ロボタクシーの稼働がウーバー型配車を凌ぐ

ロボタクシーの稼働はウーバー型配車に追いつき、追い越そうとしている。ロボタクシーからセーフティドライバーがいなくなり、適用範囲が広がれば、ウーバー型は経済性で太刀打ちできなくなる。

ロボタクシーの稼働がウーバー型配車を凌ぐ
Baidu Apollo RT6 Exterior. 出典:百度

ロボタクシーの稼働はウーバー型配車に追いつき、追い越そうとしている。ロボタクシーからセーフティドライバーがいなくなり、適用範囲が広がれば、ウーバー型は経済性で太刀打ちできなくなる。


中国の大手テクノロジー企業の百度は、大都市における同社のロボタクシー事業が、従来の配車サービスと同じように地元の人々の支持を得るまであと少しだと主張するようになった。

22日に行われた第3四半期(Q3)決算のアーニングコールによると、この期間に百度の自律走行車(AV)タクシーは北京、上海、広州でそれぞれ1日平均15回以上乗車したと、CEOのロビン・リーは述べた。

「我々の知る限り、この数字は従来の配車サービスの1日の平均乗車回数にかなり近い」とリーは述べた。例えば、ニューヨーク市の配車アプリの有効車両1台あたりの利用回数は、入手可能な最新データによると、9月には1日平均約12回。百度のロボタクシーApollo Goはこれを凌いでいることになる。

百度の発表によると、Apollo Goは、Q3に47万4,000回の乗車を完了し、前年同期比311%増となった。Q3までに、Apollo Goは累計140万回の乗車を完了。「当社は、世界最大の自律型配車サービスプロバイダーであり続けていると考えています」とリーは語っている。

アーニングコールにおいて、Apollo Goがいつ損益分岐点に達するかという質問に対して、同社は、ロボタクシーは最終的に利益を上げ、現在の配車サービスよりも安くなると考えており、百度全体の損益およびキャッシュフローへの影響は「管理可能」であると述べた。最近、いくつかのAV企業がリストラや部門自体の閉鎖を行い、業界には淘汰の嵐が吹き荒れている。

自動運転車業界で深刻な淘汰が進行中
フォードとフォルクスワーゲン(VW)出資の自律走行車プロジェクトが頓挫した。長期に渡って巨額の先行投資を要する自律走行車ビジネスは、世界的な不況観測の中で、シビアな淘汰の季節を迎えている。
ロボタクシー事業化時期が自律走行車企業の財務を左右する
中国の自律走行車企業である小馬智行(Pony.ai)は、資金調達パイプラインの乱れに悩まされている。同社はロボタクシーの事業化が遅れるシナリオを勘案し、リストラを行い、より素早く収益化が効く事業にリソースを分配している。

百度のロボタクシーApollo Goは現在、中国の主要都市(北京、上海、広州、深セン)を含む10以上の都市で利用可能。北京市郊外の配車市場では、操業開始から2年未満で、シェアの約10%を確保した(Q2決算時点)。

百度がロボタクシー競争のトップにいる?
米中の自律走行車(AV)企業によるロボタクシーの競争が激化する中、中国のテクノロジー大手百度は、ロボタクシーの実運用を着実に伸ばしている。「実践の中国」を代表する百度が「理論の米国」を凌駕する結果となるか。

1年前、バイドゥは北京市の承認を得て、首都の中心部から車で30分ほどの北京市亦荘地区でロボタクシーに乗り、運賃の徴収を開始。これらはセーフティドライバーを伴うものだった。

しかし、今週、百度は地元北京当局から、最前列に人間のスタッフを座らせないロボタクシー10台をテストする許可を得たと発表した。同じくロボタクシー事業を展開する新興企業のPony.AIも、同様の認可を取得したという。

中国と米国を比較する難しさ

これらの発表を持って百度が、ロボタクシー事業の実践においてWaymoやCruiseを凌いでいる、と結論づけることはできない。WaymoとCruiseはいくつかの都市でドライバーレスのAVへと移行しているが、百度はセーフティドライバー付きが多数派である。

また、中国の1級都市の郊外とサンフランシスコやフェニックスの路面環境も大きく異なるだろう。百度が活動する区域は人口が密集しておらず、自律走行システムの運用を容易にする新しく広い道路が多いのが特徴だとTechCrunchのRebecca Bellanは書いている。Apollo Goが営業する武漢のゾーンでは、2021年から321キロメートルの道路をAVのテスト用に改修し、そのうちの106キロメートル分は5Gを利用したV2X(Vehicle to Everything)インフラでカバーされているという。

AVは、V2X技術を利用して周辺環境に関する情報をリアルタイムで収集し、その情報を他の車両やインフラと共有することができる。これは基本的に、車載LiDAR、レーダー、カメラとは別に、ロボット軸が頼るべきもう一つのセンサーを提供することになる。V2Xインフラは、百度が車両をリモートで監視し、必要に応じて車両を操縦するのにも役立つことを意味する。

これは、中国側がかなりロボタクシーが成立するための環境の整備を、都市計画の視点から行っていることを意味する。サンフランシスコの密集した道路でCruiseのロボタクシー車両が止まり、数時間にわたり交通を遮断したような、ワイルドな環境を与えて、システムを学習させようとする米国側の実装方法とは異なる。

むしろ、百度は地方政府に交通管理システムを導入し、集中型の制御を行うアプローチを提案している。同社が提案する「ACEスマートトランスポーテーション」は、同社のクラウド部門の製品であり、北京、広州、重慶というロボタクシーの試験を行う都市に提供されている。これは、ロボタクシー、車両、公共交通機関、V2X、IoT、中央のAIシステムなどの高い接続性によって実行される「都市交通全体をリアルタイム制御するコンピューティング・プラットフォーム」とでも呼べばいいだろうか(図表、ビデオ参照)。

ACEスマートトランスポーテーションの簡易な構成図。出典:百度
ACEスマートトランスポーテーションの簡易な構成図。出典:百度

最終的には、百度がこのようなシステムとハードウェアを中国の膨大な都市に拡大し、同時に新興国にパッケージとして輸出しようとしているのは、間違いないだろう。

このような国家戦略の側面があるせいか、中国側の顧客獲得の方法が異なるのだろう。中国側は大幅な割引で既存事業者に対する競争力をブーストしている。CNBCが水曜日にApollo GoとPony.aiの両アプリを確認したところ、80%以上の割引が適用されていることが分かった。

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By 吉田拓史
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