トップAI研究者が大手テックから話題の新興企業に移籍

人工知能のマスターたちが、Google、Meta、OpenAI、DeepMindといった企業の上級職を辞め、AIを次のレベルに引き上げようとする新種のスタートアップに参加していることが判明している。

トップAI研究者が大手テックから話題の新興企業に移籍
AI研究者のムスタファ・スレイマン。"TechCrunch Disrupt London 2016 - Day 1" by TechCrunch is licensed under CC BY 2.0.

人工知能のマスターたちが、Google、Meta、OpenAI、DeepMindといった企業の上級職を辞め、AIを次のレベルに引き上げようとする新種のスタートアップに参加していることが判明している。

最も資金力のある新しいAIスタートアップ4社(Inflection、Cohere、Adept、Anthropic)は最近、ビッグテックでの経歴を持つ数十人のAI科学者を引き抜いた。これらの企業は合わせて10億ドル以上の資金を調達しており、この膨大な資金を元に、以前の会社から高い給料をもらっている優秀な人材を引き抜こうとしているのだ。

各社は「トランスフォーマー(Transformer) 」と呼ばれる新技術の上に、新しい製品やサービスを構築している。これによって、これまで考えられなかったような方法でAIシステムを拡張できるようになっている。OpenAIのGPT-3とDalle-E、GoogleのBERT、DeepMindのAlphaFoldとAlphaStarはすべて、トランスフォーマーに支えられた画期的なAIシステムの例である。

自然言語処理の劇薬Transformer
2017年中旬、Googleが発表した論文「Attention is all you need」で提案されたモデル、Transformer(トランスフォーマー)は、深層学習の自然言語処理(NLP)分野でデファクトスタンダードとして使用されている。
DeepMind、言語モデルの大規模化は引き続き効果的と判断
DeepMindはさまざまなサイズの変換言語モデルを学習させた。その結果、読解力、ファクトチェック、有害言語の識別など、モデルの規模を大きくすることで継続的にパフォーマンスが向上する分野が明らかになった。
巨大な「基盤モデル」がAIの進化に拍車をかける
AIの世界では「基盤モデル」がその重要性を増している。実際に基盤モデルがプラットフォームとなり、その上にさまざまなサービスが構築されるという可能性がある。勝者は、すべてとは言わないまでも、そのほとんどを手に入れることができるかもしれない。

ここでは、そのAIスタートアップ4社について紹介しよう。

Inflection AI

3月に立ち上げられたInflection AIは、LinkedInによると、従業員が10人未満であるにもかかわらず、すでに2億2,500万ドル以上を調達している。

カリフォルニアに本社を置く同社は、人間とコンピュータのコミュニケーションを容易にするAIソフトウェア製品を開発することを目的としている。

DeepMindの共同創業者であるムスタファ・スレイマンは、最近GoogleでAI製品管理およびAI政策のバイスプレジデントを辞め、機械学習スタートアップのInflection AIをLinkedIn創業者のリード・ホフマンと、元DeepMindの研究者カレン・シモニャンとともに共同創業している。スレイマンはすでに、かつての同僚を何人か採用している。

リード・ホフマンのAIスタートアップ、GoogleとMetaから人材を引き抜く
リンクトイン創業者の億万長者リード・ホフマンとDeepMindの共同創業者ムスタファ・スレイマンが今月初めに立ち上げた新興企業Inflection AI(インフレクションAI)は、GoogleとMetaから人工知能(AI)の達人を引き抜いたとみられる。

元DeepMindのHeinrich Kuttlerは、3月にロンドンのMeta AIでリサーチ・エンジニアリング・マネージャーの職を離れ、Inflectionの創業チームの一員となって技術面を担当したと、彼のLinkedInのページには書かれている。また、Joe Fentonは、2月にGoogleのシニア・プロダクト・マネージャーを退職し、Inflectionの創業チームの一員としてプロダクトサイドの業務に携わっている。

さらに最近、Google BrainとOpenAIの元研究者であるRewon Childが、技術スタッフとしてインフレクションに加わった。Googleで研究エンジニアをしていたMaarten Bosmaも採用した。

Inflectionの最も有名な投資家の1人は、Facebook(現Meta)やAirbnbなどに早くから賭けていたシリコンバレーの有名なベンチャーキャピタル、グレイロック・パートナーズである。

このスレイマンは、インフレクション社が今後開発を目指す一連の新しい技術によって、最終的には誰もがコンピュータと平易な言葉で会話できるようになると主張している。現段階では、同社が製品を誰に、いくらで、いつ販売するかは不明である。

Cohere

CohereはAidan Gomez, Ivan Zhang, Nick Frosstが2019年にカナダのトロントで創業した。Index VenturesやTiger Globalなどから約1億7,000万ドルを調達したCohereは、ソフトウェア開発者がアプリで複雑なAI技術を使えるようにするインターフェースを作りたいと考えている。

同社の自然言語処理(NLP)製品によって、開発者はソフトウェア製品に新しい機能やサービスを展開できるようになるはずだ。

AIの著名人でDeepMindの卒業生であるEd GrefenstetteとPhil Blunsomは、Cohereに加わった最新のAI科学者である。2人は先月、同社への入社をLinkedInに記載している。 GrefenstetteはCohereの機械学習責任者、Blunsomは同社のチーフサイエンティストだ。

二人は、過去10年間でAI人材のハブとなったロンドンに、Cohereの新オフィスを設立するための支援も担当する予定だ、とCNBCが報じている。実際、DeepMindは現在、この街で1,000人以上を雇用しており、その多くが博士号取得者である。

Cohereは英国を代表する2つの大学から、将来有望な人材をスカウトすることができそうだ。Grefenstetteは

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の名誉教授、ブルンソムはオックスフォード大学の教授である。

Anthropic

もう1社、OpenAIの元研究担当バイスプレジデントであるDario Amodeiが率いるAnthropicが話題になっている。

Anthropicは、自らをAIの安全性と研究に携わる企業であると説明する。「信頼性の高い解釈可能な、操縦可能なAIシステム」を構築したいとしている。

Amodeiは、Jack Clark, Tom Brown, Sam McCandlish, Daniela Amodeiなど、他の元OpenAI社員数名の協力を得て会社を立ち上げた。

2021年に立ち上げ、Skype共同創業者のジャーン・タリンやGoogle元CEOのエリック・シュミットを含む投資家から1億2,400万ドルを確保したと発表した。今年4月にはさらに5億8,000万ドルを調達したと発表し、LinkedInによると、現在41人のスタッフを擁している。

Adept

機械学習分野の重鎮たちが作ったもうひとつのAIスタートアップが、Adept AI Labsだ。

共同創業者には、CEOのDavid Luan(以前はGoogle Researchのディレクター、OpenAIのエンジニアリング担当バイスプレジデント)、Niki Parmar(以前はGoogle Brainのスタッフ研究科学者)、Ashish Vaswani(同じくGoogle Brainのスタッフ研究科学者)らが名を連ねている。

サンフランシスコに拠点を置く同社は、設立からわずか数カ月で6.500万ドルを調達しており、「人間が創造的に協働できる一般知能を構築する」ことを使命としている。

人々が協力してほとんど何でも一緒に解決できるような、一種のAIアシスタントを作りたいのだ。このツールは当初、生産性向上に特化したものになるが、同社は中期的には誰もが同社のAI技術を使えるようになることを期待している。

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OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

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OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
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By 吉田拓史