
産業政策がベンチャーキャピタルから主役の座を奪う
2021年は未曾有のベンチャーキャピタル(VC)ブームだった。だが、最近、産業政策が技術投資の主役の座を奪った。各国政府は自国の技術投資に大金を賄うことを躊躇しなくなる一方、VCは冬籠もりのムードである。
2021年は未曾有のベンチャーキャピタル(VC)ブームだった。だが、最近、産業政策が技術投資の主役の座を奪った。各国政府は自国の技術投資に大金を賄うことを躊躇しなくなる一方、VCは冬籠もりのムードである。
シリコンバレーバンク(SVB)が突然破綻した。ベンチャーキャピタル(VC)産業への影響は極めて大きい。米財務省が預金を保護することが決まり、スタートアップの大量虐殺は免れたものの、SVBはVCの金主であるリミテッドパートナー(LP)として95億ドルを運用し、VCとスタートアップに口座を提供し、スタートアップにはベンチャーデットという高利の負債を与え、VCには金主のカネが投資先に到達する時間差を埋めるためのブリッジファイナンスを提供してきた。

続けて海の藻屑となったシグネチャー銀行は、ステーブルコインを提供するサークルの主要な預金先であり、SVBへの預金が危ぶまれるとドルとペッグされているはずのステーブルコインの価格が暴落。暗号資産で積み上げた損失が財務健全性を蝕んでいることにスポットライトが当たった。
SVBもシグネチャーも大手が相手をしたがらないスタートアップ、クリプト企業に手広い金融サービスを提供してきた。先週、その2つの急所があっけなく崩壊したのだ。
VCはいま2021年の未曾有のブームの逆噴射を喰らっている。カリフォルニア大学(UC)の280億ドルの基金が2018年以降、VC大手セコイア・キャピタルのファンドに8億ドル以上を投資したが、米ビジネス・インサイダーが公文書公開請求で入手したデータによると、これらの投資の半分が投資時の価値を下回っているという。2021年に「ほぼ毎日」新規投資を実行した、VC大手タイガーグローバルの旗艦ファンドは、2001年の設立以来積み上げた莫大なリターンの大半を失ったと言われている。