コンサルは彼らが主張するほど「専門知識」を持っていない?

コンサルティング業界は急成長に伴い、スキャンダルが続出している。英国の研究者は、コンサルの「専門知識」に疑義を呈し、外注中毒が政府の能力を著しく損ねていると警鐘を鳴らしている。

コンサルは彼らが主張するほど「専門知識」を持っていない?
Photo by Kvalifik 

コンサルティング業界は急成長に伴い、スキャンダルが続出している。英国の研究者は、コンサルの「専門知識」に疑義を呈し、外注中毒が政府の能力を著しく損ねていると警鐘を鳴らしている。


来月、コンサルティング・ファームを痛烈に批判した著書が出版されると話題になっている。英国を拠点とする著名な学者であるマリアナ・マッツカート(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン経済学教授)と、マッツカートが率いる同大学の研究機関「Institute for Innovation and Public Purpose」の博士号候補であるロジー・コリントンが、コンサルティング業界を調査した『The Big Con: How the Consulting Industry Weakens Our Businesses, Infantilizes Our Governments, Warps Our Economies』である。

マッツカートはフィナンシャル・タイムズ(FT)のHenry Manceのインタビューで、コンサルタントや外注業者には、彼らが主張するほどには専門知識がなく、見た目以上にコストがかかり、長期的には公共部門が内部能力を開発するのを妨げると主張している。

「私たちは、コンサルタントに反対しているのではありません。問題は、ある産業が政府に独立を促すインセンティブを持たない場合です。クライアントをいつまでも治療しているセラピストは、明らかにあまり良いセラピストではありません」「マッキンゼーやデロイトのような民間企業は、アドバイスするような分野の専門知識を持っていないのです」

マッツカートは、コンサルタントの国家に対する役割について「中立」ではないと主張した。コンサルティング企業は2008年以降、国家のスリム化を推進した。スリムになれば、アウトソーシングの隙間ができる。

英政府機構間の効率化・変革を担当するアグニュー閣外相は、英政府は高価な経営コンサルタントへの「容認できない」依存によって「幼稚化」していると、政府閣僚がリークした文書の中で主張している。

公式データによると、2016年のブレグジット投票後、政府のコンサルタント会社に対する支出は約10億ポンド、2017-18年には15億ポンド以上と急速に増加。英国はデロイトにコロナウイルスのテストと接触者追跡調査に関する仕事で1日100万ポンドを支払っていた。

経営コンサルティングは、世界で最も成功している産業の1つ。2021年の世界市場規模は、7,000億ドル近くから9,000億ドル以上と推定されている。マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティング・グループ(BCG)などのエリートコンサルタント会社は、世界のトップ大学の優秀な卒業生を選んでいるとされる。

ピラミッドの頂点にいるマッキンゼーは、その表層的なイメージとは裏腹に、しばしば陰惨なエピソードの中心的存在となってきた。昨年10月に出版された暴露本『When McKinsey Comes to Town(マッキンゼーが街にやってきたとき)』は、New York TimesのWalt BogdanichとMichael Forsytheが、最大手マッキンゼーの数十年にわたる不名誉な功績を痛烈に告発した。Showtimeは、この業界を題材にしたコメディドラマ「House of Lies」を制作している。

マッキンゼーは、2017年、米国でオピオイド関連の過剰摂取で推定4万7,000人が死亡した年に、ジョンソン・エンド・ジョンソンとパデュー・ファーマの両社に、麻薬性鎮痛薬(オピオイド)の新製品の売り上げを「急増」させる方法についてアドバイスした。ある有名なスライドでは、同社がJ&Jに「乱用リスクの高い患者」をターゲットにするようアドバイスしていた。マッキンゼーはまた、サウジアラビアや中国などの権威主義的な政権に助言を与え、南アフリカでは汚職の仲介業者と手を組んだ。

最近、暗号資産取引所FTXの詐欺疑惑が肩を並べるまでは、史上最大の金融詐欺の名をほしいままにしていたエンロン事件にもマッキンゼーの関わりは深い。マッキンゼーは、それまで無名だった石油・ガス会社エンロンを再建し、「ニュー・エコノミー」のサクセスストーリーに変身させた。同社が倒産する前にそのアイデアの実験場とした。マッキンゼーはエンロンを20の異なるプロジェクトで利用したことが知られている。

ハーバード・ビジネス・スクール出身のジェフリー・スキリングは、マッキンゼーのコンサルタントとしてエンロンに携わり、その後ヘッドハンティングされてエンロンに加わるとCEOに就任。会社の枢要をマッキンゼー出身者が占めた。最もセクシーな会社から粉飾決算の使徒へと変貌を遂げる中で、共謀や詐欺、インサイダー取引など19の罪で有罪判決を受けたスキリングは、2019年に12年の刑期を終え釈放された。

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