半導体産業の米中分離は既定路線に

米国は国内に半導体サプライチェーンを囲い込み、中国を孤立させる戦略を展開する。中国も国内で供給網を完結させる方針を強化。グローバリゼーションの終焉は短期的なトレンドではなくなったようだ。

半導体産業の米中分離は既定路線に
2023年2月23日木曜日、米国ワシントンDCのジョージタウン大学外交学院で行われたイベントに出席した米国商務省のジーナ・ライモンド長官。Al Drago/Bloomberg.

米国は国内に半導体サプライチェーンを囲い込み、中国を孤立させる戦略を展開する。中国も国内で供給網を完結させる方針を強化。グローバリゼーションの終焉は短期的なトレンドではなくなったようだ。


米商務省は2月28日、半導体の米国内生産や研究開発などに530億ドルを投じる「CHIPS法」の下で支給する企業補助金の申請について詳細を公表した。商務省は資金を受け取る企業に対し、中国での生産も10年間禁止する。

昨年CHIPS法の下で米議会が承認した530億ドルのうち、390億ドルは米国内の半導体製造施設を新設・拡張する企業の誘致に当てられる。多くは、台湾積体電路製造(TSMC)、サムスン電子、マイクロンテクノロジーが、米国での生産能力を増強するために使われることになる。残りの130億ドルが研究開発(R&D)や労働者の訓練に投じられる。

バイデン政権は、中国の半導体産業を抑え込むことを目指しており、日本やオランダが最近同意した、中国への先端チップ製造装置の輸出禁止にソウルが加わるかどうかは重要な焦点だ。戦略国際問題研究所で人工知能ガバナンス・プロジェクトのディレクターを務めるグレゴリー・アレンは「米国と日本が高度な半導体製造装置の中国への販売を中止し、韓国の産業がそのギャップを埋めるために動き出したらどうなるだろうか」とボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対して語った。「米国と日本が避けたいのは、そういうシナリオだ」。

かつて日本が欧米から食らった「封じ込め戦略」の標的とされた中国は、我が道を行くことを逡巡しない。中国は、チップ生産の自給自足を強化し、米国の動きに対抗するため、1,400億ドル規模の大規模な産業政策を計画していると伝えられている。

2月中旬、中国科学院半導体研究所の研究員、骆军委は中国科学院のホームページに掲載された論考で、中国は、新素材から新技術に至るまで、次世代のチップ製造に関わる特許のポートフォリオを構築すべきであると、主張している。骆军委は、健全な部門横断的調整メカニズムの確立、半導体基礎研究プログラムの復活、半導体基礎研究ネットワークの構築などを提案した。

中国は、欧米日が追随する国家資本主義的な産業育成手法の、近年の先駆者である(かつて日本はこの手法のパイオニアだった)。産業政策における中国の発明は「官製ベンチャーキャピタル」である。「国家集成電路産業投資基金」(通称ビッグファンド)は半導体企業23社に投資し、中国版TSMCを目指す中芯国際集成電路製造(SMIC)や、NAND型フラッシュメモリ製造で中国一の実力を誇る清華紫光集団の子会社、長江存儲科技有限公司(長江メモリ)を一気に成長させた。

中国における「ベンチャーキャピタル産業複合体」の台頭
世界最大のスタートアップ・シーンのひとつが、国家によって再構築されつつある。習近平氏の国家資本主義がより国家主義的になり、資本主義的でなくなるにつれて、縁故が設立間もない企業の成否を左右するようになる。

このようなやり方は、中国がこの分野で急速に力をつけるのに役立ったのは確かだが、汚職の蔓延という暗黒面も生まれた。それでも中国は立ち止まることを知らない。

中国の分離は、ソフトウェアレイヤーでも進んでいる。Googleは12月中旬、命令セットアーキテクチャ「RISC-V」向けAndroidを開発していることを公式に明らかにしたが、その主要な貢献者は、アリババのチップ子会社T-Headと中国科学院である。ファーウェイの独自OSである「HarmonyOS」は1月に3.1世代目を迎え、2022年には、ファーウェイは自社デバイスで3億2000万台のHarmonyOSインストールという大台を記録した。

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