勃興する中国AI勢、エヌビディアの覇権を脅かす

中国のAI半導体企業が、NVIDIAが築いた濠を無力化する策を打ち、波紋が広がっている。NVIDIAの帝国は、中国から崩壊していくのだろうか?

勃興する中国AI勢、エヌビディアの覇権を脅かす
2023年12月6日水曜日、シンガポールで開催されたラウンドテーブルで発言するエヌビディアの共同創業者兼最高経営責任者ジェンスン・フアン。ファーウェイは、最高のAIチップを製造する競争において、エヌビディアにとって「非常に手ごわい」競争相手の1つであるとフアンは語った。写真家 Lionel Ng/Bloomberg

中国のAI半導体企業が、NVIDIAが築いた濠を無力化する策を打ち、波紋が広がっている。NVIDIAの帝国は、中国から崩壊していくのだろうか?


中国の人工知能(AI)用半導体の摩爾線程智能科技(Moore Threads)は19日、NVIDIAのCUDA(Compute Unified Device Architecture)のために書かれたソースコードの移植を容易にすると約束されたGPU「MTT S4000」を発表した。ユーザーは独自の「MUSIFY」開発ツールを用いることで、追加の費用をかけることなく、CUDAコードを同社のMUSAプラットフォーム上で走らせることができる。摩爾線程は、これにより既に存在するエコシステムを効果的に利用できると主張した。

CUDAは、NVIDIAによって開発されたコンピューティングプラットフォーム。グラフィックス処理ユニット(GPU)を使用して、高度な計算作業を高速に実行するために設計されており、現代のAIの重要な基盤となっている。

米国はNVIDIAのAI半導体の輸出の制限を厳格化している。中国側は、第三国を経由した輸入によって禁輸措置の影響を軽減しているとも言われる。それと同時に、中国政府は海外のチップ企業への依存を断ち切るため、国内企業の競争を促していると考えられる。

同社が発表した1,000個のGPUが搭載されたシステムは、すでに研究機関に採用されているという。彼らは、700億パラメータを持つAIモデルの訓練に33日かかると述べており、さらに大きな1,300億パラメータのモデルであれば、訓練には56日かかるとした。

摩爾線程はNVIDIAの元グローバルバイスプレジデントであるZhang Jianzhong(张建中)が2020年10月に設立したGPU企業だ。

NVIDIAのクビを狙うのは、摩爾線程だけではない。「中国版TSMC」に当たる中芯国際集成電路製造(SMIC)の7ナノメートル(nm)技術を採用したファーウェイのAI半導体である「Ascend 910B(中国名:昇騰910B)」もまた、エヌビディアの強敵となりうるだろう。この半導体は中国の複数の大手テクノロジー企業から注文を受けている。例えば、中国の検索大手である百度は、8月にAI半導体に対する対中輸出規制が強化されることを予測し、ファーウェイからAscend 910Bを1,600個注文した、とロイターが報じた。注文の60%以上は10月までに納品されたという。半導体業界コンサルのSemianalyticsは、Ascend 910Bの性能は「A100」と「H100」の中間に位置する、とみている。

エヌビディアの対中禁輸は中国の台頭を早めた
禁輸措置のさなか、ファーウェイはエヌビディアのAI半導体に匹敵する製品を作ったようだ。まだ、GPUへの依存を断ち切るには至っていないが、国策企業が、米国企業のテリトリーを奪うのは時間の問題かもしれない。

中国のAIチップ開発企業は百花繚乱だ。阿里巴巴(アリババ)、百度(バイドゥ)、騰訊(テンセント)の大手企業のほか、中科寒武紀科技(カンブリコン)、長沙景嘉微電子、海光信息、武漢芯動科技(InnoSilicon)、燧原科技、瀚博半導体(Vastai Technologies)、沐曦集成電路、上海壁仞科技(BIRENTECH)、上海天数智芯半導体の新興企業が雨後の筍のように現れ、「NVIDIAのいない世界」の覇権を争っている。

米国の対中強硬策は中国の「独立」を促すだけか?

米国商務省産業安全保障局(BIS)が17日に発表した中国向け半導体関連の輸出管理規則の改定版は、人工知能(AI)向けに使われる先端半導体の輸出をより厳しく制限する内容が盛り込まれた。最近の米の半導体規制強化を受け、中国のAIチップメーカーは、最先端半導体の開発に不可欠なEDA(Electronic Design Automation:集積回路や電子機器などの設計作業自動化ツール)を海外から輸入することができなくなる。

Advanced Computing and Semiconductor Manufacturing Items Controls to PRC

これもまた中国がEDAツールの国産化を急ぐ結果を生むだけではないだろうか。

中華GPU、雨後の筍
2000年代半ばの競合他社の凋落以降、PC用ディスクリートGPUの分野では、AMDとNVIDIAに対抗できる企業は存在しなかった。しかし、データセンター、マイニング、ゲーム用GPUの台頭に伴い、2強に対抗する数多くのライバルが中国から現れている。
米国の輸出規制が「中国版NVIDIA」を育てている?
米半導体大手NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアンは米国の半導体輸出規制が、中国の地場半導体企業に利していると訴えた。中国では、莫大な補助金と海外投資マネーによって、NVIDIAの対抗馬たちが育っている。

参考文献

AMD, “porting-cuda-to-hip.pdf

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新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

世界が繁栄するためには、船が港に到着しなければならない。マラッカ海峡やパナマ運河のような狭い航路を通過するとき、船舶は最も脆弱になる。そのため、スエズ運河への唯一の南側航路である紅海で最近急増している船舶への攻撃は、世界貿易にとって重大な脅威となっている。イランに支援されたイエメンの過激派フーシ派は、表向きはパレスチナ人を支援するために、35カ国以上につながる船舶に向けて100機以上の無人機やミサイルを発射した。彼らのキャンペーンは、黒海から南シナ海まですでに危険にさらされている航行の自由の原則に対する冒涜である。アメリカとその同盟国は、中東での紛争をエスカレートさせることなく、この問題にしっかりと対処しなければならない。 世界のコンテナ輸送量の20%、海上貿易の10%、海上ガスと石油の8~10%が紅海とスエズルートを通過している。数週間の騒乱の後、世界の5大コンテナ船会社のうち4社が紅海とスエズ航路の航海を停止し、BPは石油の出荷を一時停止した。十分な供給があるため、エネルギー価格への影響は軽微である。しかし、コンテナ会社の株価は、投資家が輸送能力の縮小を予想している

By エコノミスト(英国)
新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

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1960年代以来、世界中のエンジニアが回転デトネーションエンジン(RDE)と呼ばれる新しいタイプのジェット機を研究してきたが、実験段階を超えることはなかった。世界最大のジェットエンジン製造会社のひとつであるジー・エアロスペースは最近、実用版を開発中であると発表した。今年初め、米国の国防高等研究計画局は、同じく大手航空宇宙グループであるRTX傘下のレイセオンに対し、ガンビットと呼ばれるRDEを開発するために2900万ドルの契約を結んだ。 両エンジンはミサイルの推進に使用され、ロケットや既存のジェットエンジンなど、現在の推進システムの航続距離や速度の限界を克服する。しかし、もし両社が実用化に成功すれば、超音速飛行を復活させる可能性も含め、RDEは航空分野でより幅広い役割を果たすことになるかもしれない。 中央フロリダ大学の先端航空宇宙エンジンの専門家であるカリーム・アーメッドは、RDEとは「火を制御された爆発に置き換える」ものだと説明する。専門用語で言えば、ジェットエンジンは酸素と燃料の燃焼に依存しており、これは科学者が消炎と呼ぶ亜音速の反応だからだ。それに比べてデトネーシ

By エコノミスト(英国)
ビッグテックと地政学がインターネットを作り変える[英エコノミスト]

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今月初め、イギリス、エストニア、フィンランドの海軍がバルト海で合同演習を行った際、その目的は戦闘技術を磨くことではなかった。その代わり、海底のガスやデータのパイプラインを妨害行為から守るための訓練が行われた。今回の訓練は、10月に同海域の海底ケーブルが破損した事件を受けたものだ。フィンランド大統領のサウリ・ニーニストは、このいたずらの原因とされた中国船が海底にいかりを引きずった事故について、「意図的なのか、それとも極めて稚拙な技術の結果なのか」と疑問を呈した。 海底ケーブルはかつて、インターネットの退屈な配管と見なされていた。現在、アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフトといったデータ経済の巨人たちは、中国と米国の緊張が世界のデジタルインフラを分断する危険性をはらんでいるにもかかわらず、データの流れをよりコントロールすることを主張している。その結果、海底ケーブルは貴重な経済的・戦略的資産へと変貌を遂げようとしている。 海底データパイプは、大陸間インターネットトラフィックのほぼ99%を運んでいる。調査会社TeleGeographyによると、現在550本の海底ケーブルが活動

By エコノミスト(英国)