Apple、新たな収益の柱のサービス部門で組織再編が進む

iPhoneに依存するAppleは、iPhoneビジネスの成長が頭打ちになったことで、サービス部門に注力してきた。広告やストリーミングのような「非伝統的なカテゴリ」の成長につられて、同部門の再編成が進んでいるようだ。

Apple、新たな収益の柱のサービス部門で組織再編が進む
Photo by Bangyu Wang 

iPhoneに依存するAppleは、iPhoneビジネスの成長が頭打ちになったことで、サービス部門に注力してきた。広告やストリーミングのような「非伝統的なカテゴリ」の成長につられて、同部門の再編成が進んでいるようだ。


AppleのApple TV+、iCloud、Apple One、Apple News+のビジネス面を統括する幹部が同社を去るとブルームバーグが9日、関係者の談話を引用して伝えた

Appleのサービス部門である「Apple Services」担当バイスプレジデントを務めたPeter Sternは、Appleのサービス担当シニアバイスプレジデントであるEddy Cueの後継者候補として注目されていたが、彼の退任を受けて、AppleはSternの責任をOliver SchusserやRobert Kondrkなど複数の幹部で分担していると報道は伝えている。

Sternは、SternはAppleに6年間在籍し、Arcade、Books、Apple One、News+、Fitness+、iCloud+などのサブスクリプション製品の構築に貢献した。それ以前は、Time Warner Cableの役員を務めていた。 CueとSternの下で、Appleのサービス事業は最も重要な部門の1つとなった。

Appleは収益の大半を、紙幣印刷機のような驚異的なビジネスであるiPhoneに依存する。iPhoneは調査会社のCounterpoint Researchのリサーチによると、同社は今年最初の9カ月間で世界全体のスマートフォンのわずか14%を出荷したが、全収入の43%、全利益の82%を占め、2015年以来最高の利益シェアを達成している。

しかし、数年前からiPhoneビジネスの成長が目に見えて鈍化したことを受けて、Appleはサービス部門にフロンティアを見出している。

Appleのサービス部門の収益は成長し続けてきたが、最近は伸び悩んでいる。9月に終了した2022年度第4四半期に199億ドルを生み出したが、これは前年同期からのわずか5%増であり、21年Q4には前年同期比26%増であった(Appleは22年Q4の「為替を含むマクロ経済の逆風の影響」と説明している)。Apple Servicesは9月末までに、9億件の有料会員を持ち、過去1年間で1億5,500万件以上増加し、3年前の水準から倍増した。

Appleは最近、Apple MusicとApple TV+、Apple Oneの値上げを発表した。Apple Musicについては、ライセンス料の増加を反映し、Apple TV+ではオリジナル作品の増加と動画取得費用の上昇が影響したとされる。競合他社との比較では、Spotifyの個人向けプレミアムプランは月額10ドルで、Apple Musicより1ドル安い。Apple TV Plusが7ドルに値上げされても、定額制ビデオサービスの中ではまだ安い部類に入る。例えばNetflixの最も人気のあるプランは15.50ドルで、Disney Plusは12月から広告付き会員が月8ドル、広告なし会員が月11ドルだ。

今後より収益の柱になることを期待してだろうか、サービス部門では組織の再編成が行われているようだ。Insiderが5月に報道したところでは、Cueは、経営体制を再編し、ストリーミングや広告などの分野をより強化することで、成長を引き出す方法を考えていると関係者に語っていたという。同社は、総製作費2,500万ドルの映画「CODA」でアカデミー賞作品賞を獲得し、MLB、NFL、NBA中継のストリーミングを開始するというように、スマートフォンやその他のデバイスで掴んだ顧客をサービスの中に囲い込むために提供価値の拡大に努めている。

サービス部門の中でいくつかのカテゴリは輝き続けており、特に広告部門は成長著しい。AppleはAppStoreの規約変更によってサードパーティの広告業者を締め付ける一方で、自社の広告プラットフォームを急激に増築し、その事業規模を拡大している。App Storeに加え、App News+や‎Stocksで広告を提供しているAppleは、最近、MLB中継でテレビのような広告枠を提供するようにもなった。広告主はAppleの動きを歓迎しており、サードパーティのアドテクノロジー(広告技術)企業には抗う手段が残されていない。

Appleの広告ビジネス、トラッキングの取り締まりで急成長中
Appleはサードパーティの広告業者を締め付ける一方で、自社の広告プラットフォームを急激に増築し、その事業規模を拡大している。広告主はAppleの動きを歓迎しており、中小企業には抗う手段が残されていない。

Appleは一度広告ビジネスから退場した経緯がある。Sternの統括範囲には広告が含まれていたが、Cueが10年以上にわたってアップルの広告ビジネスを担当してきたバイスプレジデントのTodd Teresiを広告事業の責任者に据えたと言われている。Teresiは以前、AppleのiAdモバイル広告ネットワークを率いていた。iAdは2010年に立ち上がったが、6年後にモバイル広告市場のシェアを獲得することに失敗し、閉鎖された。

調査会社Omdiaの主席アナリスト、Matthew Baileyの分析によると、Appleの最大の広告源である検索広告は、2020年に対して2021年には238%成長し37億ドルに達したという。Omdiaは、Appleの検索広告収入は2022年に55億ドルに達すると予測している。

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