アリババの信用スコア「芝麻信用」の行方 Axion Podcast #17
芝麻信用の普及により「それまで銀行のサービスを受けられなかった学生や零細商店への金融包摂」という利点が認められるが、今後は政府の社会信用システムや監視カメラ網、との統合を見込んでおり、人間がどのレベルの監視まで許容可能か調べる実験の様相だ。
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芝麻信用ができた経緯
- 中国型信用スコア「芝麻信用」開発の発端は「米国に学ぼう」だった。アントフィナンシャルが金融関連の事業開発を行う中で、欧米のクレジットスコアの移植が必要となった。
- 2003年頃から政府内で研究があり、2009年に政府が「社会信用スコア」の形成を決めていた。2020年に導入する。中国政府の思惑もあったかもしれない。
- もともと他者の「信頼」を確実にするのが難しい社会だったため、スコアの利得が大きかった。
芝麻信用と社会信用システムの違い
- 商業的な利得。モバイルインターネットをよく使う都市中産層ならば、違法行為や規約違反を犯さない限りは600点台後半以上のスコアは獲得できる。
- 社会信用システムは法執行の要素が強い。違反者や脱法企業のブラックリストを付け合わせる。高速鉄道、飛行機の利用不能などのペナルティが課せられる
- ブラックリストの人同士の会合があるらしい。
アップサイド
- 芝麻信用の普及によって起きたことは「それまで銀行のサービスを受けられなかった学生や零細商店への少額融資の実現」や「参加者の相互評価によるシェアリングエコノミーの信頼性の向上」
ダウンサイド
- 一度ブラックリストに入ると抜けづらい。
- 社会階層を固定化してしまう可能性がある(フィードバックループで社会の中に内在するバイアスを強化する可能性がある)。
このような製品が成立する条件
- プライバシーを気にしない国民性
- 政治環境
- モバイルインターネット。スーパーアプリ的なサービスに依存すると、ユーザーデータが一元的に蓄積され、スコア形成が容易。
今後
- 政府が主導する社会信用スコアとの統合。天網(スカイネット)に代表されるような、全国に広がる監視カメラ網、顔認証、モバイルインターネットを利用した監視などと統合されたとき、「監視社会」は常軌を逸したレベルに到達するかも。詳しくはこの記事から。
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参考文献
- DGlab. 「中国の社会信用システムの真実 前編 ~「信用スコア」構築の歴史~」.
- DGlab. 「中国の社会信用システムの真実 後編~「失信被執行人」リストとは何か~」
- 野村総研、城田真琴. 情報銀行と信用スコアリングビジネスの展望
ホスト:吉田拓史 YOSHI(@TAXIYOSHIDA)
記者, 編集者, Bizdev, Product Manager, Frontend Engineer. 早稲田大学政治経済学部卒業後, ジャカルタで新聞記者を5年. 米系デジタルマーケティングメディアDIGIDAYの日本版創業編集者を経て, デジタル経済メディアAxion(アクシオン)を創業. プロフィールサイトとLinkedInを参照. ■Twitter ■Blog ■Newsletter ■You Tube
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