中国当局、オンライン融資の規制を強化 Ant Groupの貸金業に打撃

中国の規制当局は先週末、貸金の仲介を行うオンライン貸金プラットフォームが、ローンの30%の資金提供をすることを規定する新しい通達を発布した。Ant Groupに大きな打撃を与えることになる。

中国当局、オンライン融資の規制を強化  Ant Groupの貸金業に打撃

中国の規制当局は先週末、貸金の仲介を行うオンライン貸金プラットフォームが、ローンの30%の資金提供をすることを規定する新しい通達を発布した。Ant Groupに大きな打撃を与えることになる。

中国銀行保険監督管理委員会の通達は、商業銀行と提携先金融機関が共同で融資を行う場合の寄与率(1件の融資における提携先の寄与率)が30%を下回らないことを規定した。提携先金融機関には、Ant Groupのようなインターネット貸金業者が含まれる。

AntのJiebei(借唄)は、中国で最も広く利用されている消費者金融商品となっているが、2020年6月30日時点で、Antの未処理の消費者ローンの1.7兆元に達し、中国の消費者貸出市場のおよそ15%を占めていた。

Antは独自の信用スコアと、その他の利用者のデータを分析することによって独自の与信方法を確立していた。最初は、Antが融資をし、次にそれを証券化して金融機関に販売するスキームを採用したが、規制当局が米国のサブプライムローン問題との類似性を指摘し、自己資本比率の強化を命じていた。

Antはこれに対し、銀行に融資を実行させ、Antは仲介者として技術サービス料を徴収するスキームを構築することで、自己資本比率の議論を迂回した。融資残高の98%は他の金融機関が保有しており、Antは2%を保有するのみの、非常にアセットライトなビジネスモデルだ。

これもまた、当局は問題視していたが、馬雲(ジャック・マー)が10月下旬の講演で、「バーゼル規制(自己資本比率に関する国際基準)は『老人クラブ』によって作られたものであり、銀行は『質屋』のメンタリティを持っている」と発言し、その後、当局がAnt GroupのIPOを停止していた。

Antは新しい基準の下、融資残高の保有を現状の2%から、30%まで引き上げないといけなくなった。その他、新規制は、集中度指標、限界指標の3つの定量指標を明確化した。

新は、さらにインターネット貸金業者がリスク管理を主導し、リスクの引受の外部委託を行うことを禁止することも盛り込んだ。「商業銀行がリスク管理の主要責任を強化し、インターネット融資のリスク管理を独自に実施し、融資のリスク評価とリスク管理に大きな影響を与えるリスク管理のつながりを独自に完成させ、重要なつながりの外部化を厳格に禁止することを要求している」と記述している。

これはAnt Groupが消費者の行動データから、即時的に融資やリボ払いの提供の有無を決めるアルゴリズムを実行することと、自身は融資側には回らず、技術サービス料を徴収する仲介者としての地位を築いて、リスクの外部化を行っていることを念頭に入れているとみられる。

「本通達は、中央政府のフィンテックとプラット フォーム経済の発展を規制する上での関連要件を完全に履行し、金融イノベーションは慎重な監督の下で行われなければならないという大前提を堅持し、法律に基づいて監督を強化し、 金融リスクを効果的に防止するとともに、ロングテールの顧客や中小企業の金融サービスの継続性を維持するという原則を完全に反映している」と通達は結んでいる。

Ant Groupについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照ください

アントグループ (蚂蚁科技集団) の企業分析
Ant Group(螞蟻科技集團股份有限公司)は、世界の金融の最先端を走るフィンテック企業。欧米の金融に着想を得て開始された製品群は、いまではデータ活用に優れ、現代的なクラウド技術に裏打ちされた、ユニークなポジションを獲得している。
アントグループの消費者金融業はバーゼル規制に屈するか
データドリブンな手法で金融を変革するアントグループの手腕は素晴らしい。ただし、貸金業においては、それはいまの所、リスクを他者に付け替えることに依存している。
外灘金融峰会でのジャック・マー講演の全文書き起こし (抄訳)
これはアリババ創業者のジャック・マー(馬雲)が上海で開かれた外灘金融峰会で行った講演の抄訳である。サミットのテーマは「危機と機会:新しい風景の中の新しい金融と新しい経済」で、10月24日、マー氏は、国連デジタル協力に関するハイレベルパネルの共同議長であり、国連持続可能な開発目標の提唱者としてスピーチを行った。

700円/月の支援

Axionは吉田が2年無給で、1年が高校生アルバイトの賃金で進めている「慈善活動」です。有料購読型アプリへと成長するプランがあります。コーヒー代のご支援をお願いします。個人で投資を検討の方はTwitter(@taxiyoshida)までご連絡ください。

デジタル経済メディアAxionを支援しよう
Axionはテクノロジー×経済の最先端情報を提供する次世代メディアです。経験豊富なプロによる徹底的な調査と分析によって信頼度の高い情報を提供しています。投資家、金融業界人、スタートアップ関係者、テクノロジー企業にお勤めの方、政策立案者が主要読者。運営の持続可能性を担保するため支援を募っています。
Takushi Yoshida is creating writing/journalism | Patreon
Patreon is a membership platform that makes it easy for artists and creators to get paid. Join over 200,000 creators earning salaries from over 6 million monthly patrons.

投げ銭

投げ銭はこちらから。金額を入力してお好きな額をサポートしてください。

Pay Yoshida Takushi using PayPal.Me
Go to paypal.me/axionyoshi and type in the amount. Since it’s PayPal, it’s easy and secure. Don’t have a PayPal account? No worries.

Special thanks to supporters !

Shogo Otani, 林祐輔, 鈴木卓也, Mayumi Nakamura, Kinoco, Masatoshi Yokota, Yohei Onishi, Tomochika Hara, 秋元 善次, Satoshi Takeda, Ken Manabe, Yasuhiro Hatabe, 4383, lostworld, ogawaa1218, txpyr12, shimon8470, tokyo_h, kkawakami, nakamatchy, wslash, TS, ikebukurou, 太郎, bantou, ysh_tmk, katsuyukitanaka.

Read more

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国人は自動車が大好きだ。バッテリーで走らない限りは。ピュー・リサーチ・センターが7月に発表した世論調査によると、電気自動車(EV)の購入を検討する米国人は5分の2以下だった。充電網が絶えず拡大し、選べるEVの車種がますます増えているにもかかわらず、このシェアは前年をわずかに下回っている。 この言葉は、相対的な無策に裏打ちされている。2023年第3四半期には、バッテリー電気自動車(BEV)は全自動車販売台数の8%を占めていた。今年これまでに米国で販売されたEV(ハイブリッド車を除く)は100万台に満たず、自動車大国でない欧州の半分強である(図表参照)。中国のドライバーはその4倍近くを購入している。

By エコノミスト(英国)
労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

2010年代半ばは労働者にとって最悪の時代だったという点では、ほぼ誰もが同意している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学者であるデイヴィッド・グレーバーは、「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)」という言葉を作り、無目的な仕事が蔓延していると主張した。2007年から2009年にかけての世界金融危機からの回復には時間がかかり、豊かな国々で構成されるOECDクラブでは、労働人口の約7%が完全に仕事を失っていた。賃金の伸びは弱く、所得格差はとどまるところを知らない。 状況はどう変わったか。富裕国の世界では今、労働者は黄金時代を迎えている。社会が高齢化するにつれて、労働はより希少になり、より良い報酬が得られるようになっている。政府は大きな支出を行い、経済を活性化させ、賃上げ要求を後押ししている。一方、人工知能(AI)は労働者、特に熟練度の低い労働者の生産性を向上させており、これも賃金上昇につながる可能性がある。例えば、労働力が不足しているところでは、先端技術の利用は賃金を上昇させる可能性が高い。その結果、労働市場の仕組みが一変する。 その理由を理解するために、暗

By エコノミスト(英国)
中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

脳腫瘍で余命いくばくもないトゥー・チャンワンは、最後の言葉を残した。その中国の気象学者は、気候が温暖化していることに気づいていた。1961年、彼は共産党の機関紙『人民日報』で、人類の生命を維持するための条件が変化する可能性があると警告した。 しかし彼は、温暖化は太陽活動のサイクルの一部であり、いつかは逆転するだろうと考えていた。トゥーは、化石燃料の燃焼が大気中に炭素を排出し、気候変動を引き起こしているとは考えなかった。彼の論文の数ページ前の『人民日報』のその号には、ニヤリと笑う炭鉱労働者の写真が掲載されていた。中国は欧米に経済的に追いつくため、工業化を急いでいた。 今日、中国は工業大国であり、世界の製造業の4分の1以上を擁する。しかし、その進歩の代償として排出量が増加している。過去30年間、中国はどの国よりも多くの二酸化炭素を大気中に排出してきた(図表1参照)。調査会社のロディウム・グループによれば、中国は毎年世界の温室効果ガスの4分の1以上を排出している。これは、2位の米国の約2倍である(ただし、一人当たりで見ると米国の方がまだひどい)。

By エコノミスト(英国)