中国政府が支援する2つのチッププロジェクトでは、昨年から世界有数のチップ製造会社である台湾半導体製造有限公司から100人以上のベテラン技術者や管理職を採用していると、Nikkei Asian Reviewが報じた。

今回の採用は、北京が外国のサプライヤーへの中国の依存度を下げるために国内のチップ産業を育成するという目標を達成するための支援を目的としている、とNikkei Asian Reviewに対し情報筋は伝えている。

技術者を採用しているのは、Quanxin Integrated Circuit Manufacturing(QXIC)とWuhan Hongxin Semiconductor Manufacturing(Hongxin)の2社。それぞれ50人以上の元TSMC社員を雇用していることに加え、プロジェクトを元TSMC幹部が主導しているという。この2つのプロジェクトは、14ナノメートルと12ナノメートルのチッププロセス技術の開発を目指しており、TSMCより2~3世代遅れているが、中国では最先端である。

2017年に設立されたHongxinと2019年に設立されたQXICは、北京がワシントンとの緊張の影響を受けた主要なハイテク分野での自給を優先する中、中国の半導体産業の最近のブームの一翼を担っている。

業界団体SEMIによると、中国は世界で最も多くのチップ工場を新設または計画しており、2020年と2021年には、将来のチップ工場への投資を示す指標であるチップ製造設備投資で他国のトップになると予想されている。同国のトップ受託チップメーカーである国営のSMICは最近、2020年の設備投資額を今年2回目にして67億ドルに引き上げた。また、国が支援するハイテクゾーンである北京経済技術開発区との合弁工場を76億ドルで建設することも発表しており、これもチップメーカーに対する政府の強力な支援の表れとなっている。

QXICやHongxinのような新興半導体プロジェクトの多くは、地方政府の支援を受けており、国家半導体プロジェクトに貢献していることを北京に証明することに熱心で、熾烈な競争とトップの人材探しに拍車をかけている。

世界最大のチップ製造会社(ファウンドリ)であるTSMCは、中国のチッププロジェクトが人材を確保しようとする際に最も注目されるターゲットとなっている、と情報筋はNikkeiに語った。台湾のTSMCは、Apple、Huawei、Qualcomm、Googleなどの世界的なハイテク企業の主要サプライヤーであり、その生産能力は、長年業界をリードしてきた米国の大手チップメーカーIntelを凌駕している。

「Hongxinは、それらの人々のためにTSMCの総年俸とボーナスの2倍から2.5倍にもなるような素晴らしいパッケージを提供した」と、この件に詳しい関係者は語った。

TSMCは人材流出を非常に懸念しているが、損失が業界でのトップの地位にすぐに影響を与えるわけではないという。TSMCは、自社の企業秘密が中国の新興企業に移転することを懸念しており、チップ製造装置メーカーには、TSMCのためにカスタマイズされたツールを中国のプロジェクトに販売しないという新たな誓約書に署名するよう求めた、と情報筋は付け加えた。

TSMC 半導体ファウンドリ世界最大手
台湾積体電路製造(TSMC)は台湾新竹市の新竹科学工業園区に本社を置く世界最大の独立半導体ファウンドリである。Advanced Micro Devices (AMD)、Apple、Qualcomm、Nvidiaなどファブレス半導体の大手企業のほとんどがTSMCの顧客だ。
SMIC、中国の半導体国産化の期待を背負う
米国と中国の間の新たな「技術冷戦」は、今日の多くの電子機器の動力源となる半導体製造の自立化を目指す北京の動きをさらに加速させている。このような背景の中で、これまで無名だったSMICが、中国共産党の夢を実現するための「主人公」として浮上。政府の支援で規模を拡大し続けるSMICは業界を独走するTSMCと渡り合えるか。

Photo by TSMC