印財閥最大手タタがデジタル化で180度の方向転換
インド最大財閥のタタグループが傘下の小売ビジネスをバンドルしたスーパーアプリを投入することで、デジタル化の波に乗る側に回ろうとしている。伝統企業がテクノロジー企業の領分に入り込む新しいケースだ。
要点
インド最大財閥のタタグループが傘下の小売ビジネスをバンドルしたスーパーアプリを投入することで、デジタル化の波に乗る側に回ろうとしている。伝統企業がテクノロジー企業の領分に入り込む新しいケースだ。
インドの最大財閥タタのデジタル部門タタデジタルはスーパーアプリの正式な発表を8月末に予定していた。しかし、タタデジタルはEC企業であるため、2020年の消費者保護(EC)規則の改正案が施行された場合、別会社の設立を含めて計画を練り直さなければならなくなった。
スーパーアプリは複合的な機能を詰め合わせ、独自の決済機能を付与され、新興国のモバイルインターネットに特化した大規模アプリのことを指す。中国で最初に生まれたこのモデルは東南アジアやインドへと著しい速度で伝播している。その結果、タタやリライアンスといった伝統的な産業に軸足をおいていた財閥がこのモデルに挑戦するようになった。
タタデジタルのスーパーアプリは、複数のグループ会社が提供する小売、旅行、金融サービスを組み合わせることで、大きな力を得ることを目的としている。しかし、今回の改正案では、財閥がEコマース事業体に参入することはできない。
7月初旬に行われたEC規則の政府の審議会では、タタのバイスプレジデントであるPoornima Sampathは「この規則は、コングロマリットの多数の事業体や利害関係者のコンプライアンス負担を大幅に増加させ、小規模なライバル企業よりもはるかに大きな打撃を与えるだろう」と主張していた。
この規則案はAmazonやウォルマート傘下のFlipkartといった有力なeコマース市場から地元の小売業者を保護することを目的としていたが、eコマース分野に参入しようとする地元企業の計画に支障をきたす可能性がある。
デジタルビジネス旗艦会社Jio Platformsの傘下でeコマース事業を強化しているReliance Industriesの幹部は、同社は小売業者であり、eコマースプラットフォームではないと主張することで、規制を回避しようとしている。また、この規則が実施された場合、Jio Platformsのマーケットプレイス計画を再構築する必要があるとしている。
最大財閥がデジタルに目覚める
153年の歴史を持つタタ・グループは、インドのあらゆる産業で大きな存在感を持っている。もともと製造業や小売業を主軸としてきた同社が、デジタル事業への参入を決めたことは、方針転換の度合いを示している。
タタ・グループは国際的には英国の高級車ブランド、ジャガー・ランドローバーのオーナーとして知られているが、国内でも自社ブランドの自動車を製造している。また、鉄鋼業、ITアウトソーシング、ホテル・航空会社の運営なども行っている。財閥は3月時点で、269の子会社、39の関連会社、40の合弁会社を有していた。
財閥の業績はインドの経済成長の恩恵を一身に受けている。上場企業28社のうち27社の株価が年内に上昇したことにより、財閥の時価総額の合算が3,000億ドルを超えた。財閥傘下の企業は15%から375%の株価上昇を示し、年初から847億ドルの時価総額を追加した。
小売業では、スターバックスとの合弁事業やInditexのファッションブランド「ZARA」の店舗運営など、オフラインでのポートフォリオが充実している。しかし、オンラインではマイナーな存在であり、この状況を改善したいと考えているようだ。
5月にはオンライン食料品店「BigBasket」の過半数を10億ドル以上で買収し、6月にはオンライン薬局「1mg」の経営権を取得。CureFit Healthcareに最大7500万ドルを投資する契約を締結した。これらのブランドは、タタが導入を予定するスーパーアプリで、他の有名ブランドと一緒に導入される可能性が高いとされている。
また、ハイパーローカルデリバリー企業であるDunzoの買収に向けて交渉中とされる。Tata Consumer Products社は、Eコマース事業を支援するために、Soulfullブランドの朝食用シリアルや雑穀を使ったスナックのメーカーであるKottaram Agro Foodsを買収する契約を結んだばかりでもある。
タタのデジタル推進は5年前に始まった。2016年に「Tata CliQオンライン・マーケットプレイス」を立ち上げ、2019-20年には3,600万ドルの売上を計上している。しかし、これはインドに数十億ドルを投資しているAmazonの約100億ドルと比較した場合、ほんの一滴にすぎない。
それでも、2026年までに2,000億ドル規模になると広く予測されているインドのEコマース市場において、タタには成長の余地が十分にある。EC規則をクリアできれば、の話だが。
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