トヨタとSBG出資の自律走行車企業AuroraがSPAC上場

11月初旬、 Googleの自動運転車プロジェクトの元責任者が設立した新興企業「Aurora」が、ナスダック証券取引所で取引を開始した。過剰な期待、開発の遅れ、事業の閉鎖、技術的課題の数々に悩まされてきた自律走行車業界にとって、重要な試金石となっている。

トヨタとSBG出資の自律走行車企業AuroraがSPAC上場
Image via Aurora.

要点

11月初旬、 Googleの自動運転車プロジェクトの元責任者が設立した新興企業「Aurora」が、ナスダック証券取引所で取引を開始した。過剰な期待、開発の遅れ、事業の閉鎖、技術的課題の数々に悩まされてきた自律走行車業界にとって、重要な試金石となっている。


昨年の夏、Auroraは、Reinvent Technology Partners Yという特別買収会社(SPAC)との逆合併により、株式を公開することを発表した。この取引の完了により、Auroraは18億ドルの「総収入と手元資金」を得て、トラック輸送や配車業界の企業に自律走行のハードウェアとソフトウェアを提供する企業になることを目指している。

同社の時価総額は122億ドルの範囲に入り、昨年末にUberの自動運転部門であるAdvanced Technologies Group(ATG)を買収した後の100億ドルの企業価値から上昇している。

昨年、EV企業のSPAC取引が相次いだが、SPACと合併して株式公開した自律走行車はAuroraが初めてだ。しかし、同じ自律走行車スタートアップのArgo AIがSPAC合併による株式公開に向けて交渉していると報じられており、おそらくこれが最後ではないだろう。

今回のSPAC上場は、Auroraとその創業者たちにとって、これは大きなリスクを伴う行動だ。同社によると、2027年までは赤字が予想されており、自動運転トラックや配車事業の大規模な立ち上げに向けた準備のため、今後数年間は最も大きな損失が発生するという。Auroraは、自ら車両を運用するのではなく、ハードウェアとソフトウェアのスタックを他社に販売したいと考えている。

Auroraは2027年に主にトラック事業での収益が確立すると予測している。出典:Aurora Invation
Auroraは「赤字の谷」を超えて、2027年に主にトラック事業での収益が確立すると予測している。出典:Aurora Invation

Auroraは、2023年に利用可能な自律走行トラック、2024年に利用可能な自律走行の乗用車という2つの製品を市場投入できると予測。いずれの製品も、サブスクリプションサービスを通じて顧客に提供されるという。

Auroraのトラック輸送サービスは「Aurora Horizon」と呼ばれ、トラック運送会社に自律走行ソフトウェア「Aurora Driver」を提供するという。配車サービスは「Aurora Connect」と呼ばれ、同社のAurora Driver技術を搭載した車両が配車ネットワークソフトウェアを統合することで、タクシーとして利用できるようになるという。

Auroraの顧客は、個人のトラック運転手や配車の利用者ではなく、物流企業や配車企業である。この点でAuroraは技術提供者と物流・配車運営の両方を目指す競合他社との差別化を図っている。「Aurora Horizon」または「Aurora Connect」のいずれかに加入すると、「Aurora Driver」「Aurora Beacon」と呼ばれるミッションコントロールシステム、「Aurora Shield」と呼ばれるロードサイドアシスタンスと延長サポートを利用できる。同社は、これらの技術スタックのもたらす便益によって顧客はサブスクリプションをやめなくなると想定している。

トラックからの市場参入に勝算がある?

乗用車の開発に携わった経験があるからこそ、創業者たちは大型トラックの開発に力を入れている。貨物輸送ルートは、都市部に比べて複雑な運転環境ではないことが多いが、それ以上に、高速道路が全米で似通っているため、この技術を大規模に展開することが容易になる可能性があるからだ。

一方、ロボタクシーは少しずつ前進を繰り返している。Waymoは、1年以上前にアリゾナ州の郊外で「ロボタクシー」を一般公開して歴史に名を残したが、より収益性の高い可能性のある他の市場への拡大には慎重な姿勢を見せている。

Auroraは、2023年後半に自律走行トラックを発売し、その1年後にはロボタクシーを発売したいと考えている。同社は、貨物輸送の経験を生かして、高速道路で自律走行車を走らせた後、より繊細な車両コントロールが必要な都心部に持ち込むことを想定している。最初からすべての交通手段に対応できる完全な自動運転のタクシーサービスを構築するのではなく、ロボタクシーを徐々に人間が運転する車両に統合していくことができるというメリットを強調している。

これは、GMが2030年までにロボットタクシー事業で500億ドルの収益を見込んでいることと比較すると、非常に控えめなものだ。

技術開発が先か、資金が尽きるのが先か?

技術の実用化に時間がかかればかかるほど、投資家が資金を提供しなければならなくなる。この分野の最大手であるWaymoとCruiseは、いずれも株式公開を検討したことがあると報じられてきたが、追加資金を得るためにプライベートの資金調達ラウンドに頼っている。FordとVolkswagenが支援するArgo AIもIPOを検討している。

Auroraは2020年全体で2億1,400万ドルの損失を出し(そのうち1億7,900万ドルは研究開発に費やされた)、その後もキャッシュバーン(資金燃焼)は加速するばかりで、2021年の第1四半期だけで1億8,900万ドルの損失を出している。そのうち1億5,900万ドルは研究開発に費やされた。

AuroraのSPAC上場時に投資家に開示した投資家向けスライドは64枚の内容だが、奇跡的に重要な情報は全て避けることに成功している。

Auroraには日本勢ではトヨタ、デンソー、ソフトバンクの資本が入っており、トヨタとデンソーとは業務提携もしている。Auroraは、UberとはATG買収の過程で自律走行技術を優先的に提供する契約を結んでいる。

「(大株主の)Uberのデータへのアクセスは競争上優位に働いている」とAuroraは主張している。出典:Aurora Invation

Auroraの沿革

Auroraは、WaymoとなったGoogleの自動運転車プロジェクトの最初のリーダーの一人であり、2000年代初頭から自律走行車開発の先駆者であるのChris Urmsonが共同設立した会社だ。

Urmsonはカーネギーメロン大学(CMU)でロボット工学の博士過程在籍中、2004年と2005年のDARPAグランドチャレンジと2007年のDARPAアーバンチャレンジに参加した彼のチームのロボット車両の開発において重要な役割を果たした。砂漠を横断して60マイルの模擬都市を自律的に走行することを競うDARPAアーバンチャレンジでは、歩行者がおらず、交通状態の複雑性が緩和された場所で、平均時速14マイルで走行したところ、CMUのUrmsonが率いるチームがトップに立った。

DARPAアーバンチャレンジで勝利した後、UrmsonはGoogleの自動運転車プロジェクトを率いるよう打診された。Urmsonは約8年間、Googleの自動運転車プロジェクトを率いた。彼のリーダーシップの下、Googleの車は180万マイルのテスト走行を蓄積。Urmsonは2016年にGoogleを退社した。

その後、Urmsonは、TeslaのAutopilot部門の責任者だったが、イーロン・マスクが「完全な自動運転が可能である」と宣伝したことに反発して辞任したと言われるSterling Andersonを誘った。さらにUrmsonは、Uberのautonomy and perception(自律性と知覚)チームの元リーダーである、Drew BagnellをCMUのロボット部門から引き抜いた。Bagnellは2007年のDARPAアーバンチャレンジでUrmsonと同じチームに所属していた旧知の仲である。この三人の共同創業でAuroraはスタートしている。

同社は、UrmsonとBagnellの古巣であるCMUのあるピッツバーグにオフィスを開設し、スタッフの約半分を置き、半分をカリフォルニア州パロアルトのオフィスに置いている。

Aurora Innovation 自律走行の先駆者が創業した100億ドル企業
Auroraは、DARPAアーバンチャレンジで画期的な成果を出し、WaymoとなったGoogleの自動運転車プロジェクトの最初のリーダーの一人であり、2000年代初頭から自律走行車開発の先駆者であるChris Urmsonが共同設立した会社だ。

Uber ATGの買収

Auroraは、Uberの自律走行車部門であるATGを40億ドルと報じられる額で買収した。買収の詳細な条件は非公開だが、TechCrunchによると、Uberは株式交換に加え、4億ドルをAuroraに投資してAuroraの株式26%を取得したとされる。

ATGは2019年、トヨタ、デンソー、ソフトバンクのビジョンファンドから10億ドルの投資を受けて72億5000万ドルの企業価値に達し、米証券取引委員会(SEC)への提出書類によると、UberはUber ATGに対して86.2%の株式(完全希薄化ベース)を保有していた。トヨタなどは13.8%を保有していた。この取引が完了すると、Uberとトヨタなどはオーロラで雇用を継続するATGの従業員とともに、完全希薄化ベースでオーロラの約40%の持分を保有することになると予想されていた。

UberのCEOであるDara KhosrowshahiがAuroraの取締役会に参加。AuroraはATGの買収により、ATGの従業員数は約600人から約1,200人に増加しすることになるといわれた。

ATGは、UberがCMUのNational Robotics Engineering Center(NREC)の3分の1のスタッフに当たる約50人を迎え入れたことで発足した。1997年からNRECに在籍したDavid StagerはUberのリードシステムエンジニアとなり、12年近くNRECに在籍していた上級商業化スペシャリストのJean-Sébastien Valois、1997年からNRECに在籍し4年半所長を務めたAnthony Stentzなど、多くのトップ職員が転職した。

しかし、ATGは茨の道を辿ることになった。Uberは、Googleのスターエンジニアの1人であるアンソニー・レヴァンドウスキーが他の3人のGoogleのベテランとともに設立したOttoと呼ばれる自動運転トラックのスタートアップを買収したが、これに対しWaymoは2017年2月、営業秘密の窃盗と特許侵害を理由にUberを相手取り訴訟を起こした。Waymoはこの訴訟で、レヴァンドウスキーが企業秘密を盗み、それがUberによって使用されたと主張した。

訴訟が終わった後、2018年にUberはアリゾナ州で自律走行車の試験中に死亡事故を引き起こし、業界全体が停滞した。以降、安全性に焦点を当てる方針に転換し、ATGはトヨタなどから集めた資金を含む25億ドルをプロジェクトに費やしたが、長期の停滞が伝えられていた。

トヨタ出資のUber自動運転部門が長期停滞、25億ドル浪費か
Uberの自動運転車を開発する試みは、内紛と挫折に悩まされており、これまで費やした25億ドルは浪費となった可能性があり、Alphabetが所有するWaymoやAppleの自動運転技術のようなライバルに置き去りにされると懸念されている。

Uber本体もスキャンダルの嵐に見舞われ、ATGを設置することを決めた経営陣は会社をすでに去っていた。開発部門の一部をインドに移転しようとするほど技術開発に興味のないノンテックCEOのDara Khosrowshahiは研究開発部門の切り離しを始めた。Auroraの共同創業者のうち2人はCMU出身者であることもあり、ATG従業員たちにとっては、Auroraへの移籍は好ましい転籍のように見える。

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