「Web3はWebじゃない」とWebの父が断言

1989年にワールド・ワイド・ウェブ(WWW)を発明した英国のコンピューター科学者ティム・バーナーズ=リーが、Web3と自身が提唱したWeb3.0の関連性を否定し、そもそも「Web3はWebではない」と指摘した。

「Web3はWebじゃない」とWebの父が断言
ティム・バーナーズ=リー by campuspartybrasil is licensed under CC BY-SA 2.0.

1989年にワールド・ワイド・ウェブ(WWW)を発明した英国のコンピューター科学者ティム・バーナーズ=リーが、Web3と自身が提唱したWeb3.0の関連性を否定し、Web3はそもそもWebではないと指摘した。

バーナーズ=リーは4日、ポルトガルのリスボンで開催されたWeb Summit 2022のステージで、「Web3という名前は、Ethereumの人々がブロックチェーンでやっていることのために使っており、本当に残念だ。実際、Web3は全くウェブには当たらない」と語った

「(ブロックチェーンは)遅すぎるし、高すぎるし、オープンすぎる。パーソナルデータの保存は、高速で、安価で、プライベートなものでなければならない」

Web3とは、技術界における漠然とした用語で、現在よりも分散化され、Amazon、Microsoft、Googleといった一握りの強力なプレイヤーに支配されていない、仮想的な未来のインターネットを表すために使われている。Web3は、ブロックチェーン、暗号通貨、NFTなど、いくつかの技術を含んでいる。(詳しくはこのブログ)。

日本よ、目を覚ませ、Web3はクソだ!
Web3の誇大広告は日本の政界にまで浸透し、大手メディアでは誤った説明が繰り返されている。バブル崩壊以降の30年間を経済停滞の中で過ごした日本にとって、Web3への投資は船が再び誤った方向に進んだことのシグナルとなってしまうだろう。

バーナーズ=リーはWeb3ムーブメントの最大の被害者 の一人である。WWWを再構築するための彼自身の提案である「Web 3.0」は、セマンティックウェブを指していた。セマンティックウェブ技術により、人々はウェブ上にデータストアを作成し、語彙を構築し、データを扱うルールを書くことができ、これは文書のための最初期のWebからの発展としてWeb 3.0という用語が当てはめられることがった。しかし、Ethereumの共同創設者の一人ギャビン・ウッドが後から被せた「Web3」という言葉が広まり、事実上ハイジャックされた格好だ。

Web3は、人によって恐ろしいほど定義が異なる言葉だが、基本的にはブロックチェーン、暗号通貨を採用した既存のインターネットのアプリケーションレイヤーの追加部分の提案と言っていいだろう。多くの場合は、バーナーズ=リーが指摘したように非効率的で不要である。既存のペイメントネットワークを暗号通貨に置き換えるというような方法は考えられるものの、秘密鍵を自分自身で管理し、自ら様々なクラックに対処しないといけないというクリプト界隈のワイルドウエスト具合は過剰であり、一般人が利用するには難易度が高すぎるだろう。

しかし、バーナーズ=リーはちゃっかりWeb3のブームを収益化してもいることは注記しておこう。彼は昨年WWWのオリジナルソースコードに関連するNFTを540万ドルで売った。NFTは対象とされたデジタルデータとの関連性があやふやな無意味なデータを指す言葉だ(詳しくはこちらのブログ)。

一つだけ、Web3のレトリックとバーナーズ=リーの考えに一致する点があるとすれば、それはビッグテックへの集中、偽情報、プライバシーについて解決したいという考えのことだ。彼は、我々のパーソナル・データは、GoogleやFacebookといった一握りのビッグテック・プラットフォームによってサイロ化されており、彼らはそれを使って「我々を彼らのプラットフォームに閉じ込めている」と語ったという。

この状況を解決するため、バーナーズ=リーが創業したスタートアップであるInruptは、ユーザーが自分自身のデータをコントロールできるようにすることを目的としている。同社は12月に資金調達ラウンドで3,000万ドルを調達したとTechCrunchは報じている。Inruptが開発するSolidは、個人が自分の個人情報を「ポッド(Pods)」に格納し、そのデータへのアクセスをその個人がコントロールすることを可能にする。Podsとは、「誰が自分のデータを見るかをコントロールできる場所」だと彼は言う。

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