Uber、4.5兆円損失後に待望の黒字化もロボタクシーの「捕食」が迫る

Uberが4.5兆円を失った後についに黒字化した。しかし、息をつく間もなく、ロボタクシーがその城を落とそうとしている。Uberは有効な対抗策を持っていない。市場から去ってしまうのか。

Uber、4.5兆円損失後に待望の黒字化もロボタクシーの「捕食」が迫る
2023年4月27日木曜日、米カリフォルニア州サンフランシスコのウーバー本社。Photographer: David Paul Morris/Bloomberg

Uberが4.5兆円を失った後についに黒字化した。しかし、息をつく間もなく、ロボタクシーがその城を落とそうとしている。Uberは有効な対抗策を持っていない。市場から去ってしまうのか。


Uberは先週の四半期決算報告で、初の営業黒字を計上した。上場後に累計で315億ドル(約4.5兆円)を燃やした後の黒字だ。この315億ドルにはソフトバンクグループ(SBG)の投じたビジョンファンドの資金が多分に含まれている。

財務面が好転したのは、価格を引き上げ、コスト抑制のために積極的に行動した結果である。同社は将来に自信を持っており、今期は好調な見通しを発表している。しかし、同社の最も収益性の高い配車事業には、明確な脅威が存在する。運転手をAIで代替することでより効率的なロボタクシーである。

サンフランシスコではセーフティドライバーなしのロボタクシーがまだわずかであるが稼働している。これを運営するGM傘下のCruiseとAlphabet傘下のWaymoは、サンフランシスコ、オースティン、フェニックス、そしておそらくロサンゼルスでも、今後数ヶ月のうちにサービスを拡大し続ける構えのようだ。過去数年間で、CruiseとWaymoはいくつかの大きな規制上のハードルをクリアし、新たな市場に進出し、アメリカの主要都市でそれぞれ100万マイル以上の比較的問題のない、真のドライバーレス走行距離を記録した。

一方、テスラのオートパイロットシステムは、量販車で最も自律走行に近いと誤解されているが、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)と司法省の両方が調査中であり、自律走行車(Autonomous Vehicle: AV)の開発競争から零れ落ちそうだ。

テスラは自動運転技術で遅れをとっている
独メディアにリークされた内部文書は、テスラの自動運転技術の安全性をめぐる問題に懐疑的な見方を与えるだろう。さまざまな混乱を経て、テスラはこの分野で遅れているという観測は決定的と言っていいだろう。

ロボタクシーの普及によって感情的な反発が起きている。サンフランシスコでは、自律走行車(Autonomous Vehicle: AV)の操業を快く思っていない住民が、車のボンネットに交通コーンを置くことでCruiseとWaymoのロボットタクシーを無効にできることに気づき、他の人々にもそれをするよう呼びかけた。これは、技術の社会実装の初期段階にあることを示唆しているとも言える。

CruiseとWaymoは、サンフランシスコのほぼ全域で終日商用ロボットタクシーサービスを提供する認可を間近に控えている。これは即座に、市内のタクシーやライドヘイルのドライバーにかなりの経済的影響を与える可能性がある。CruiseとWaymoが店舗を構える他のすべての都市も同様だ。プロの運転手が自動化されて存在しなくなるという見通しは、もはや机上の空論ではない。近い将来、現実に起こりうることなのだ。

Uberは技術革新の波に手をこまねいていたわけではなかった。ロボタクシーの中核であるAVの研究開発を、カーネギーメロン大学の研究者たちを迎え入れて行っていた。この研究開発部門にはSBG、トヨタ、デンソーの日本企業も出資していた。

しかし、この部門はいくつかの深刻なトラブルに見舞われた。まず、Waymo出身のエンジニアが立ち上げたAVスタートアップの買収した際に、そのエンジニアがWaymoの企業秘密を持ち出したとWaymoに提訴された。Uberが非を認める形で和解している。また、アリゾナ州での試験走行中、自転車を押して道路を横断していた歩行者をAVがはねて死亡させる事故が起き、これが研究開発の障害となった。

トヨタ出資のUber自動運転部門が長期停滞、25億ドル浪費か
Uberの自動運転車を開発する試みは、内紛と挫折に悩まされており、これまで費やした25億ドルは浪費となった可能性があり、Alphabetが所有するWaymoやAppleの自動運転技術のようなライバルに置き去りにされると懸念されている。

最終的にこの部門は、AV新興企業Aurora Innovationに売却された。Auroraとは優先的な技術供与の契約を交わしていたが、技術開発に行き詰まり、2022年頃から同社は身売り先を探している状態である。この経路の望みは絶たれたといっていい。

Uberは別の提携先に活路を見出している。UberはAV新興企業Motionalと提携してラスベガスで初のロボットタクシーサービスを開始し、顧客がAV車両を呼べるようにした。このサービス開始は、Motionalの現代自動車「IONIQ 5」を採用したロボットタクシーとUberの配車およびデリバリープラットフォームとの10年契約の一環である。ただ、現代自動車と米国の電気自動車(EV)会社Aptivが設立した MotionalはAV開発競争では上位集団に属していないようだ。2020年設立とAV企業としてはかなり新しいMotionalは、昨年ラスベガスでサービスを開始し、Uberの競合のLyftとの配車サービス提供によってロサンゼルスを2つ目の展開先としたが、その展開領域やAVのクオリティにおいてCruiseとWaymoとは大きな差がある。

長期に渡る法廷闘争を繰り広げたWaymoとは、協業することになった。Waymoは5月、Uberとの複数年にわたる提携を発表し、自律走行による配車サービスとUber Eatsによる配達を提供することを明らかにした。フェニックス周辺の180平方マイルの営業エリアで今年後半に開始される予定だ。おそらく、両者は一定の収益シェアで合意しているはずだ。両者は2022年には自律走行トラックとその配車でも同様の枠組みの提携を結んだ。

おそらくこの点に活路があるだろう。乗客が直接CruiseとWaymoを呼び出すとUberは干上がるが、複数のサービスとの仲介をUberが行うのなら手数料を取ることができるし、フリーランス労働者の運転手の待遇を気にしないで済む(運転手を正社員として雇用することを規定する法律は一度はカルフォルニア州で成立して、Uberが覆した経緯がある)。ただ、一定の利用料を確保した後、Uberの配車サービスをCruiseらが真似てくるのは想像に難くない。Uberは時間制限を課せられているだろう。

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