インドのスタートアップの裾野が消費者向けからB2B SaaSまで広がってきた AXION WEEKLY #6

インドではベンチャーキャピタルとプライベートエクイティによるテック企業への投資が増加。ユニコーンの多数派は消費者向けアプリ提供者だが、企業向けのSaaSにも裾野が広がってきた。

インドのスタートアップの裾野が消費者向けからB2B SaaSまで広がってきた AXION WEEKLY #6

先週はVC投資のトレンドが西に向かっていると話したが、インドではベンチャーキャピタルとプライベートエクイティによるテック企業への投資が増加。ユニコーンの多数派は消費者向けアプリ提供者だが、企業向けのSaaSにも裾野が広がってきた。

企業向け契約管理ソフトウェアプロバイダーIcertisは今週、米国のベンチャーキャピタル会社GreycroftとPremji Investがリードした投資ラウンドで、1億1,500万ドルの新たな資金を調達した後、SaaS企業として10億ドル以上の評価を受けた。インドのSaaSユニコーンとしてはFreshworks、Druvaに次ぐ三社目。

Icertisは米国で流行しているリーガルテックスタートアップだが、Google, Microsoft, Daimler, Airbus, Johnson & Johnson, Lupin, Infosysなどを顧客とし、570万件の契約を管理し、その契約書の金銭的価値は1兆ドル超であり、200万社を超える利用者をもつという。リーガルテックの活用が米国よりも堅調に進んでいる可能性すらありそうだ。

「インド版のSalesforce」のFreshworksは昨年セコイアとアクセルから一億ドルの投資を受け、すでに海外展開をしている。米国で成功したモデルをインドナイズすることでユニコーンができ、しかもそれが海外に展開する力があるという状況だ。

インドには現在Paytm、Ola、Byju、Oyo、Swiggyを含む19のユニコーンがあり、それらのほとんどは消費者向け企業であり、B2B SaaSのIcertisは少数派である。

東洋経済によるインキュベートファンドインディアの村上矢へのインタビューによると、村上はスタートアップ市場についてこう説明している。

インドにはエンジェル投資家(ベンチャー企業に投資する個人投資家)がものすごく多い。エンジェルラウンドでも1億円が集まる。しかし、シリーズA(シード段階の次の資金調達段階)になると、アメリカ系のVCが強い。(シリコンバレーに拠点を置くアメリカトップ級VCの)セコイアキャピタルやアクセル・パートナーズ、マトリクス・パートナーズなどが入ってくる。

Grant Thorntonの「The fourth Wheel 2019」によると、投資件数ベースの比較でアクセル・パートナーズとセコイアキャピタルが他を引き離している。両者はファンドサイズが一度の投資額も大きいとみられ、総投資額で優位に立っているようだ。地場の最大はブルーム・ベンチャーズだ。ブルーム・ベンチャーズの共同創業者であるサンジェイ・ナスは日経ビジネスの取材にこう答えている。

米国人は原則、こちらに足を運ぶことはありません。(VCの)セコイア、アクセルでも、インドのマネジャーを採用して「我々はインドに投資しており、インド市場を注目している」と言いながら、経営陣が飛行機に乗ってくることさえしていません。
一方で、中国人は、インドに来て、オペレーションすることを恐れていません。これは、その他の国と大きく異なっている点ですね。彼らは、中国で成功している業界に非常に興味を持っており、「中国で有効なやり方を模倣してインドで成功しそうな会社に投資する」というアプローチを取っています。

先週、2019年第2四半期のスタートアップ投資額が前年同期比77%減となり、中国モバイルインターネット市場の成熟から今後は中華資本が西に向かうという話をした。シンガポールに中華VCの行列ができているようだし、インドでも同様の傾向が出てくるはずである。先述のセコイアは中国での大きな成功を収め、いまは東南アジアとインドを重要視しているようだ。セコイアはインドと東南アジアのための最も新しい6億9,500万ドルのファンドをクローズした。これは12年前にインドに展開してから5番目のファンドだ。

彼らのポジションを物語る象徴的なアクセラレイタープログラムが「Surge」である。Surgeは「インドと東南アジア版のYcombinator」である。Googleの東南アジアとインドの支社で幹部を務めたRajan AnandanがSurgeを統括しているという。今年1月に開始した第一期には1570社の応募があり、1%程度の17社が採択されるという驚異的な競争率となった。これはシードステージからレイターまですべてを手がける準備があることの証拠だろう。

Alnoor Peermohamed,  "Icertis becomes India's third SaaS unicorn with $115M funding" , Economic Times

インド国民の半分程度は依然としてインターネット接続していない。これはとてつもない潜在性だ。今後もインドの状況は注視をしていきたい。

今週のピックアップニュースは以下のとおり。

🐯VISA、Go-Jekに出資、東南アジアでデジタル決済を推進

世界最大の決済ネットワークVisaは、インドネシア企業Go-Jekの進行中のシリーズF資金調達ラウンドの一環として、Go-Jekに非公開の金額を投資した、と両社は17日に発表した。 この動きは、タイのサイアム商業銀行、三菱自動車、三菱商事等からの資金に次ぐもの。この取引の条件は明らかにされていない。

Yoolim Lee,  "Visa Invests in Go-Jek to Push Digital Payments in Southeast Asia", Bloomberg

🐼FBのリブラ、政治の荒波にもまれる

フェイスブックが発行を計画している新しいデジタル通貨リブラは、アメリカでは普段ケンカばかりしているトランプ大統領と野党民主党が一致団結して行動できる数少ないテーマ。マーカス氏はリブラが法定通貨と競うつもりはなく、マネタリーポリシーに参入する意図はないと公聴会で釈明しているが、同社の「評判」がリブラの先行きに暗雲を投げかけているようだ。

飯田香織, 「【リブラその後】」,  飯田香織ブログ 担々麺とアジサイとちょっと経済

🦊マイクロソフト「チーム」 13Mのアクティブユーザーを達成、ライバルのスラックを抜く

木曜日に同社が発表したデータによると、Microsoftのチームコラボレーションアプリは現在、毎日1300万人の個人によって使用されており、ライバルのSlackを超えています。

MicrosoftはSlackの競合企業として2017年にTeamsを発表しました。Slackは2014年の公開以来、社内コミュニケーション用の電子メールに代わるものとして大きな関心を集めており、先月直接上場を遂げています。

Jared Spataro, Corporate Vice President for Microsoft 365 "Microsoft Teams reaches 13 million daily active users, introduces 4 new ways for teams to work better together" , Microsoft

🐧民主主義は必ずしも経済成長の条件ではないかもしれない

民主主義が経済成長の原因なのかを調べたAcemogluらの論文を紹介。

Acemogluらは民主主義国は一人当たりGDPが非民主主義国の約4倍である(2074ドル対8149ドル)ことを説明している。 しかし、この違いがどの程度民主主義によって説明されるのでしょうか?Acemogluらはほとんど説明されないと主張しています。民主主義のせいでその国が富裕国になるという因果関係ではなく、むしろ富裕な民主主義国は早い段階で資本主義を採用していたということのようだ。欧州や米国、日本でポピュリズムが台頭し、中国やシンガポールのような非民主主義国が台頭した現代に非常に考えるべきテーマである。

Alex Tabalok "Is democracy doomed?"

Acemoglu, Naidu, Restrepo, and Robinson, "Democracy Does Cause Growth"

🦁ネットフリックス株急落、米会員数が予想外の減少-失速の兆候

ネット動画配信サービス世界最大手、米ネットフリックスは17日、4-6月(第2四半期)に米会員数が減少し、米国外でも伸びが大幅に鈍化したと、予想外の結果を発表した。競争激化が見込まれる中、同社の勢いが失われつつある兆候が示された。

Lucas Shaw、「ネットフリックス株急落、米会員数が予想外の減少-失速の兆候」、Bloomberg

🐰スーパーアプリとは?WECHATで誕生したモバイルファースト戦略

日常生活のあらゆる潜在需要をひとつのアプリで満たしてしまおうという発想を具体化したのが〝スーパーアプリ〟。そのモデルを構築したのが中国のテンセントの「WeChat」だ。今回はアクシオン初の寄稿。手早くアジアの最新トレンドにキャッチアップできます。

”スーパーアプリとは?WECHATで誕生したモバイルファースト戦略”

Photo by paweldotio on Unsplash

🐨AXIONは参画者を募集しています

ここまで読んでくれた人、どうもありがとうございます。「経済ニュースのネットフリックス」を目指す axion は参画者を募集しています。 axion の事業計画等はすでに固まっており、今後の事業拡大にともない常に人が必要になる状況に直面すると想定しています。今すぐ参画するというのではなくとも一度お話をする機会があると色々いい形になるのではと思います。

必要な職責者

  • ソフトウェアエンジニア(フロントエンド、バックエンド=API、SRE)
  • CFO
  • メディア事業開発
  • データ分析
  • デジタルマーケター
  • ソーシャルマネジャー
  • PM
  • バックオフィス
  • 編集者、ジャーナリスト

数度のファイナンスの後必要になる職責者

  • 機械学習エンジニア
  • データ基盤エンジニア

食事、お茶などしたい人はぜひTwitterのTwitter (@taxiyoshida) か [Facebook] (https://www.facebook.com/taxi.yoshida)、あるいはメール yoshi@axion.zone まで。もともと新聞記者だったので雑談慣れしています。給与は業界上位と同等、福利厚生・カルチャーは”Work Rules"に準拠します。初期メンバーには議決権が制限された Common Stock(生株)を配ります。ご連絡をお待ちしております。詳しくはこちら

ジャーナリスト・編集者

何をするか

  • ビジネス系コンテンツ制作
  • 企業取材等による記事執筆や編集業務

好ましい経験

  • 出版社、新聞社、デジタルメディアなどでコンテンツ制作の経験
  • 経済、テクノロジー分野における取材・編集経験
  • アナリティクスツールを利用した簡易な分析経験

ベネフィット

  • 給与は年俸制、年俸の12分の1を毎月支給
  • スキル・経験・能力に応じて給与を決定。メディア業界の水準に従う
  • 株式、あるいはストックオプション(新株予約権)

休日・休暇

  • 完全週休2日制(土日)
  • 祝日・有給休暇(入社時10日付与)、夏季・年末年始休暇、慶弔休暇

福利厚生

  • 各種社会保険完備
  • 自由な勤務体系:12時〜16時をコアタイムとするフレックスタイムを導入しています。
  • 一番パフォーマンスのあがる環境:希望のPC、周辺機器等を予算のなかで選んでもらいます。

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By 吉田拓史
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