7月3週のニュースまとめ

世界中がベンチャー投資ブームを享受、ただし日本を除いて

7月3週のニュースまとめ
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米国・欧州

  1. CB Insightsの調査によると、2021年第2四半期の世界のベンチャーキャピタル投資額は前年同期比157%増の1,560億ドルと新記録を打ち立てた。21年第2四半期には、136社のユニコーンが誕生した。1年前の20年第2四半期に誕生した23社のユニコーンの約6倍であり、2020年全体で誕生した128社をすでに上回っている。
  2. フランスの競争監視当局は、検索エンジン大手のグーグル社が、同国のメディア出版社との間でコンテンツへの支払いをめぐって合意するよう求める命令に従わなかったとして、5億ユーロの罰金を科した。
  3. ドイツの競争監視委員会の責任者は、EUのハイテク規制の草案があまりにも「小さく」、GoogleやFacebookなどの企業による将来の反競争的な行動を捕捉できない危険性があると批判した。
  4. イーロン・マスクは、テスラが2016年に完了した約21億ドルのSolarCityの買収をめぐる株主代表訴訟で、財務的に苦しい時期での買収の理由について、テスラが自動車会社以上の存在になるため、と説明した。仮にマスクが訴訟に負けた場合、20億ドル以上を支払わなければならない可能性がある。
  5. 米国のウェルズファーゴ、シティ、JPモルガンの3社は、上半期に250以上の支店を閉鎖。これはネットワークの1〜5%に相当する。パンデミックによるロックダウンでデジタル化された人の流れの多くが二度と戻ってこないと見込んでいる。
  6. Facebookは、米連邦取引委員会(FTC)の新委員長であるリナ・カーンに対し、ビッグテック強硬派で公平性を欠くとして、Facebookに対する反トラスト法違反の訴訟を追及するかどうかの判断から退くよう要求した。Amazonも同様の要求をしていた。
  7. ヴァージン・ギャラクティックの最高経営責任者マイケル・コルグラジエは、創業者リチャード・ブランソン卿が週末に行った試験飛行の成功を受けて、1日に1回以上のペースで観光客を宇宙の果てまで連れて行くという目標を打ち出した。
  8. Netflixは、Facebookの拡張現実・仮想現実コンテンツ担当バイスプレジデントを務めていたゲーム業界のエグゼクティブ、マイク・ベルドゥーを採用し、ゲーム業界への参入を促進した。
  9. フェイスブックは、ユーザーデータへのアクセスを悪用した数十人の従業員を解雇。2014年から2015年にかけて、データを個人的な手段で悪用した52人の労働者を解雇した。その中には、喧嘩して別れた女性を探すためにデータを利用したエンジニアも含まれている。
  10. アイダホ州で投資銀行Allen & Coが主催する「上位0.00001%の所得者のサマーキャンプ」と呼ばれるSun Valleyカンファレンスが行われた。ビル・ゲイツが始めて離婚について公の場で語るなど話題を集めている。

中国

  1. アリババとテンセントは、お互いのサービスを徐々に開放することを検討しているとWSJは報じた。中国政府の圧力により、両社が築いてきた事実上の障壁を維持することが困難になっていることが背景にある。
  2. バイトダンスは、3月下旬に政府当局からセキュリティリスクへの対応に注力するよう指示されたため、米国または香港で事業の全部または一部をIPOする計画を無期限に保留していたとWSJが報じた。
  3. バイトダンスの動画共有プラットフォームDouyin(中国版TikTok)が最近、フードデリバリー事業のためのチームを立ち上げ、「Xindong Waimai」と名付けられたミニプログラムの社内テストを開始したと報じらている。
  4. Didi(滴滴)の競合は、滴滴へのサイバーセキュリティ当局の取り締まりをドライバーとユーザーを獲得する好機と捉え、割引合戦を仕掛けているという。滴滴は中国の配車予約数の90%を占めるが、推定230の競合アプリがひしめいている。
  5. シャオミは自律走行車部門の人材登用を強化している。現地メディアによると、近々、新しい人材採用計画を発表する予定だ。シャオミは一ヶ月前に自社の求人ページに自律走行に関連する20の職種を新たに公開し、同社の車両分野への進出を正式に発表していた。
  6. Meituan(美団)はテンセントから4億ドルの追加出資を受けたことを発表した。テンセントは、生活アプリ大手への出資比率を17%から17.2%に引き上げた。Meituanはこの資金を、無人配送車や配送用ドローンなどの技術革新に使用する。
  7. 中国のゲーム配信プラットフォームであるHuyaとDouyuは、先週反トラスト規制当局が合併を阻止した後、11日に合併契約を終了すると発表した。両社は、中国国家市場管理局(SAMR)が下した決定を「完全に尊重し」、「遵守する」と述べた。
  8. アリババが支援したファッションレンタルのスタートアップであるYClosetは事業を精算する。YClosetは規模が拡大するにつれ、送料、ドライクリーニング、最新のファッショントレンドへの対応など、高額な費用に苦しんだ。

インド

  1. インドのeコマース企業であるフリップカートは、主要株主であるウォルマートが主導したラウンドで、企業価値376億ドルで36億ドルを調達した。フリップカートは2022年に米IPOを行う計画が報じられてきた。
  2. インドは、スタートアップのIPOの季節を迎えた。フードデリバリーのZomatoは14日から株式公開を開始し、自動車購入ポータルのCarTrade社とデジタル決済のMobikwik社は、上場目論見書をインドの市場規制機関に提出した。
  3. アント・グループが支援する食料配達Zomatoは、今週中にムンバイで新規株式公開を行い、約13億ドルを調達した。2004年にTata Consultancy Servicesが行った11.7億ドルの新規株式公開を上回り、インドで最大のテクノロジー関連の株式公開の新記録となった。
  4. デジタル・ペイメント企業のPaytmは、株主からの承認を得て、公募により1,200億ルピー(約1,760億円)相当を調達することを決定し、今後数週間のうちにIPO目論見書を提出する準備を進めていると、同社に近い関係者が伝えている。
  5. カルナタカ州高等裁判所は、Twitter India社のマネージングダイレクターManish Maheshwariが提出した申立てに対する判決を来週の火曜日(7月20日)に延期した。老人を襲撃する暴力動画がTwitterで話題になったことを理由に召喚された。

日本

  1. トヨタの子会社であるウーブン・プラネットは、自動運転モビリティのための高精度地図を中心とした次世代道路情報解析に強みを持つ、CARMERAの買収に合意した。2021年4月に公表したLyftの自動運転部門であるLevel 5の買収に続く、買収案件。
  2. 甘利明元経済産業大臣は、フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「経済界は皆、東芝は非常に重要だと言っていたのに、アクティビストだけが資金提供を名乗りを上げた、これが問題の核心だ」と語った。「日本の民間企業は国家安全保障における重要性を「全く認識していない」
  3. グリーンシル問題で莫大な損失を被ったクレディ・スイスはソフトバンクを提訴することをしている(Axion)。訴訟が提起されれば、関連する事業体すべてに資金を注入していたソフトバンクの行いが、利益相反に当たるかどうかより明快になる可能性がある。
  4. 東京海上の豪子会社が、グリーンシル破綻で生じた損失を巡って、クレディ・スイスとの綱引きを始めている(Axion)。東京海上がサプライチェーンファイナンスファンドの破綻から背負う潜在的損失はどの程度のものか。

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AI時代のエッジ戦略 - Fastly プロダクト責任者コンプトンが展望を語る

AI時代のエッジ戦略 - Fastly プロダクト責任者コンプトンが展望を語る

Fastlyは、LLMのAPI応答をキャッシュすることで、コスト削減と高速化を実現する「Fastly AI Accelerator」の提供を開始した。キップ・コンプトン最高プロダクト責任者(CPO)は、類似した質問への応答を再利用し、効率的な処理を可能にすると説明した。さらに、コンプトンは、エッジコンピューティングの利点を活かしたパーソナライズや、エッジにおけるGPUの経済性、セキュリティへの取り組みなど、FastlyのAI戦略について語った。

By 吉田拓史
宮崎市が実践するゼロトラスト:Google Cloud 採用で災害対応を強化し、市民サービス向上へ

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Google Cloudは10月8日、「自治体におけるゼロトラスト セキュリティ 実現に向けて」と題した記者説明会を開催し、自治体向けにゼロトラストセキュリティ導入を支援するプログラムを発表した。宮崎市の事例では、Google WorkspaceやChrome Enterprise Premiumなどを導入し、災害時の情報共有の効率化などに成功したようだ。

By 吉田拓史
​​イオンリテール、Cloud Runでデータ分析基盤内製化 - 顧客LTV向上と従業員主導の分析体制へ

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Google Cloudが9月25日に開催した記者説明会では、イオンリテール株式会社がCloud Runを活用し顧客生涯価値(LTV)向上を目指したデータ分析基盤を内製化した事例を紹介。従業員1,000人以上がデータ分析を行う体制を目指し、BIツールによる販促効果分析、生成AIによる会話分析、リテールメディア活用などの取り組みを進めている。

By 吉田拓史
Geminiが切り拓くAIエージェントの新時代:Google Cloud Next Tokyo '24, VPカルダー氏インタビュー

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Google Cloudは、年次イベント「Google Cloud Next Tokyo '24」で、大規模言語モデル「Gemini」を活用したAIエージェントの取り組みを多数発表した。Geminiは、コーディング支援、データ分析、アプリケーション開発など、様々な分野で活用され、業務効率化や新たな価値創出に貢献することが期待されている。

By 吉田拓史