中国からインドに投資マネーが流れる

中国からインドに投資マネーの関心が移り始めている。中国のテクノロジー企業規制と海外・香港上場への厳しい要件は、出口戦略の選択肢を狭めた。他方、インドは国内市場での上場で流動化が可能だと証明され、序列が上がっている。

中国からインドに投資マネーが流れる

要点

中国からインドに投資マネーの関心が移り始めている。中国のテクノロジー企業規制と海外・香港上場への厳しい要件は、出口戦略の選択肢を狭めた。他方、インドは国内市場での上場で流動化が可能だと証明され、序列が上がっている。


大型ファンドであるシンガポールの政府系ファンド・テマセクは、中国政府規制による取り締まりが行われる中、アリババやDiDi Grobal(滴滴出行)、オンライン教育事業者など、中国のテクノロジー企業のADR(米国預託証券)を売却した。

テマセクは、9月30日に終了した3ヵ月間の13F申告書によると、電子商取引大手のアリババの持ち分の16%、DiDiの持ち分の11%を削減した。また、中国の検索エンジン事業者である百度や教育テック企業のTAL Education Group、New Oriental Education & Technology Groupおよび求人サービスを提供するKanzhunからも撤退した。

このような削減は、政府がビジネスの見通しを弱めるようなルールを導入した後、かつて好景気に沸いた中国のインターネット市場が投資可能な状態にあるかどうかを世界の投資家が検討していることを示唆している。

3月時点で3,810億シンガポールドル(32兆1,380億円)の資産を運用しているテマセクは、9月にブルームバーグに対し、規制強化の影響についてより確実な情報を求めているため、中国のテクノロジー企業へのさらなる投資を控えていると述べた。

最近の中国の規制強化で最も深手を負った投資家の1つであるソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)のCFOであるナブニート・ゴビルは「規制環境に落ち着いてもらわなければならない。最近の出来事を見ると、教育テックであれ、DiDiであれ、消費者データに関して微妙な問題がある。従って今のところ、われわれはこの種の企業の一部を避けている」と語っている。

中国企業の出口戦略が限定的になっている

中国のテクノロジーセクターの不確実性はますます深まっている。

中国国家インターネット情報弁公室(CAC)が11月14日に発表した規則案は、香港に上場している企業の株式売却が国家安全保障に関わる可能性がある場合には、サイバーセキュリティの審査を受ける必要があるとしている。

今回の上場審査は、中国のテクノロジー企業による香港でのIPOに冷や水を浴びせるようなもので、香港での上場を期待していた企業もあった。米国の規制当局は、新規上場企業に対する監視を強化しており、監査法人が米国の監視下で帳簿を開くことを拒否した銘柄の上場廃止計画を進めている。この取り締まりにより、2024年以降、約2兆ドル相当の中国企業のADRが米国の取引所から排除される可能性がある。

中国政府は米国や香港市場の代替として、中国のNASDAQとされる上海科創板と、更に新設した北京証券取引所を据えようとしているだろう。

あた、中国政府の対応が注視されているのは、変動持分事業体(Variable Interest Entities:VIE)という、米上場の肝となる複雑な事業体だ。VIEはケイマン諸島のようなカリブ海のタックスヘイブンに作られるが、香港経由でつながった本土の事業体との契約により、支配関係を構築している。

アリババのような米株式市場に上場した中国企業はもれなくVIEを採用している。滴滴出行(DiDi Global)の強行上場とその後のサイバーセキュリティ審査、さらに規制強化が絡まって、このVIEの海外上場の可能性はゼロに近づいている。つまり、投資家が中国企業に投資した場合、エグジットの方法が不透明になりつつあるのだ。

インドの台頭と不安要素

フィナンシャルタイムズが引用したAsian Venture Capital Journalのデータによると、9月までの四半期に中国のハイテク企業に投資された1ドルに対して、インドには1.5ドルが投資された。ベンチマークであるインドSENSEX指数は今年25%上昇し、アジアの大経済圏の中で最も高いパフォーマンスを示しているが、中国の上海総合指数は同時期に横ばいとなっている。

昨年、中国当局がアントのIPOを中止したことで、独占的な行動の抑制からデータプライバシーや富の分配まで、あらゆることを目的とした規制の変更や調査が次々と行われた。権力者であるジャック・マーをはじめ、テンセントやショッピングプラットフォームのMeituanなど、中国国内の有力企業がすべて巻き込まれました。

締め付けは緩やかになったとはいえ、多くの中国企業には依然として規制の脅威がつきまとっている。例えば、アントグループは頓挫したIPOを復活させていない。TikTokの親会社バイトダンスは長い間上場を先送りしている。サイバーセキュリティ審査にさらされたDiDIの運命もまた不透明だ。

中国本土では、テクノロジー関連の新興企業が上場して調達した資金は、7年ぶりに減少する見込みだ。一方、インドでは、テクノロジー関連の上場企業が2021年に26億ドルを調達していますが、これは昨年の合計額と比較して550%の急増となる。

プライベート資本市場での取引件数では、中国が依然としてトップであり、その差は自国の技術部門をいち早く育成したことを反映しているが、今年はインドの成長率が中国を上回っている。AVCJによると、9月末までの四半期にインドで行われたミッドステージのディールは昨年より93%増加している。これに対し、中国は3%の減少だった。

インドのテクノロジー企業に対する投資家の熱狂がいつまで続くかは不明だ。インドの好況なハイテク市場は、株式取得競争によって評価額が上昇し、企業や個人投資家が修正に弱くなっているため、すでに過熱しているのではないかという懸念がある。

インドのIPOとユニコーンが史上空前のブーム
インドは未曾有のIPOバブルを享受している。未上場企業への投資はすでに日本の数倍の規模にあり、更に急増するトレンドにある。インドは世界中のマネーを魅了しているのだ。

実際、大量の損失を垂れ流し収益規模を縮小しながら上場した決済企業Paytmの株価は23日時点で売り出し時の価格から37%下落しており、不透明感が漂いつつある。同社の株式公開の需要は供給を1.9倍上回っていた。先に上場したZomatoの38倍やNykaaの80倍以上には遠く及ばなかったが、十分なものだった。しかし、蓋を開けてみると、誰もが掴んだ株を売り抜けようとする事態にに陥った。

多くの投資家は、まだリターンを得ていない。Cars24は、2020年3月期に投資資本利益率マイナス(ROI)53%を記録したことが、シンガポールの会計・企業規制庁から入手可能な最新の財務詳細で明らかになっている。

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