TwitterがMoPubを10.5億ドルで売却した理由
iOSのアップデート以降、Twitterにとって外部のモバイル広告を扱う旨味が薄まった。Twitterの関心は、決済をプラットフォームに呼び込むビットコインやフィンテックに移っている。
要点
iOSのアップデート以降、Twitterにとって外部のモバイル広告を扱う旨味が薄まった。Twitterの関心は、決済をプラットフォームに呼び込むビットコインやフィンテックに移っている。
10月6日、モバイル広告大手AppLovinは、MoPubを現金10億5,000万ドルでTwitter社から買収する最終合意に達した。
最近上場したAppLovinは、モバイル広告技術の買収を積極的に行っており、ここ数年で6件以上の買収を行ってきた。
MoPub事業は、モバイルアプリ提供者のためのサードパーティの広告取引所として機能していたが、Twitterのビジネス全体の中ではうまく機能していなかった。
広告主から見ると、Twitter本体の広告に加え、取引所を経由して買えるサードパーティアプリの広告の選択肢が増えたため、便益が増したことになるが、Twitter広告の営業部門から見ると、自分たちの商品と競合する広告商品が、プラットフォーム内に据え付けられたため、社内には常に摩擦があった。
両者が相互作用によって売上を増やしていくような恩恵があればよかったが、実際にはTwitterの広告収益は長期に渡り停滞している。実際にはゼロサムゲームの状態に両者は置かれていた。
また、MoPubは、プライバシーに関する潜在的なリスクに見合うだけの十分な収益(昨年は1億8800万ドル)を上げていなかったことも売却の理由の一つと推察される。
昨年1月、オスロの非営利団体であるノルウェー消費者評議会は、OkCupidやGrindrなどの出会い系アプリと、MoPubなどの広告技術パートナー数社が、自分のデータがどのように使用されるかについてユーザーが情報を得た上で選択できるオプションを怠り、一般データ保護規則(GDPR)に違反していることを明らかにした。
電子フロンティア財団(EFF)は、この報告書を受けて、MoPubを「現代のアドテクノロジーを支えている、個人データの収集と共有の広大で複雑で不透明なエコシステム」の申し子と呼んだ。
また、Twitterはサードパーティの広告事業に対する意欲は失ったようでもある。
Twitterは、モバイルアプリ開発者にとってのMoPubの価値を高めるために、2020年5月にモバイル広告買付のCrossInstallを買収した。その後、CrossInstallをMoPubの広告取引所プラットフォームに統合し、MoPub Acquireと改称され、そのチームもMoPubの一部となった。MoPubの広告取引所では、四半期ごとに2兆1,000億件の広告リクエストがあり、56,000のモバイルアプリをサポートしているが、CrossInstallの統合後は、他のプラットフォームを経由せず、一気通貫型のプラットフォームとなった。
1年前、CrossInstallのクライアントのほとんどはゲーム会社だったが、Twitterに買収されて以来、この買付システムはゲーム以外のアプリ開発者にも手を広げていた。
しかし、AppleがiOS 14で広告IDからのオプトアウトの有無の選択をユーザーに委ねるように求めてからは、このモメンタムは沈んでしまった。一定数のオプトアウトが生じれば、ターゲティング広告の精度、効果測定に大きな誤差が生じてしまうためだ。その結果、広告在庫の価格が崩れてしまう。
FacebookはiOSのアップデートが発表された後、FBにおけるMoPubであるAudience Networkを縮小したと言われている。最近も、アップデートによりFB広告の効果測定が難しくなっていることが報告されている。