ByteDanceがゲーム事業を拡大する方法
TikTokの親会社であるByteDanceは、ここ数年、広告以外の収入源を多様化し、数億人のユーザーを収益化する方法を模索してきた。その1つとして、中国のインターネット経済において歴史的に利益をもたらしてきたゲームをターゲットにしている。
要点
TikTokの親会社であるByteDanceは、ここ数年、広告以外の収入源を多様化し、数億人のユーザーを収益化する方法を模索してきた。その1つとして、中国のインターネット経済において歴史的に利益をもたらしてきたゲームをターゲットにしている。
2020年11月、TikTokの親会社ByteDanceは、パブリッシャー部門であるPixmainの設立と、ゲームプラットフォームであるDanjuan Gamesの立ち上げを発表した。
このパブリッシャー部門では現在、中国市場向けに5つのモバイルゲームを制作中だ。そのうち3つはPCでも発売され、そのうちの1つ、フィンランドのデベロッパーDirelightによる「Grimvalor」はNintendo Switchでもリリースされる予定だ。
さらに2021年3月、Pixmainを統括するNuverseは、上海を拠点とするデベロッパー兼パブリッシャーのMoonton Technologyを買収した。ロイターによると、今回の買収によりMoonton社の企業価値は40億ドルとなった。Nuverse CEOのYuan Jingは、内部コミュニケーションにおいて、スタジオは引き続き独立して運営されることを明らかにした。
元テンセント社員が設立したMoontonは、iOSとAndroidの東南アジアでは多人数参加型オンラインバトルアリーナ(MOBA)ゲーム「Mobile Legends」で有名。Moonton Technologyは、2014年に作成されたMOBA「Mobile Legends」で知られている。東南アジアで人気のMobile Legendsは、9000万以上のMAU(月間アクティブユーザー)と約10億ドルの収益を達成している。
2016年にリリースされた「Bang Bang」は「League of Legends」のクローンであると主張するRiot Gamesの訴訟の対象となった。2018年にRiotが勝訴し、289万ドルを獲得した(RiotはTencentが93%の株式を持つ)。
ByteDanceはまた、過去にはゲームスタジオのOhayoo、Nuverse、PixDanceを買収している。
市場規模
市場調査会社Newzooによると、中国は世界最大のゲーム市場であり、2020年には440億ドルの収益が見込まれている。米国は413億2,000万ドルで後塵を拝している。両者で世界市場の49%に達する。
しかし、中国のゲーム市場の競争は熾烈だ。巨人であるTencentとNetEaseが長い間支配してきたが、MihoyoやLilithのような小さなプレーヤーが躍進している。市場調査会社のAnalysysによると、2019年の中国のゲーム市場では、Tencentが半分以上を占め、NetEaseが約16%、37 Interactiveが約10%を占めており、小規模なライバルたちには余裕がない。
ただ、これは中国国内で完結しない競争である。地域でみると、アジア太平洋地域が843億ドルで世界市場の48%を占めている。昨年、米政府から圧力を受けたBytedanceはアジア太平洋地域への投資の比重を高めているが、そこには世界最大のゲーム市場がある。
人材の争奪戦
近年、ByteDanceは、中国で最も著名な3つのハイテク企業の頭文字をとったBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)の元社員を大量に採用している。変化の激しい中国のテクノロジー業界では、ヘッドハンティングや転職はよくあることだが、ByteDanceは手厚い給与を支給することで知られており、多くの技術者は上場前のByteDanceでストックオプションを受け取れることに惹かれているようだ。
また、アリババやテンセントは設立から20年以上が経過しており、キャリアアップの余地が限られているため、野心的な従業員は長い間、閉塞感を感じているかもしれない。それに比べてByteDanceは設立から9年しか経っておらず、急成長の段階にある。
ByteDanceは急速な雇用を行っていることで知られている。例えば、同社はオンライン教育部門で約13,000人の従業員を採用する計画だ、とSCMPが2月末に報じた。中国の10以上の都市で、教育、開発、製品設計、マーケティングなどのさまざまな職種を募集している。
インドがTikTokのアプリを禁止して以降、シンガポールは同社のハブとして役割を強めたが、リサーチ会社GlobalDataによると、ByteDanceはシンガポールで過去6ヶ月間、338の求人を募集している。
ゲーム部門も例外ではない。同社のゲーム部門の従業員数は、昨年のわずか1,000人から現在は3,000人近くに増えていると報じられている。これらの従業員は、北京、上海、杭州、深圳など、中国の主要なハイテク拠点に散らばっており、ByteDance傘下のさまざまなゲームスタジオで働いている。
中国第3位のゲーム会社である37 Interactiveは、1月時点で約4,000人のスタッフを擁していることを鑑みると、ByteDanceの3,000人規模のチームはそれに匹敵するレベルの陣容である。
「アプリ工場」はゲームに応用可能か?
ByteDanceは大量のアプリを市場投入する戦略から「アプリ工場」と呼ばれてきた。主力は最初のヒットであるニュースアプリ今日頭条(Toutiao)とTikTokの中国版の抖音(Douyin)だが、他にも無数のアプリがあり、しかも継続的に新しいアプリを投入している。
新製品はレビューの評価を待って、プロトタイプに近い形で市場投入することが多い。通常、既存のモジュールを再利用して開発コストを削減する。ByteDanceの製品戦略は、決められた戦略と方向性に沿って複数の製品を開発し、どの製品が最も効果的かを評価してより多くのリソースを確保するというものだ。試行錯誤のためのコストは、量産性を考慮して最小限に抑えられている。
Toutiaoアプリの大量のユーザーベースに基づいて、1つの機能がToutiaoからスピンオフし、成熟すると別のモバイルアプリになります。このようにByteDanceは、Toutiaoの成功を受けて、Dongchedi、Xigua Video、Wukongwenda(2018年にWeitoutiaoに統合)などのの他のモバイルアプリを開発した。
ByteDanceのゲーム進出における最も重要な問いは、この「アプリ工場」戦略がゲーム業界でも応用可能かどうかだ。
ByteDanceは、他のハイテク企業から人材を探し出すことに加えて、中小企業を飲み込んで従業員を獲得する手法を重視している。公開情報によると、2018年以降、ByteDanceは少なくとも11社のゲーム会社に投資しており、そのうち6社は完全な買収だった。買収した資産や人材はその後、ByteDanceのゲームスタジオに組み込まれた。中国版TikTokであるDouyinの立ち上げに貢献したプロダクトマネージャーのKelly Zhangも、彼女の写真共有スタートアップがByteDanceに買収された後に入社した。
多くのゲーム会社がそうであるように、ByteDanceの収益化スキームは、サードパーティタイトルの配信とオリジナル作品の制作という2つの柱で構成されている。この戦略により、ゲーム部門は、自社の作品がキャッシュカウになることに賭けながら、ある程度の収益を得ることができる。カジュアルゲームは広告を表示するのに適しており、既存の広告事業との相性がいい。よりリッチな体験を提供するゲームでは、ユーザーのロイヤリティに依存し、アプリ内課金で収益を上げるのが自然な方法だ。
ByteDanceがライセンスを取得したカジュアルゲームの中には、カーレースゲームの「Drift Race」、音楽ゲームの「Yinyue Qiuqiu」、パズルゲームの「Brain Out」など、これまでに中国のiOS無料ゲームのトップ10にランクインしたものがある。
これらはまだ大金を稼いでいるわけではないが、ByteDanceのトラフィック戦略の有効性を証明している。ByteDanceは2019年、アプリファミリー全体で15億人の月間ユーザーがいると発表した(アプリ間でユーザーが重複することもある)。ByteDanceがゲームをマーケティングする方法のひとつは、ユーザーのコンテンツフィードに広告を挿入することだ。
WeChatや中国の多くの人気アプリと同様に、DouyinとToutiaoは、自身のプラットフォーム内でサードパーティの「ミニアプリ」をサポートしている。ユーザーは、WeChatと同じようにDouyinでカジュアルゲームをプレイすることができる。
月間数億人のユーザーを抱えるByteDanceは、すでに人々の嗜好や行動を十分に把握しているため、どのようなゲームを推奨すべきかを把握しているとされている。理論的には、人々が見たり反応したりすればするほど、その予測はより正確になる。
※参考文献はリンクで示した。
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