ソフトバンク出資の決済大手Paytmが上場初日に暴落し、インドのIPOブームに冷や水
かつてはインドのデジタル決済を牽引していたPaytmは、同国史上最大のIPOを行ったが、上場初日に株価が暴落。沸きに沸いてきたインドのIPOブームに冷や水を浴びせた。

要点
かつてはインドのデジタル決済を牽引していたPaytmは、同国史上最大のIPOを行ったが、上場初日に株価が暴落。沸きに沸いてきたインドのIPOブームに冷や水を浴びせた。
ソフトバンクGが出資するインドの決済企業Paytmの株価は、IPO初日で約4分の1下落し、評価額が約50億ドルも減少した。Paytmは日本のPayPayの技術供与元である。
ブラックロックやカナダ年金制度投資委員会(CPPIB)などのグローバルな資金運用会社と並んで、この公募に参加した個人投資家も大きな損失を抱えることになった。
Paytmのインド史上最大のIPOは、インドがグローバル資本の投資先として魅力を増していることの象徴として、特に中国に代わる投資先を探しているテクノロジー投資家の間で注目されていた。しかし、3兆5,000億ドル規模のインド国立証券取引所では、楽観主義が行き過ぎたのではないかという疑問が生じている。
インドの史上空前のIPOブームは、食品配送会社のZomato、美容系eコマースグループのNykaa、保険アグリゲーションのPolicyBazaarの株価はいずれも発行価格から上昇したことで勢いに乗ってきた。
ブルームバーグがまとめたデータによると、インドにおけるIPOは、今年これまでに約150億ドルの資金を調達しており、すでに通年で過去最高の118億ドル(2017年)を超えた。2021年に取引を開始した企業は、最初のセッションで平均23%上昇した。
大量の資金を調達してきた数年前までの注目企業だが、尻すぼみに勢いを失っているPaytmがどう値付けられるかは、公開市場の投資家がテクノロジー企業の資金燃焼をどのレベルまで許容するかを測る尺度として注目されていたが、最悪の結果に終わった。
このIPOは投資家の関心が薄く、投資信託を含むインド国内の機関投資家は、収益性への道筋や、Googleなどのビッグテックの競合企業との競争力に懐疑的だったという。
Paytmは早くからモバイル決済に取り組んできたが、GoogleやWalmartが所有するeコマース企業Flipkartなど、海外の競合企業に市場シェアを奪われている。「スーパーアプリ」と呼ばれるモデルへの進出も成果を上げていなかった。
Paytmはデジタルウォレット事業で、中国のアントグループの技術支援を受け、インドの高額紙幣廃止に伴いモメンタムを獲得した。しかし、インド決済公社(NPCI)が開発した決済基盤UPIが登場すると、Paytmの先駆者利益が崩壊した。UPIを積極活用するFlipkartとGoogleに大差をつけられた。
Paytmは全方向的なスーパーアプリ戦略をとったが、このほとんどが実らず、しりすぼみの業績を片手に同社は上場した。
フィナンシャル・タイムズが引用した証券会社のマッコーリー・リサーチは、PaytmはPaytmには競争力がないとし「あまりにも多くのパイに指を突っ込みすぎている」と指摘、12カ月後の目標を1,200ルピーに設定している。
マッコーリーは「Paytmが行っているほとんどのことは、Amazon、Flipkart、Googleなどの他の大規模なエコシステムプレーヤーが行っている」と書いている。「Paytmは、フィンテックグループにとって最も収益性の高い事業である融資を開始するために必要なライセンスを持っていない」
Paytmが融資を行わない限り、単なる販売代理店としては大きな収益を上げることはできない。そのため、収益性のある規模を達成する能力に疑問が生じているという。
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