NFTがゴミである理由
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NFTがゴミである理由

NFTは著作権、翻案権をめぐる致命的な脆弱性をいくつも持っている。その大半は何の権利も所有者に与えない詐欺まがいの代物だ。そして複製可能でもある。NFTを扱うということは詐欺師と法律家を儲けさせるということだ。

吉田拓史

NFTは著作権、翻案権をめぐる致命的な脆弱性をいくつも持っている。その大半は何の権利も所有者に与えない詐欺まがいの代物だ。そして複製可能でもある。NFTを扱うということは詐欺師と法律家を儲けさせるということだ。


俳優でテレビ・プロデューサーのセス・グリーンが、自身が所有する膨大なNFTコレクションに関連するキャラクターを用いて新アニメシリーズを企画していたが、5月、フィッシング詐欺に遭って4枚のNFTを奪われ、新アニメの制作がストップした。

グリーンは2021年7月に有名アート「BAYC」のNFTを購入し、この数ヶ月間、そのNFTにまつわる「権利」を基に自らが企画する番組の主役にするための知的財産(IP)を開発・活用してきた。

この「盗難」は、様々なNFTの法的な問題を露見させる絶好のケース・スタディとなっている。著作権や所有権、その珍しいライセンス体系をめぐる議論を呼び起こしたのだ。

スクリーンに映される「White Horse Tavern」の一節。BAYCの猿㊨と俳優が共演している。https://www.youtube.com/watch?v=R5mjiz0Cd34
スクリーンに映される「White Horse Tavern」の一節。BAYCの猿㊨と俳優が共演している。https://www.youtube.com/watch?v=R5mjiz0Cd34

BAYCは特徴的な権利関係の規約を持っていることで知られる。BAYC NFTの購入者には、プロパティの商業的な開発・利用を含むさまざまな範囲でアートを使用できるライセンスが与えられる(この規約の適法性を巡っては諸説あるが…)、とされている。規約は、所有者がそれに基づいてより広範な二次的著作物を作ることを許容した(好きな場所でライセンスする権利を与えた)、と主張している。


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グリーンはBAYCが付与するライセンスに関連する権利を基にキャラクターを開発し、テレビ番組を製作しようとしていた。しかし、結果としてライセンスをNFT自体に紐付けると、NFTが盗まれたときに多くの新しい問題が生じることが判明した。

BAYCの規約は「所有」と「占有」を同じものとして扱っている。規約では、イーサリアムネットワークのブロックチェーンが所有権を決定するとされており、BAYCの作者であるYuga Labsは、現在のNFTの所有者を「押収、凍結、その他変更」できないと述べるにとどめている(変更できるとブロックチェーンの“建前”が崩れてしまう)

盗まれたNFTが参照するBAYCのデジタルアート、あるいは画像。

懸念点として、盗難者は合法的にNFTの洗浄を行える可能性があることが挙げられる。サンタクララ大学の知的財産・技術法教授であるエリック・ゴールドマンはBuzzFeed Newsに、「通常、善意の購入者は、それが話題の商品だと知らずに購入しても法的に保護される」と述べた。盗まれたNFTの買い手にとって、NFTの移動を記録するブロックチェーンは、「善意の第三者」であることを主張することを難しくする可能性もあった。

しかし、洗浄方法はたくさんある。最終的に、その翌月、グリーンはBAYCのNFTの一つを買い戻したことを明らかにした。26万ドル相当(当時)の165ETHを支払ったようだ。この流れの中で盗難者は一連の盗難で得た暗号通貨を複雑な手法によって効果的に洗浄したことが、ハッカーのZachXBTによって指摘されている。

また、弁護士の間では、彼がNFTを失った後も彼が番組制作権を有しているかどうかが疑問視されたという。グリーンが制作会社と盗まれたNFTに関して結んだサブライセンス契約(ライセンシーがライセンスされた特許や商標を、さらに第三者にライセンスすること)がまだ有効かどうかは未解決の問題である。

さらに規約に穴があるようだ。BAYC規約では、アートワークの無制限の商業利用を認めている。具体的には、「Yuga Labs LLCは、購入したアートを、そのアートに基づく派生作品を作成する目的で、使用、複製、表示するための無制限かつ世界的なライセンスを許諾する」と記載されている。

しかし、「そのライセンス付与が、BAYC規約のわずか2段落上にある『NFTを購入した場合、その基となるBAYC、つまり芸術を完全に所有する』という記述と矛盾することだ」とコーネル大学のジェームス・グリムメルマン教授(法学)らのチームは指摘している。

つまり、盗難とは関係なく、グリーンの試みはかなり脆弱な法的基盤に則って執り行われていた、ということだ。

上述の通り、BAYCとその追随者は、ライセンス付与を試みることで、NFTに何らかの価値を与えようと「頑張って」いる。裏を返すと、このような規約を持たないNFTにはNFTに付随する権利が何も存在しなかったことを意味する。NFTの所有が意味するのは、イーサリアムの改ざん耐性があると言われている独特なデータベースに任意のウォレットにNFTが所在すると書かれていることだけである(詐欺の匂いがする)。

NFTを購入すると一体何が手に入るのかが全く明確ではない。大半のNFTには原作との関連性が存在しない。原作が必要とされるのは、プロセスの最初のステップで、tokenIDとコントラクトアドレスのユニークな組み合わせを作成するときだけだ。この組み合わせが魔法じみた効力を発揮すると主張する人もいるが、ランダムに生成された数字のペア以上の意味合いはない。

買い手の中には、原作とそれに付随するすべての権利を取得したと考える楽観的な人もいる。しかし、実際には、作品そのものではなく、作品に関連するメタデータ(本体であるデータに関する付帯情報が記載されたデータ)を購入しているに過ぎないのである(というか、メタデータすらも手に入れていない可能性が高い)。

しかも、イーサリアム等のブロックにはURLが記載されているだけで、URLが参照するNFT業者のサーバーに作品名、画像等のメタデータが保存されている。したがって、「NFTを生成するとNFT業者のサーバーに作品名、画像などが記載される」というのが真実だろう。詐欺師や信者はこれに大いなる価値を見出すが、それ以外の人の想像力はそこまでたくましくない。

例えば、あなたがペイントソフトでデジタルな絵を書いたとしよう。私がそれを受け取り、自分が管理するサーバーにタイトルや作者名などとともにアップロードしたとする。これがあなたの絵の何を証明することになるだろうか? NFTが行っていることはこれだけである。これに数億円払った人もいたわけだ。

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BAYCだけではない

CryptoPunksを含む人気のあるNFTプロジェクトの中には、著作権に関する条件を明示しないままリリースされたものがあるが、このNFTは何者でもない。「悪意のアクターはNFTアートの作者に近づき、アートワークの著作権を買い取り、NFT購入者が画像をプロフィール写真やOpenSeaのリストなどに掲載した場合、著作権侵害で訴えることができる」とグリムメルマン教授らは説明している。

さらに露骨なことに、NFTの中にはアーティストから盗んだアートワークや、NFTのクリエイターが何の関係もなくライセンスも受けていない有名な作品を使用し、著作権トラブルを引き起こすものもある。

この『富嶽三十六景』のNFTを生成するのはあなたの自由だ。NFTとこの絵画には全く関係がないが、中にはこの絵画の著作権は自分のものである、と主張する人もいる。"Hokusai 3" by Last.fm is licensed under CC BY-SA 2.0.

著作権法は、創作者が積極的な措置を講じない限り、NFT所有者にいかなる権利も与えない。既存のNFTプロジェクトとそのライセンスについて調査したところ、NFTの著作権をコミュニティメンバーが期待するように動作させるために必要なすべてのステップを踏んでいるものはほとんどないことが明らかになった、とグリムメルマン教授らは上述の論考で結論づけている。

BAYCを複製して売り出す「コンセプトアート」が登場

NFTの脆弱性は他にもある。以前のブログで指摘したNFTが複製可能である事実を実証した現代アートが誕生し、そのきつすぎる皮肉が物議を醸している。

日本よ、目を覚ませ、Web3はクソだ!
Web3の誇大広告は日本の政界にまで浸透し、大手メディアでは誤った説明が繰り返されている。バブル崩壊以降の30年間を経済停滞の中で過ごした日本にとって、Web3への投資は船が再び誤った方向に進んだことのシグナルとなってしまうだろう。

ロサンゼルス在住のアーティストライダー・リップス(Ryder Ripps)のコンセプトアートプロジェクト「RR/BAYC」は、5月中旬、一種の抗議として、オリジナルのBAYCの画像を使用し、自分のNFTを「RR/BAYC」NFTと呼び、模倣品をマーケットプレイスに流通させた。RR/BAYC NFTは本家より安い価格が付けられていた。

Yuga Labsの弁護士は、6月24日に訴状を提出し、Rippsを虚偽広告、商標権侵害、サイバースクワッティング(ドメイン名を、不正な目的で登録・使用すること)などと主張し、非難している。

この訴状は、RippsとYuga Labsがネット上で応酬を繰り広げた後に出されたものだ。5月下旬、RippsはRR/BAYCに関連するDMCAテイクダウン要請を撃退した。そして先週、YouTuberのフィリップ・ルスナック(Philion)は、BAYCとその人種差別的メッセージとの関連について1時間に及ぶYou Tube動画「BAYCはナチスクラブだ」を公開した。Rippsの調査が使われたこの動画は、162万回以上再生されている。これはRipsの主張をなぞったものだ。

Ripsは、購入者が誤解を受けたというYuga Labsの主張を否定している。「RR/BAYC NFT(Non Fungible Token)を予約した人々は、彼らのNFTがBAYCに対する抗議とパロディとして鋳造されたことを理解していた。そして、RR/BAYC NFTがBAYC NFTの代用品であるとか、Yugaのクラブへのアクセスを許可してくれるという印象を持った人はいなかった。彼らは購入時に免責事項を明示的に認めた」

フェアユースの法理論によれば、スタンフォード図書館のために弁護士のリチャード・スティムが説明したように、「著作物に対するコメント、批判、パロディなど、限定的かつ『変形』した目的のために」著作物を使用することは許容されている。

この例から、誰もが一つの著作物に対して無制限にNFTを作れることは明らかだ。もし、コンセプトアートとしてではなく、悪徳集団が大規模犯罪として同様の攻撃スキームを利用した場合、どうなってしまうのだろうか?

悪い人たちに情報を渡すのはマズいので例示しないが、NFTにはこのような脆弱性が多数ある。詐欺師やクラッカーにとっては天国のようなガラクタテックである。

追記

前回のブログでブロック内に作品に関連するメタデータがURLしか入っていないことを指摘したら、ブロック内にすべてのメタデータを入れれば(「フル・オン・チェーン」というらしい)、「唯一性」が成り立つという不思議な主張をする不思議なグループの存在を観測した。箱の中にデータを入れたから、データが指す画像の固有性が担保されるという宗教じみた主張には驚くしかなかった。フル・オン・チェーンであろうとなかろうとNFTは「ブロックチェーン教」頼みの代物だ。僕は危険なカルトの台頭には反対する立場をとっている。

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※2022年8月1日13時36分、「例えば、あなたがペイントソフトでデジタルな絵を書いたとしよう〜」の段落を追加した。わかりやすくするため