TSMCはなぜ強いのか? Axion Podcast #58

世界的な半導体不足の中で、ピュアプレイファウンドリのTSMCは世界で必要不可欠な存在となった。その強さの理由に迫る。

TSMCはなぜ強いのか? Axion Podcast #58

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参考記事

TSMC:世界に必要不可欠となった最先端ファウンドリ
TSMCは1987年に設立され、台湾の新竹サイエンスパークに本社を置く、顧客の製品を製造することに特化したピュアプレイファウンドリーのビジネスモデルを開拓。現在、世界が欠くことのできない半導体業界のピースとなった。
半導体が足りない|2月2週の主要ニュース
自動車、エレクトロニクス産業で減産
SMICが米制裁以降に見据えるシナリオ
短期的には米国の制裁や技術の遅れなど、いくつかの問題を抱えている。しかし、長期的に見れば、他のサプライヤーとの連携を強化していけば、今後数年の間にTSMCとサムスン以外の他のトッププレーヤーを凌駕することができるだろう。
Qualcomm: 半導体需要の急増、下半期には一部のセクターで収束
Qualcommの次期最高経営責任者(CEO)Cristiano Amonは、半導体需要の急増は、今年の後半には一部のセクターでは収束するだろう、と述べた。

不足

  • 半導体が足りない、設備も足りない、車載半導体等の不足は続きそう

茨城県つくば市に工場、200億円

  • 日経新聞, TSMCがつくば市に拠点。TSMCは年内に全額出資子会社を設立する。投資額は186億円になる見込み。
  • NHK, TSMC 茨城 つくばに研究開発拠点設立へ
  • 日本政府は今年度の第3次補正予算で先端半導体の製造技術の開発に向けた基金を900億円積み増していて、TSMC側から要望があれば、この基金を活用して支援する可能性もある。

不公平な優位性

  • TSMCの5nmプロセスは、M1チップが製造能力全体の25%、それ以外のほとんどをiPhone12シリーズ用のA14 Bionicが占めている。
  • TSMCは、3nmノードの先を見据えており、早期の2nm研究が始まったと宣言している。
  • Google会長のジョン・ヘネシーとGoogle Distinguished Engineerのデイビッド・パターソンらはチップの設計は「原子の限界」に直面しており、ドメイン固有アーキテクチャへの転換を訴えているが、TSMC等のファウンドリは微細化が今後も微細化が続くと見込んでいる。
  • 製造者側はMoore, More

ピュアファウンドリが成功した3つの要因

  • 以前にもウェハファブのサービスを提供する会社はあった。彼らは通常、ファブの稼働率が低い不景気の時にサービスを提供していた。
  • しかし、市場が好転するとすぐに顧客の製品をウェハファブから追い出していた。その理由は、自社のチップを生産した方がはるかに多くの利益を上げることができたからだ。
  • ファウンドリサービスを提供するファブ企業の中には、顧客の設計をコピーして、それを自社の完成した集積回路(IC)として提供するという不名誉な評判を得ていた企業もあった。このようなパートナーとの信頼関係の欠如とビジネス構築の不可能性が、TSMCの地震の第一の要因となった。
  • 第2の要因は、ウェハ製造設備のコスト上昇であった。VLSIresearchはこの高騰したコストを発表していたが、70年代には1,000万ドル以下だったが、TSMCの創業時には1億ドルを以下だった
  • 最先端のファブが1億ドルという価格は、ベンチャーキャピタルの資金調達の手の届かないところにあった。大手半導体企業の中には、現在垂直統合型デバイスメーカー(IDM)と呼ばれている企業であり続けることに不安を感じていた企業もあったが、1992年のSEMI ISS EuropeのプレゼンテーションでのSiemens社のスライドはそれを示している。
  • 第3の要因は、電子設計自動化ツール(EDA)ツールの開発でした。これは、デザインとファブリケーションを分離したビッグバンである。EDAは、チップ設計者が完成したウェハを製造するという煩雑なプロセスから解放されることで、これらすべてを実現した。同時に、80年代半ばまでにファブレス半導体のビジネスモデルを可能にしました。

創業者

  • モリス・チャン(Morris Chang)、本名張忠謀、は、中国生まれのエンジニア、起業家、慈善家であり、コンピュータチップの大手メーカーであるTSMCを設立した人物である。
  • 中国で生まれたチャンは、中国内戦中に香港に渡り、その後、1949年、チャンはハーバード大学に通うために渡米。マサチューセッツ工科大学(MIT)に編入し、機械工学の学士号(1952年)と修士号(1953年)を取得した。1958年にテキサスインスツルメンツ社のエンジニアリング マネージャとして就職した。
  • 彼の雇用主であるテキサス・インスツルメンツ社は、電気工学の博士号を取得するためにチャンをスタンフォード大学に派遣し、1964年に博士号を取得している。
  • テキサス・インスツルメンツ社での25年間で管理職として着実に昇進し、最終的には同社のグローバル半導体事業を担当するシニアバイスプレジデントに就任した。1984年にテキサスインスツルメンツ社を退社し、General Instrument Corporationの社長に就任したが、その1年後に台湾政府から産業技術研究所の社長に抜擢された。
  • 台湾政府から半導体産業の発展を託されたチャンは、コスト削減のために外注化が進む電子機器メーカーのニーズに応えるために、チップなどの電子機器の設計を請け負うファウンドリを設立。台湾政府の支援を得てTSMCを設立し、初代CEOに就任した。
  • チャンは、創業当初の87年頃、絶頂にあった日本のハイテク企業に出資を頼んだが、すべて断られた。33年経った今、それらの日本企業は、TSMCの10分の1以下の価値しかない。潰れた会社もある。

歴史

  • 1985年、モリス・チャンは台湾政府に採用された。
  • 1986年、モリスは新竹の非営利研究機関であるITRIの会長兼社長に就任し、ITRIのキャンパス内にTSMC初の半導体ウェハー製造工場を設立した。1987年、台湾政府(21%)、オランダの多国籍電子機器大手フィリップス(28%)、その他の個人投資家との合弁会社としてTSMC が正式に設立された。
  • 初期の利益を犠牲にして市場シェアを獲得するという考え方を提唱した。この価格設定モデルは、現在でもファブレス半導体ビジネスモデルの基礎となっている。
  • 10年後には、TSMCは競合に追いつき、ファブレス半導体産業が開花し、半導体設計と製造が分離する新時代が到来した。今日、TSMCは、300億ドルのファウンドリ市場セグメントの49%のシェアを持つ紛れもないリーダーとなっている。TSMCから大きく離され、UMC、GlobalFoundries、SMICが追走する

Eye Catch Photo by TSMC.

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