれらのタイプの排他的契約は非常に一般的ですが、現在はインターネット上のプラットフォーム時代になっています。(法はプラットフォームという媒介的な存在をうまく規定できていない、の意)」とJun教授は述べました。

これまでのところ、同法のもとでは、食品配達プラットフォームの美団点評(Meituan Dianping)とEle.meのローカルパートナーに対し、レストランに2つのアプリのどちらかを選択させていたとして、罰金を科した事例に留まっています。

しかし、11月に、市場の規制当局は、eコマースに焦点を合わせていることを明らかにしました。阿里巴巴等と他の主要なプラットフォームとの会議で、市場規制局のLiang Aifuインターネット部門長は出席者に、規制当局が調査を開始すると述べ、「インターネット分野で2つのうちの1つを選択し、強制的に独占することは明示的に禁止されています」と述べました。

これを受けて、昨月、規制当局は、過去10年間に発展した大規模なインターネット企業の経営を改善するのに役立つ反トラスト法の改正を提案しています。

改正案草案では、ビジネスがWeb全体に及ぼす影響、規模の経済、製品またはサービスの「ロックイン」効果、データの処理および処理能力などを考慮しています。この提案は、中国のインターネットセクターのブーム前に、2008年に施行された現行法からの劇的な変化を示しています。投資ファンドBond CapitalによるInternet Trends 2019のレポートによると、2018年現在、世界のインターネット時価総額上位30社のなかに、中国企業は阿里巴巴、騰訊、美団人評を含む7社が入っています。

改正案はまた、法律違反者の潜在的な財政的罰金を最大で100倍に増やします。法律はまた、政府が「行政慣行の標準化を確保し、競争を排除または妨げる政策と措置を防ぐ」ために検査措置を設定し、実施することを義務付けています。

中国当局は最近、特にフィンテックにおける中国のインターネット大手の覇権を牽制するために動いています。中国人民銀行は2018年6月、第三者決済機関と銀行の精算を統一クリアリングハウスの下で一括管理するようにし、準備金の運用に対し監視を強めました。2019年9月、中国人民銀行は、中国のデジタルトランザクションの主な手段であるクイックレスポンスコード(QRコード)を介して支払いの相互運用性を標準化および促進する計画を発表しました。目標は、独占権を削減し、小規模プレイヤーがアリババのアリペイとテンセントのWeChat Payが支配的な分野に参加できるようにすることです。これらは「UPI(統一支払いインターフェース)」というインドの電子決済の枠組みや、インドやインドネシアで施行されたインターフェース標準化を追随している可能性があります。

2019年12月には、中央銀行は米国の決済大手PayPal Holdings Inc.による中国のオンライン決済プロバイダーの買収も承認し、デジタル決済の3番目の大きなライバルとなりました。

Photo by Alibaba News Room.

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米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国人は自動車が大好きだ。バッテリーで走らない限りは。ピュー・リサーチ・センターが7月に発表した世論調査によると、電気自動車(EV)の購入を検討する米国人は5分の2以下だった。充電網が絶えず拡大し、選べるEVの車種がますます増えているにもかかわらず、このシェアは前年をわずかに下回っている。 この言葉は、相対的な無策に裏打ちされている。2023年第3四半期には、バッテリー電気自動車(BEV)は全自動車販売台数の8%を占めていた。今年これまでに米国で販売されたEV(ハイブリッド車を除く)は100万台に満たず、自動車大国でない欧州の半分強である(図表参照)。中国のドライバーはその4倍近くを購入している。

By エコノミスト(英国)
労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

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2010年代半ばは労働者にとって最悪の時代だったという点では、ほぼ誰もが同意している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学者であるデイヴィッド・グレーバーは、「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)」という言葉を作り、無目的な仕事が蔓延していると主張した。2007年から2009年にかけての世界金融危機からの回復には時間がかかり、豊かな国々で構成されるOECDクラブでは、労働人口の約7%が完全に仕事を失っていた。賃金の伸びは弱く、所得格差はとどまるところを知らない。 状況はどう変わったか。富裕国の世界では今、労働者は黄金時代を迎えている。社会が高齢化するにつれて、労働はより希少になり、より良い報酬が得られるようになっている。政府は大きな支出を行い、経済を活性化させ、賃上げ要求を後押ししている。一方、人工知能(AI)は労働者、特に熟練度の低い労働者の生産性を向上させており、これも賃金上昇につながる可能性がある。例えば、労働力が不足しているところでは、先端技術の利用は賃金を上昇させる可能性が高い。その結果、労働市場の仕組みが一変する。 その理由を理解するために、暗

By エコノミスト(英国)
中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

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脳腫瘍で余命いくばくもないトゥー・チャンワンは、最後の言葉を残した。その中国の気象学者は、気候が温暖化していることに気づいていた。1961年、彼は共産党の機関紙『人民日報』で、人類の生命を維持するための条件が変化する可能性があると警告した。 しかし彼は、温暖化は太陽活動のサイクルの一部であり、いつかは逆転するだろうと考えていた。トゥーは、化石燃料の燃焼が大気中に炭素を排出し、気候変動を引き起こしているとは考えなかった。彼の論文の数ページ前の『人民日報』のその号には、ニヤリと笑う炭鉱労働者の写真が掲載されていた。中国は欧米に経済的に追いつくため、工業化を急いでいた。 今日、中国は工業大国であり、世界の製造業の4分の1以上を擁する。しかし、その進歩の代償として排出量が増加している。過去30年間、中国はどの国よりも多くの二酸化炭素を大気中に排出してきた(図表1参照)。調査会社のロディウム・グループによれば、中国は毎年世界の温室効果ガスの4分の1以上を排出している。これは、2位の米国の約2倍である(ただし、一人当たりで見ると米国の方がまだひどい)。

By エコノミスト(英国)