ギグエコノミーの終着駅は協同組合?

中間者を排除することで一顧客あたり経済性が改善

ギグエコノミーの終着駅は協同組合?

要点

UberやDoordashのようなギグエコノミー企業は、劣悪な待遇で働くギグワーカーに依存してきた。企業はVCの支援を失った後も資金燃焼のスパイラルから抜けられなくなるが、胴元を省いた協同組合モデルは、ギグエコノミーの持続可能性を担保するかも知れない。


配車競合組合のThe Drivers Cooperative(TDC)は最近、ニューヨークで操業を開始した。この組合はプラットフォームの中抜きがないため、ドライバーの給与が改善され、乗客のコストが下がると主張している。この組織は協同組合として設立されており、登録したドライバーは全員、協同組合のメンバーとなる。

UberやLyftが課手数料が約20%であるのに対し、TDCは乗車料金の15%を運営資金として徴収し、年度末に余った分は利益分配によってドライバーに還元する。同社によると、現在、ドライバーの平均収入はUberやLyftで働く場合よりも約30%多く、乗客の支払いは若干少なくなっているという。

会社設立後の数年間はベンチャーキャピタルに依存する新興企業とは対称的に、TDCはこれまで、負債による30万ドル程度の資金しか調達しておらず、これに労働者の積立を含み、現金100万ドル強を運転資金とする考えだ。地域に根ざした小規模な新興企業が、すでに有名な数十億ドル規模の上場企業の前にどのように立ち向かうことができるかは、未知数だが。

近年流行したギグエコノミーは、ギグワーカーの低賃金労働に依存してきた。2020年にサンフランシスコで行われた調査によると、配車ドライバーの収入は、経費を差し引いても週に360ドルだった。これは、週40時間労働の場合の時給9ドルであり、それ以上働く人の大半はさらに少ない。この調査では、ライドサービスや配達員の約半数が、ガソリン代などの400ドルの経費を借金なしで賄うことができなかったことが報告されている。

ギグワーカーを保護するために、カリフォルニア州は昨年、ギグワーカーを独立請負人から従業員に適切に分類する法律を制定した。この法律は2020年1月に施行された。

これに対し、UberとLyftは、この法律を覆す「提案22号」が市民立法されない限り、州から撤退すると脅した。この提案22号は、配車やデリバリーの労働者をカリフォルニア州のギグエコノミー法の対象外とするものだが、いくつかのメリットも提供している。この提案22号は、カリフォルニア州の最低賃金(現在の時給は13ドル)の120%に相当する賃金を保証するとしている。

しかし、カリフォルニア大学バークレー校のKen JacobsとMichael Reichの研究によると、第22号提案で保証される賃金は時給5.64ドルにとどまる可能性が高く、多くの労働者は、第22号議案で提供されるさまざまな保険給付の対象外となるという。この提案22号は昨秋の大統領選挙と同時に行われた投票で可決され、カルフォルニア州の法律となっている。

UberやDoordashのようなギグ・エコノミー企業の大半では、正社員化するとユニットエコノミクス(顧客一人あたりの経済性)が成り立たない。彼らは労働関連法の抜け穴を通して雇用した低賃金労働者に頼らざるを得ない。彼らは上場する前は、ベンチャーキャピタルの資金を燃焼させることで、顧客とギグワーカーに一定の「補助金」を支払っていたが、上場以降、企業の収益性に厳しい視線が浴びせられるようになると、価格を引き上げ、ギグワーカーへの報酬を絞るようになった。

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シアトル市のライドシェアドライバーの報酬は最賃以下
カルフォルニア大学バークリー校のジェームズ・パロット教授とマイケル・ライヒ教授(ともに経済学)にシアトルにおける配車ドライバーの賃金を、シアトル市の依頼を受けて調査した。パロットらは、シアトルの配車企業で働くドライバーの賃金は、最賃を大きく下回り、自ら自動車などの設備投資費を負ったがために転職が難しい事実上の従業員であると指摘。シアトル市にドライバーの最低報酬基準を提案した。

プラットフォーム協同組合

TDCの活動は、仲介型のデジタルビジネスを協同組合で置き換える「プラットフォーム協同組合」と呼ばれるものである。プラットフォーム協同組合は、2009年頃に始まったギグ・エコノミーに比べると、まだ歴史が浅いものの欧米圏では広がりを見せている。出前や配車、クリーニング、ヘルスケア、写真共有などでは例がある。

社会学博士のSamantha EddyとJuliet Schorは、カナダの「Stocksy United」というプラットフォーム協同組合の調査を行った。この会社はストックフォトの協同組合版で、貢献したフォトグラファーは独立した契約者とみなされるが、協同組合の株も所有している。少数の経営陣がいるが、重要な決定はアーティストの投票で行われる。

メンバーは、業界の「ウーバー」とされるゲッティイメージズで働いていたときよりも、写真が売れるたびにはるかに多くの収入を得ているという。すべてのメンバーは会社のガバナンスに対して発言権を持っているが、実際には約1,000人のメンバーのうち数百人しかフォーラムに参加しておらず、そこで問題が議論され、投票が行われている。

Stocksyの成功の鍵は、創業者たちがすでに業界での経験が豊富で、プラットフォームモデルとその技術を熟知していたことだという。もう一つの要素は、創業者が130万ドルの融資を受けてスタートしたことだ。協同組合の設立には、業種を問わず、資金不足が慢性的な障害となっている。

Photo by Sargis Chilingaryan on Unsplash

参考文献

  1. 世界で注目 「プラットフォーム協同組合」とは?. NHK クローズアップ現代+. 2021年5月25日 午後6:31 公開.

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